今回の政府の震災への対応について,ロンドンエコノミストが例によって辛口コメントを寄せています。
被災者が,この悲惨に対してストイックに対応していることを賞賛する一方で,政府の対応が依然として不十分だ,とかいうハナシです。神戸の震災の時よりずっとマシとかいう評価もあるが,それは評価のバーが低すぎる,として,
A crisis of leadership, too
Yet, this month’s disasters underscore how much more the system still needs to change―along with the politicians guiding it. For one, the fiasco at Fukushima Dai-ichi has revealed, again, the cosy ties between the nuclear industry and government. Together, they have stifled debate, covered up bungles and made assumptions about risks that were too optimistic. The crisis management at TEPCO, the plant’s owner, has laid bare an astounding lack of leadership. “What the hell’s going on?” Mr Kan demanded at one point.
この震災で,どれだけ,システムの変化が求められているかがわかる。福島第一の失敗は,政府と原子力産業の癒着を明らみに出した。両者間での議論はストップさせて、失態を隠しリスクは過小に見積もられた。原発のオーナーの東京電力はリーダーシップが欠如していることをさらけ出した。いったいなにがどうなっているんだ,菅氏は、あるときそうどなった。
The same might be asked of the operation to get help to the tsunami victims. For all that Mr Kan has attempted to be seen at the front, in Tokyo the sense of a looming humanitarian crisis in the north has been slow to sink in. That is partly because nuclear worries have absorbed much of the government’s attention. Few politicians in a centralised system have bothered to travel north themselves. The media, taking their cue from the Tokyo establishment, have not thought properly to report the unfolding struggle for food and fuel.
このことは,津波の被災者に対する救済オペレーションについても当てはまる。
菅氏は前線に立っていると見られようと努力しているにかかわらず,東京では北方で人々が危機にあると感知されるのに時間がかかってしまった。一部には原発危機が政府の関心を奪ってしまったということもある。中枢に位置する政治家たちはほとんど自分で北方に行こうとはしなかった。東京のメディアも食料と燃料が不足していることが明らかになっていることを報じようと、適切に考えることは無かった。
Yet businessmen and victims say supplies are being held up as bureaucracies fall back on tired old rules and straitjacket procedures. Lorries full of supplies have been unable to get petrol on the empty expressway north, reserved for “emergency” vehicles. While this severe shortage of fuel spread through northern Japan, oil companies were sitting on huge supplies which by law they had to keep in reserve. If ever an occasion for their use was justified, it was this catastrophe. Yet the government took ten days to beg for (not order) their release. From the start, Mr Kan should have declared a state of emergency. Even now, clear lines of authority for handling the many-headed crisis have not been properly established.
実業界や被災者は,古びたルールや,過剰に細かい手続きに縛られて官僚達が動けず,救援物資が滞ってしまったと話している。満タンにしたタンクローリーは、高速道路が救急車両のために通行止めになっていて北に向かうことができなかった。北日本で激しい石油不足が生じている時に,石油会社は法律で定められた巨大な備蓄石油を持ったままだった。備蓄石油を使うとしたら,この災害時でなくてなんだというのか。政府は備蓄石油の放出をお願いするのに10日も要した。命じるのでなくお願いしたのだ。初めから菅氏は緊急事態宣言をするべきだった。今をもってなお,同時多発のこの危機を対処する的確な指揮命令系統が確立していない。
Stoicism―however good for coping with adversity―is bad for bringing on change. Time for the Japanese to unleash some righteous anger on a system that has let them down.
この不幸な災害に対処するためにストイシズムは良いことだが,変化をもたらすためには良くない。日本人は自分達を犠牲にしたこのシステムに対し,正しく怒りを解き放つべきである。
というわけですな。いつもながら,厳しいご指摘ですが,被災地でガソリンが足りないのが,実は過剰規制のためだ,としたら,これは怒って当然ですな。東北自動車道を一般車両が通れるようになりました,というニュースが出る前はタンクローリーも通ることができなかったということなんでしょう。備蓄開放もそういうことが終わってようやく,って感じで,まさに東京の鈍い動きが被災者の悲惨を拡大しているということになりますね。
ハリウッドのパニック映画を観ていると,道路を規制している地方の警察なんかがいて,ここは通行止めだ,みたいなことをドライバーが言われるシーンが出てきます。すると,ドライバーは,これには救助物資が積まれているんだ,通してくれ,と警官に話す。
よし,通せ,
という具合に進んでいって,誰も疑問も思わないし,当たり前だと思うんですな。現場にその程度の判断を普通にさせているとも言えますね。
日本じゃ,パニック映画をリアルに撮ると,ドタバタになっちゃいますな。
救助物資を運んでいるんだ,
一般車両は通れません。
救助物資を運んでいるんだと言ってるだろう
今は車両規制がかかっているんで解除になるまで待ってください。
って感じでしょうかね。
待ってる間に,主人公の家族は飢えと寒さで死んじゃって,日本政府への逆恨みで主人公はテロリストになって・・・,みたいな,全く違うハナシになってしまいそうですな。
被災者にとっては,笑い事じゃないんで。
やはり過度な官僚制は改善する必要があるし,東京中心主義ではなく,現地なり,現場に裁量を大きく移して行くということが大事だと思えるんですな。