yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

TPP参加に反対することの意味の条

2013-05-21 01:34:27 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 私は先日知人に誘われてTPPの参加に反対する大学教員の署名に賛同しました。周辺の方々にも賛同するようにメールをしましたが、締め切りの直前だったので、どれだけの方が賛同してくれたのかは判りませんでした。

 ところが先日、別方面からの働きかけで署名された同僚の先生にお会いすると、我が大学ではたったの3人だけだったというのです。つまり、私と、その方と、もう一人の方。全体で1000人くらいはいる教員のたったの0.3%だったと聞きました。その方も呆れてました。全国で870人ほどらしいので、これも全大学教員の数からすると、ほんの一握りです。情けないことです。事の深刻さが判っていないのです。

 でも、私の友人の一人は、わざわざメールを下さいました。

「この提唱者の一人が(私の)熱心にしている支援活動に敵対する人物なので署名しません」と。

 一般的に、こうした要請は賛同されない場合は、たいてい「無視」されるのが普通です。

 しかし今回のメールは、とても親しい友人からのものでした。

 「どうしたのだろう?」

 メールをやりとりしていて納得しました。(友人とはこのことでしばらく真摯な議論をした。そのお蔭で益々心が一つになったような気がしました。心を開いて話すことがいかに大事か、逃げていてはダメだということを深く理解しました。)

 そういえば、同僚も「日頃景気のいいことをいう人も賛同しなかったんですよ。」と言っていました。

 ま、大学教員なんてそんなもんだと、もう45年前に知ってしまった私はそれほど驚きませんでしたが、彼は相当ショックだったみたいです。その怒りが爆発したのか、不満のはけ口だったのか、よくわからなかったのですが、突然

 「先生、それで、TPPの問題をいろいろな立場から訴えるために一度話をしてもらえませんかね」という。

「エッツ!?ちょっと待って。・・・」(それとこれとは違うやろ)

 あまりに唐突な話だったので答えに窮してしまいました。

 しかし落ちついてよく考えてみると、確かに、TPPという極めて今日的な問題といえども、研究者である以上、それぞれの立場から発言することはとても大事なことだと思い直したのです。

 「TPPと考古学」、あまり真剣に考えたことがなかったので直ぐには返事できなかったのですが、これから少し考えを巡らせなければいけなくなったのです。

 「TPPが破壊するものは何か?」と言うことから考え始めればいいのでしょうか。
 
  「伝統と文化の破壊」等というと、「どんな伝統と文化をあなたは守りたいのか?」と問われそうな気がする。下手をすると自民党憲法草案前文にあるような「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家で」あるからこれを守るのだ、と言うことにもなりかねない。

 とんでもない!!私は天皇のために「長い歴史と固有の文化」の魅力を伝えて来たつもりはこれっぽっちもないし、どんなに強制されようがそんなことを伝えるつもりは全くない!!同前文は「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守」れとも言っているが、天皇の名を借りた権力によって「守れ!」と強制されるのだけはゴメンだ。そんな強制をされなくとも、私たちは、権力者が、その利害のために無理強いしなければ、きちんと社会を作り、自然と沸き上がる郷土愛でこれを守ってきたのです。まさに一部の資本家の利益のために、そしてそれで利益を得る政治家のために参加しようとしているTPPなる強制さえなければ、自分たちが毎日暮らしている国土の魅力を熟知し、それに合った技術を生み出し、社会のルールを作って美しい国土を守ってきたのである。一政治家の、一政党の倫理観で「美しさ」「愛」を強制される必要性などどこにもないのです。

 その事例を一つ一つ紹介し、いらぬお節介で「愛国心を強制されない」よう発信し続けなければならない。
 ただ、あまりこれを強調すると妙な民族主義に陥ってしまう危険性もある。どこかの総理大臣がいう「美しい日本」とは、天皇が主導する、天皇のために家族が奉仕する国家が「美しい」らしいので、そんなものと一緒にされたらたまらない。

 前近代において日本とはどういう国だったのだろうか、明治維新後それはどう変化したのだろうか。何が破壊され、何が生まれたのだろうか。歴史学から明らかにしないといけない課題です。これからしっかり調べて報告していきたく思っています。


 さて、TPPについて身近な問題から少し考えてみようと思います。

 例えば私は、どんなに安くても、中国産の食品は買わないようにしています。どんな農薬が使用され、どんな薬品が使用されて生産されているか判らないからです。

 実は、私の今住んでいるところは近郊農業地帯です。元々はほとんどが農地だったのですが、どんどん都市化して、今や住宅の間に農地が点在するような形に変化してしまいました。かつては大規模な水田が広がっていましたが、米が売れないこともあり、農地を手放す人が増えてこの様になったのです。残った農地では野菜が栽培されています。私の家のすぐ前にも点在しています。ネギや豆、キュウリやなすびなどが四季折々栽培されています。ところがこの農地には雑草一本すら生えていません。直ぐ横で家庭菜園させていただいている我が家の畑は草ボウボウです。

 「なぜ?」

 「農薬」です。とてもよく効くようです。

 しかしここで問題が。その商品は町のスーパーなどに出荷されます。ただし栽培農家が自家で食べる野菜は別に栽培されています。そしてそこには農薬が撒かれていません。農業をやっている人は農薬がいかに危険かをよく知っているのです。日本においてすらこれなのです。日本で認められていない農薬をどんどん使って世話を焼く人件費を削って、大規模に食料を生産し、安く海外に売ろうとしているアメリカ。こんな国の農産物がどんどん入ってくればどうなつのでしょうか?

 農薬の恐ろしさについて、以前、私の三重県の友人が語ってくれたことがあります。

 「家の近所にはたくさんのゴルフ場があるんですわ。ここでは芝をきれいに管理するために大量の農薬が毎日のように撒かれています。明確な因果関係はなかなか証明しにくいんですが、近所の多くの女性が次々と乳がんで亡くなっていったんですわ。そいでなー、内の女房も・・・・・。」

 どんなに悔しかったことだろうか。

 「高くてもいいから日本の物を買うよ」 今ならまだこんな選択肢もあるかもしれません。しかし、TPPによって廃業に追いやられ、日本の農業は壊滅します。買おうにも売っていないのです。TPPが決まってしまえば、後戻りはできません。膨大な訴訟が起こされ、莫大な訴訟費用を要求されるからです。みんなで大声を出して反対しなければなりません。「アベノミクス」などという張り子の虎に浮かれている暇などありません。株や相場などという実態のない経済に浮かれているのではなく、しっかり足下を見て、確実な物を生産し、活用し、この自然豊かな国土を守っていきたいものです。

 実は、TPPに関してはこの署名活動の中心を担っておられた東京大学名誉教授の醍醐聡さんが極めて的確にその問題点を指摘下さっています。

 醍醐さんのブログでは、今も最新の活動が実に丁寧に紹介されている。醍醐さんは会計学の専門家で、京都大学と東京大学経済学部で研究指導なさった方だが、実に丁寧で的確、論理的な批評をなさる。是非読んでいただきたいブログです。
 
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/

 醍醐さんが経済学なら、私は当然歴史学の立場からきちんと伝えなければいけないのだと思っています。

 もう一つ、このブログ記事の中で出てくるIWJ代表岩上安身さんのブログ(ツイッター)とても中身が濃いのです。是非ご一読を。


 →  https://twitter.com/iwakamiyasumi

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