yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

不破関再訪-2  安楽寺裏山は見張り台の条

2009-11-13 00:45:01 | 歴史・考古情報《日本》-3 東日本
 鈴鹿関の城山に相当する施設が不破関にはないのだろうか?

 こうした疑問を胸に近年事ある毎に不破関周辺の地形図を眺めてきた。そこで目についたのが藤古川の西側にある、山中集落のはずれ、「安楽寺の裏山」(弘文天皇自害峰。以下「裏山」と称す)であった。

 安楽寺といっても赤坂の安楽寺ではなく、まるで民家のような建物がポツンと一棟あるだけの「寺」である。ここから国道21号を越えて北側には安楽寺と関係の深い大谷吉継の墓や陣跡が推定されており、若宮八幡宮も所在する。言うまでもなく安楽寺は西軍の武将大谷の持参した梵鐘をその死後徳川家康が入れた縁がある寺である。当地に安楽寺と号する寺があるのもその関係であろう。

 地形図上ではどの程度の見晴らしなのか、どこがどの様に見えるのかがよく判らないので、以前からこの丘に行ってみたかったのである。



 藤古川を渡ると平坦地が南北に延び、その西に丘がある。




 坂を登るとそこは山中という名の集落だった。



 基壇の一つ


 前回の報告にある通り、藤古川を渡ると道は再び上り坂となり、「裏山」の麓に辿り着く。「寺」の横をすり抜けて丘に登るとその頂部は平坦に造成された空間だった。平坦面にはいくつかの基壇状の高まりを認めることができる。頂部付近には近世以降の瓦も若干拾うことができる。或いは安楽寺の前進(安楽寺そのもの)がこの地にあったのかも知れない。



 「裏山」の平坦地。あちこちに基壇状の高まりが残っている。

 この平坦地は東西80m、南北50m前後の規模を有し、その南斜面には弘文天皇自害峰の三本杉が植っている。尾根の北西方向から黒血川が南東方向に向かって「裏山」の裾を縫うように流れる。黒血川は、不破関の城壁のある台地の先に位置する井上神社の先、現名神高速道路を越えた辺りで藤古川と合流する。藤古川はいずれ今須川・牧田川と合流し揖斐川に流れ込む。この様に「裏山」は黒血川と藤古川が削り遺してできた独立丘陵である。

「裏山」は現在東海道新幹線、名神高速道路によって3分割されているが、本来は北西から南東に傾斜する一つの尾根であった。ただし、東海道新幹線の通る位置は、明治24年の20000分の1正式地形図によると若宮八幡宮(若宮八幡宮と称する神社は関ヶ原町一帯に数多く点在する.この地にあるのも大谷吉継との関係であろうか)の境内奥から黒血川(西)へ抜ける小さな谷筋になっており、かつてはこの地を通る道があったことが判る。この場合、少なくとも「裏山」は南北に二分されていたことになる。



 今は新幹線によって分断されている「裏山」

 実はまだ正確に測れてはいないのだが、この若宮八幡宮の道はこれまで推定されてきた不破関の南城壁の西延長線上にほぼ位置している。私はひょっとしたらこの位置に元々何か構造物があったのではないかと妄想している。



 北城壁がこの地にあるのも何となく頷けてくる。

 さて、この「裏山」に登ってみると実に面白い光景が杉林の間を通して見えてくる。東に目をやると、不破関城内推定地が真正面にくっきり浮かび上がる。北側を通っているとされる東山道推定地(現国道21号)に目をやると近江側から美濃側に至る道筋が見事に見える。もちろん黒血川に沿った谷部も見下ろすことができるし南端では若宮神社から延びる小道は直ぐ目の前である。さらに、この谷部も取り込んでいたとして、南へ足を伸ばすと、その先では今須川と藤古川が合流し。間もなく牧田の集落になる地点をも見通すことができるのである。この地こそ不破関の東城壁に添って南へ延びる伊勢街道の位置である。「裏山」は眼下に不破関にいたる西・南の交通路を監視することを可能にしているのである。



 木立の隙間からくっきり東山道が見える。


 なお北に抜ける北国街道には小関という地名があり、これも関の機能の一部であろう。小関を含めた全体で不破関は全方向からの交通を遮断し、チェックすることを可能にしていたのではなかろうか。


 小関のバス停。



 関ヶ原の合戦場の北端が小関である。


 このように見てくると次ぎに興味深く見えてくるのが、「裏山」の東裾と藤古川との間に南北に細長く残る平坦地である。鈴鹿関における城山と鈴鹿川との間に残された平坦地のように見えてくるのである。もうここまで妄想が激しくなると病気かも知れませんね(笑)。



 この平坦地どう思います?


 風邪を引く前に訪れた不破関は新しい発想と研究への意欲を与えてくれた。感謝感謝の一日であった。お礼に学生と食べた夕食は少々高くついたが、ま、この成果に比べれば安いものである。有り難うEさん、O君!!

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