yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

北畠館跡確認調査の条                                                                                                                                                                                                                                                     

2010-11-20 22:00:22 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 昨日は上の妹の誕生日だった。生きていれば60歳、還暦である。そう、彼女が亡くなってもう11年がたつ。その間に母も逝ってしまった。今頃向日で親父も入れて誕生パーテーでもしているのだろうか。



 昨日は午後一番に日本学術会議中部地区会議の講演会に動員され、副会長様の「水循環・水再利用技術と新しい科学と秘術」と題した講演を聴いた。大して期待もしていなかったのだが、理系のトップクラスの講演というのはどんなものかと少しこの点にだけ興味を持って聴くことにした。

 40分の講演をパワーポイントだけで、いろいろなデーターをグラフや数字に表して話しをされた。要するに、水道というものがいかに多くのコストをかけながらも、しかし、いかに安価で安全に全国津々浦々まで供給されているかを文系の人間にも判りやすく話された。

 日本独特の水の再利用という話題を江戸以来の歴史と重ねながら話されたのはなかなか興味深かった。

 もう少し宣伝や広報をすべきだったとは思うが、日頃縁のない日本学術会議なるものの一端が判ってそれなりに興味深かった。その後も二つの講演があったがこちらはパスさせて頂いて美杉村の北畠館跡での範囲確認調査に伺った。





 今回の確認調査の一番北端のトレンチ

 予め何も出ていないということを聞かされていたので、どの様なコメントをすればいいのか少し心の準備が必要だったが、現地に出向いてみてそんな心配は杞憂だと判った。



 たしかに地山と洪水堆積の跡しか出ていなかった。トレンチを開けたどこからも遺構らしき遺構は見付からなかったようだ。

 しかしその対象地の大半は八手俣川の旧氾濫原である。八手俣川は確かに今の流路は幅も狭く、深くなっているが、どうも中世にはもう少し上面を幅広く流れていたと考えざるを得ない状況に見えた。



 こんな遺構??がある程度だという。

 これまでに遺構が確認されている地表面とは2~3m以上高低差があるのである。多気北畠遺跡は一乗谷朝倉氏館跡に比べて面積は三倍近くあるといわれる。果たしてどれだけの家臣団がこの地に居住していたのかよく知らないが、一説によれば700~800人だという。これに関係者を入れて、どんなに多く見積もっても2000人、少なく見ると1000人であろうか。江戸時代に作成されたという絵図によれば、谷にぎっしりと建物が建っていたように描かれているのだが、本当なのだろうか?

 少なくとも今回の確認調査の成果を参考にすれば、八手俣川の縁辺部には施設は何もなかったと判る。これをネガテイヴに捉えるか、ポジテイヴに捉えるか前者なら「空き地の多い、閑散とした土地利用」ということになり、「後者だと、自然景観を活かした館跡」ということになる。

 まだまだ確認調査は始まったばかり、今後の展開がどうなるか判らないが、私は今のところ、後者だと思っている。



 この夏には東端のこのトレンチの直ぐ東の段の上で調査が行われたが、ここでも何も出なかった。段の上は慶正寺伝承地であった。仮にこの地から見付かれば遺跡の東西の軸線である道路が西の北畠館と東の慶正寺を直線で結ぶことになったはずなのだが、・・・・。なかなか想定通りにはいかないのが発掘調査である。

 大都会京都に慣れ親しんだ北畠一族にとって、京都は忘れがたい「故郷」なのだろうが、逆に言うと、伊勢の地にまで来て、自然を活かすことなく暮らすのも野暮な話しである。ま、まだまだこれからどんなどんでん返しが待っているか判らないが、ひとまず昨日はそんなイメージを目に焼き付けて帰宅した。 



 

 果たしてこの様な様相がいつか出てくるのだろうか?少し疑問が感じられた今回の調査であった。

北畠、益々面白そうだねと思ったら、こいつをポチッと押して下さいね→
人気ブログランキングへ

 
 北畠 深紅の紅葉 誰か見る

 八手俣の 川面に映ゆる 深紅の葉

 強者ども 多気の紅葉に 何思う

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。