yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

保存問題  東京女子大学東寮・体育館保存の条

2006-11-15 07:22:10 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
東京女子大学レーモンド建築 東寮・体育館を活かす会の許可を得て、現在保存を求められている寮の建設中の写真をお借りすることができました。会による写真の説明では「完成間近の東京女子大学東寮 1923(大正12)年7月25日撮影 1923年9月1日の関東大震災を生き抜いた、キャンパスに最初に建てられた建築物」だそうです。

 会のホームページを拝見すると大変詳しくこの施設群の歴史を知ることができます。既に永井路子さん他多数の卒業生を中心に7000人もの保存を求める署名が提出されたそうですが、大学当局は「施設の老朽化と教室の確保のため解体して新校舎建設の予定」とのことのようです。

 確かに都心の一等地に新たな敷地を購入し教室や研究棟を建設するのは並大抵のことではありません。私達の求める久留倍遺跡のトンネル化でも常に問題とされるのが「資金」です。そして常に主張されるのが、古いものを残していたらきりがないという現実主義です。浪漫では飯は食えない!という理屈が優先されます。全くその通りです。一人の命と文化遺産とどちらが重いか、と問われれば、もちろん私は命だと答えます。しかし、ただ息をしているだけの命ではなく(もちろんこの命も最後の最後まで大切です)、できるだけ中身の濃い命とするために、大学教育はあると思うのです。

 緑豊かな空間に建っている、歴史と伝統のある、建築史的にも価値の高い建物を破壊して、近代的ビルを建設することでどんな対価が得られるのか、もう一度原点に立ち返って考えて欲しいものです。

 建物再生のための意見として東京女子大学創設者の一人新渡戸稲造資料館としてはどうかというのがあるそうです。大賛成です。私はできることなら「稲造コーナー」を含む『女性史博物館』として、世界中の女性が集う(もちろん男性が共に集うことは不可欠です)博物館として再生してはどうかと思います。きっと世界中から来館者がやってくるに違いありません。施設の老朽化によって受験しなくなる学生のマイナスを補ってくれると思うのです。

 東女には7つの登録文化財があるそうです。十分文化財には配慮している、というのが理事者の方々の考えだと思います。確かに他の大学に比べればそういえると思います。しかし、それならばなおのこと、徹底的に歴史と伝統を重んじる大学として手を挙げることも特徴を示す一つになるのではないかと思うのです。
 今やあまりに横並びの、まるでファーストフードチェーン店のようにどこにでもある大学ではない、個性豊かな大学と主張するためにも、施設の再利用を考え直してはどうでしょうか。

 私達の大学でも施設の老朽化が進み、最新機器で整えられた私立大学に比べると見劣りすることは事実です。先日も液晶プロジェクターが壊れ、修理に2週間もかかるという情報が流れてきたばかりです。そんな大学でも、正面玄関の近くに三翠会館という三重高等農林学校時代の唯一の施設が保存され、数少ない憩いの場として活用されています(私はここを核にして大学博物館を造るべきだと主張しています)。

 結局のところ本当に勉強したい学生は少々の古さより中味を求めているのだと思います。華やかなファッションに身を包み香水のにおいをまき散らしまるで雑誌から飛び出してきた学生を輩出するというのなら、それはそれで、大学経営の観点から近代的設備の整った教室は不可欠でしょう。でもそんな教育をする大学は今日、全国にたくさんあり過ぎるほどあります。もっとじっくりと勉強する学生を育てるために、歴史と伝統のある自然豊かな環境を維持する大学!と銘打つことは、将来的に大学の存続を保証するものではないでしょうか。

 流行に流されるよりも、未来を見据えた「整備計画」(私達が主張している久留倍遺跡保存の理念と同じです)、これこそ大学経営の理事者に求められているのではないでしょうか。

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