yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

活動報告  正倉院展見学の条

2006-11-08 07:04:07 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
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(正倉院は黒かった??)

 一昨日は喧噪ばかりで何の主張もない大学祭の後始末の日。大学が休みでした。その日を利用して正倉院展に行こう、と誘ったのですが、参加したのは一年生二人だけでした。提案が遅かったこともあるのですが、集団活動の嫌いな?研究室の学生達は、「仲間」としか行動しないようで、誰も来ませんでした。悲しい!!
 
 これでは人間社会の研究などできるはずがありません。歴史学なるものが最早意味をなさなくなっているのでしょうか。もちろん核武装を公然と主張する輩が出現し、これを追及しきれない政治家、マスコミ、世論。どうぞ地球を核戦争に巻き込み廃墟としてください、どこぞの政治家さん達!確かにこんな世相の中で歴史学を学んでも何の役にも立たないかも知れませんね。どうせ地球はなくなるんだもの!ならば自分が生きられている間だけでも好きに生きよう!こんな所でしょうか。寂しい!!でも、正直、私も歴史学の有効性に疑問を抱きつつあります。


(通れるかどうか心配していましたが小学校以来というくぐり抜けは大成功でした。よかったね)

 しかし貴重な二人です。二人といえどもおろそかにはできませんので、しっかり案内してきました。久しぶりに大仏さんの御尊顔も拝してきました。例の柱くぐりもやって楽しんでおりました。正倉院そのものも見てきました。
 その第一声「正倉院て黒いね」???でした。


(久しぶりの大仏さんでした。結構旨く写真が撮れました)

 さて、今年の目玉は、なんといっても聖武没後1250年という区切りの年であるということです。聖武の身の回り品が数多く展示されていました。私は衣服などの布製品が苦手なので、いつもは「フーン」で終わるのですが、今回目がとまったのは刺し縫いで作られた袈裟でした。製作者の美的センスが見事に伝わるとても素敵な袈裟でした。これを着た聖武が三宝の奴と言いたくなったのも納得できました。

 袈裟を包む布、これを入れる革製の箱、箱を包む布と全てが見事に調和よく展示されていました。

 私が最も気になっていたのはガラス製の「十二曲長杯」でした。緑青で染められた鉛ガラスには見事にウサギなどの文様が刻まれ、ライトに空かされたその姿は神秘的でもありました。こんな杯で呑む酒はまた格別だろうな!等と妄想しながら見ていると「先生これ欲しい!」と学生の奇声。思いは同じようでした。

 圧巻はなんと言っても『国家珍宝帳』でした。十四.七四㍍もの巻物を壁一杯のガラスケースの端から端まで並べる迫力は大変なものでした。私が目を凝らすようにして見ていたのは『天皇御璽』でした。幅二九.五㎝の紙幅一杯に縦に三個づつ一六八個の印が捺されてるということでした。御璽は基本的に縦に三個ずつ連続的に押印した後、行を変えてまた上から捺し直していたようですが、やはり行を変えると気分も変わるのかどうしても最初のものが力強く捺され、濃くなっていました。しかしそれも次第に慣れてきたせいか強く捺される部分が移動し、終いにその変換点も判らなくなってきました。捺した人は右利きだったようで左上隅が強く捺され、濃くなっていることがそれを表していました。

 途中見知らぬおばさまに一緒に解説を聞いてもいいかといわれ、丁重にお断りをしましたが(だって、私は考古学的にしか正倉院の展示品を見ないもの・・、人に説明できるほど各種工芸品の由来や造り方には詳しくありませんもの。ごめんなさいおばさま・・)、一応考古学者はこんな見方をするということで、印鑑のことなどを伝えておきました。それもこれも月曜日で中がとても空いていた(学生によるとどこが空いているのか?と疑問がっていましたが、私にはガラガラに見えました)からできた芸当です。

 次室に移ると馬具一式が展示されていました。鞍、轡、面懸、尻懸、障泥等々。このコーナーは考古学学生必見の間でしょう。

 緑釉鉄鉢が漆塗りの木製鉢、銀製鉢と共に展示されていたのも大変参考になりました。最後に展示されていた正倉院文書にはこの緑釉陶器などに用いる釉薬の材料が書き上げられていたのですが、目の悪い私にはよく見ることができませんでした。同じように厠に用いる建築部材の書き上げられていた部分も展示されていました(前日歴博のNA先生に『正倉院文書』に厠の部材を書き上げた部分がありますよ、と教えられたばかりで、本物に会えるとは思わず大変驚きました。来年の歴博での展示に是非これを使おう!ということになりました。)。


(東大寺講堂の礎石にて。これで側柱建物と総柱建物の区別がやっとできました。)

 展示を見終わったのが14時。お腹が減ってぺこぺこ。そこで前日宮崎のSHさんに教えてもらっていた釜飯やさん「志津香」へ。行列を待つこと1時間。飯にありついたのが15時、旨かった!SHさんありがとう。普通ならビールでも、ということになるのだが、1年生だからそこは我慢!お腹も一杯になったところで、正倉院へ、途中東大寺の伽藍の話をしながら彼女たちの修学旅行の思い出話を聞きながら講堂跡で一服。余りゆっくりし過ぎたせいか正倉院はもう少しで閉まるところだった。何とかセーフ。

 どうしても大仏の柱くぐりがしたいというので、これまた閉まりかけの大仏殿へ。どうせ入るならもう少しじっくり見たかったのだが、30分ほどの駆け足見学で東大寺は終了。


(いつもなら一つや二つは展示される鎰なのですが、今回はゼロ。でも大仏殿前の灯籠の鎰を見ることができて大感激でした。)


 最後は白玉あんみつを食べて(せっかくこれまた奈良の食べ物屋のプロ宮崎のSH山にいい店を紹介してもらったのに、私の聴き方が悪かったのか見つけられず、仕方なく東向き商店街のありきたりの店へ)第58回正倉院展見学は終了。なかなか楽しい一日ではあった。有り難うお二人さん。

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