鹿島3-1広島 鹿島逆転4強
2007/07/16(月) 本紙朝刊 スポーツ A版 8頁
Jリーグ・ヤマザキナビスコ・カップ準々決勝第2戦最終日(15日・カシマスタジアムほか=2試合)鹿島と川崎が2年連続の準決勝進出を決め、G大阪、横浜Mとの4強が出そろった。
アウエーでの第1戦は0-1で敗れた鹿島は、マルキーニョスの2得点などで広島に3-1で勝ち、2試合合計を3-2とした。アウエーの第1戦を落としていた川崎は、2試合合計5-5でもつれた延長後半8分、途中出場の黒津が決勝ゴールを決めた。
準決勝は第1戦が10月10日、第2戦が同13日。組み合わせ抽選は8月上旬に実施される。
【評】鹿島が自在な攻めで快勝した。前半はマルキーニョスが2得点。15分に縦に抜け出して先制し、40分には柳沢のパスから決めた。後半2分には柳沢の左クロスを野沢が合わせた。広島は守備が乱れ、早々と失点したのが響いた。
自在な攻め、集中力切れず
後半のロスタイム4分が経過した直後、台風が去ったカシマスタジアムに鹿島をたたえる祝福の笛が鳴り響いた。2点差以上での勝利が必要という厳しい状況をはね返して、2年連続の準決勝進出を見事に決めた。
鹿島にとって理想の展開だった。前半15分に本山からの約40?のスルーパスを受けたマルキーニョスが右足で冷静に流し込み先制。本山が「練習してきた形で取れた」という形で、初戦からのスコアを1-1とし、試合を振り出しに戻すと、その後も勢いを失うことなく攻撃を仕掛けた。40分には小笠原のパスカットから中後、柳沢とつなぎ、最後はマルキーニョスが2点目をねじ込み、合計スコア2-1と逆転した。
それでも、予断を許さない状況は変わらなかった。アウエーゴールの関係で1点でも失点してしまえば、再び2点差をつけなければ敗退してしまうからだ。
だが、それも後半が始まってしまえば杞憂きゆうに終わった。2分にファボンのロングフィードを柳沢が競り勝ち、走りこんだ野沢が頭で決め、欲しかった3点目を奪った。「ヤナギさんのパスが良かったから、当てるだけで良かった。意志の疎通だね」と公式戦初得点を喜んだ野沢。その後は、2点が必要になった広島の猛攻を受けたが、最後まで集中力を切らさずに、なんとか1失点で守りきった。
中盤を支えた小笠原、2アシストの柳沢らの復帰がチームを生き返らせた結果にオズワルド・オリベイラ監督は言った。「(2人が入ることで)経験や余裕がチームの中に生まれた。他の選手も自信を持ってやってくれるようになる」。10冠へのステップをまた1つ上がっただけでなく、後半戦に向けての大きな可能性を示してくれた試合でもあった。
柳沢2アシスト
約3カ月ぶりの公式戦のピッチで鹿島のFW柳沢が2アシストと躍動。主将としてあらためて存在感を示した。
まずは前半40分、味方のパスカットから中央でボールを受けるとゴール前へドリブル。同時にFWマルキーニョスの動きを見ながら抜群のタイミングでスペースへパスを出し、追加点をおぜん立てした。後半2分にはDFファボンの縦パスにいち早く反応して左サイドを抜け出すと、MF野沢の頭へどんぴしゃりのクロスを送り貴重な3点目をアシストした。復帰戦初ゴールこそならなかったが、「自分のプレーには細かいことを言えばきりがないが、次に進めたことが何より1番」と逆転での準決勝進出を素直に喜び、「リーグ戦再開まで時間があるので、またいい試合ができるように頑張りたい」と頼れる主将がさらなる活躍を誓った。
【ヤマザキナビスコカップ 鹿島 vs 広島 レポート】柳沢、小笠原の復活で鹿島が貫禄の勝利。2年連続の準決勝を果たす。 [ J's GOAL ]
7月15日(日) 2007 ヤマザキナビスコカップ
鹿島 3 - 1 広島 (18:30/カシマ/8,647人)
得点者:'15 マルキーニョス(鹿島)、'40 マルキーニョス(鹿島)、'47 野沢拓也(鹿島)、'63 ウェズレイ(広島)
試合前のウォーミングアップ。フィジカルコーチの指示で鹿島の選手たちが短い距離のダッシュを繰り返す。その表情は引き締まり全力でのダッシュを黙々と繰り返す。フィジカルコーチが手を叩くリズムが全く乱れない。毎試合見られる光景とどこかなにかが違う。ピーンと張りつめた緊張感。選手たちからは溢れんばかりの闘志がみなぎっていた。
この試合、鹿島にとっては難しい状況でのスタートだった。まずはアウェイゴール。第1戦を0-1で敗れたためアウェイゴールを奪うことができず、第2戦での失点は大きなビハインドとなる可能性を抱えていた。また、戦術的にもなにかしらの対策を講じる必要があった。前の試合では、中盤の配球役だった青木が激しくすばやいマークにあい、ボールの展開を阻害され攻めの形がつくれずに終戦していた。
だが、鹿島のオズワルドオリヴェイラ監督にとって、これらの問題に答えを出すことは意外と簡単だったのかも知れない。柳沢敦と小笠原満男という、チームに大きな影響を与える2人の選手が戻ってきたからだ。監督は試合後、「彼らがチームに与える影響というのは計り知れない」と語っている。実際、試合のなかで彼らの存在感は際だっていた。
ゲームは大荒れの天気のなか始まった。いったんは雨も止み青空が顔を出したものの、試合開始直前から雨と風が激しくなる。強い風がスタジアム内で巻くなか前半は鹿島が風上に立った。鹿島が攻め、広島が守るという第1戦の構図は変わらない。鹿島は本山と新井場のコンビネーションで左サイドを突破し、何度かチャンスをつくる。しかし、序盤目立ったのは広島の速攻だった。鹿島はセンターバックにファボンを起用していたが、岩政との連携がいまひとつ。開始早々の FKではマークミス。時おり繰り出される広島の鋭い速攻に対してはマークに付ききれずシュートまで行かれてしまっていた。
だが、前半15分、鹿島に待望の先制点が入る。それまでも何度と無くDFラインの裏側を狙う動きをしていたマルキーニョスへ本山から絶妙のパス。森崎和幸を振り切ったマルキーニョスはフリーでシュート。キーパーの届かないコースへ確実にコントロールし、初めてのチャンスをきっちりものにした。
このあたりから鹿島の攻勢が一気に強まる。相手にボールを奪われると前線から激しくチェック。中盤に出たボールに対しても、すばやく相手を囲みボールを奪っていった。特に、相手陣でのスローイングに対しては、マークをはっきりさせプレッシャーを与えた。事前のスカウティングで広島の選手の対応に問題があることを見抜いていたのか、スローイングの機会は「ボールを奪うチャンス」とチーム共通の狙いを定めていたようだった。実際、広島の選手たちはボールの出し所がなく、スローを受けた選手が苦し紛れに前線に蹴り出す場面が続出していた。
そして40分、鹿島が2戦トータルでの勝ち越しとなる2点目をあげる。決めたのはまたもマルキーニョス。小笠原の中盤でのパスカットから、中後、柳沢とつながったパスを決めたものだった。柳沢をマークしていた盛田はしばしば鋭い動きについて行けず対応に苦慮していたため、多少距離をとってマークしていたのが災いしてしまった。
後半も鹿島のペースで試合が進む。開始早々、ファボンからのロングフィードを受けた柳沢が左サイドを抜け出てセンタリング。走り込んだ野沢が頭で合わせ、決定的3点目が鹿島に入った。前半は前線から激しくチェイスしたことから鹿島のペースで試合が続くことはないと思われた。それだけに、この3点目は大きな大きな追加点となった。
その後、平繁、柏木と若手選手を立て続けに投入した広島が、ウェズレイの得点で一矢報い、あと1点で準決勝に進める状況をつくる。さらに槙野を入れ、4バックにして攻勢をかけるも効果的な戦術変更とはいかず、鹿島に時間を使い切られてタイムアップ。鹿島アントラーズが2年連続の準決勝進出を決めた。
鹿島の勝因は、やはり柳沢、小笠原の復帰が大きかった。柳沢はパートナーとなるFWを活かす選手。サポートを受けたマルキーニョスが2得点の活躍し、柳沢自身も2アシストとらしさを見せた。また、小笠原の起用は、広島への第一の対応策であった。ダイヤモンド型だった中盤はボックス型となり、中盤の底で中後と小笠原が代わる代わる入ることで、広島にプレスの的を絞らせなかった。つねにリードする展開だったということはあるものの、パス回しに苦慮する場面はほとんどなかったと言えるだろう。
ふたりの復帰に加え、ファボンもひさびさの先発出場。リーグ戦ではガンバ大阪、浦和レッズの後塵に配するものの、両チームに匹敵する戦力がようやく揃った。しかし、チームの完成度という点においてはまだまだ。得点シーンはいずれも相手のミスに乗じたもので、自らのパス回しでディフェンスを崩したシーンは試合を通じても少なかった。前半には、小笠原から本山へのスルーパス、グラウンダーの折り返しに柳沢が飛び込むというプレーが一度だけあった。3人が連動することで美しいプレーが生まれることはこれまでも実証済み。今後、どれだけこうしたシーンをつくれるかが問われてくる。約1ヶ月の中断期間でどういうチームに仕上げてくるのか楽しみにしていきたい。
以上
2007.07.16 Reported by 田中滋
余裕があったかのような記事である。
が、スタジアムは冷や汗の連続であった。
失点シーン、その直前シュートを放った篤人が足を気にしてしゃがみ込んでいた。
他の選手が戻って人数は足りていたが、篤人の穴がなかったとは言えない。
その後、試合に復帰するも足引きずり気味であったことは事実。
青木と交代して安定するかと思いきや、岡田正義主審は相変わらず安定して偏っており、意味不明なジャッジが続きいた。
そして最後には4分というあり得ないアディショナルタイムである。
アウェイのチームに感動をもたらせたいという力学が働いていたことは隠しようがなかった。
が、その悪意を聖地の力ではね除けられたことは大きい。
善が勝利した。
否、勝利したからこそ善なのである。
村上義清が善であり、武田晴信は侵略し破れた悪の権化であることが証明されたのである。