ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「黙阿弥オペラ」

2010-08-14 15:51:35 | 芝居
7月22日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「黙阿弥オペラ」を観た(演出:栗山民也)。

何と言っても合唱がないのがいい。毎度悩まされてきたので・・・。

蕎麦屋のおトラ役兼その孫娘おミツ役の熊谷真美にはすっかりだまされた。二人は全然別人に見えたけど・・、顔の大きさからしておばあさんは小さく見えたし。しゃがれ声もうまい。それにしても腰の曲がったお年寄りの役で、毎回さぞ腰が痛いことでしょう。お疲れ様。

おせん役の内田滋は歌えるし声もよく通る。この人は昨年5月に初台で、ドイツ人作家の芝居「タトゥー」に出ていた。その時の暗~いイメージが今回完全に打ち砕かれて実に嬉しかった。ただ庶民的過ぎて、高級官僚が一目ぼれするようには見えないけど・・。

「北海道に左遷されて、今でもあそこでシャケ釣ってるそうだ(笑)」、このセリフはまずい。北海道をまるでこの世の果てみたいに言うとは・・。この芝居、北海道でやる時にはここを変えないと。

ざる売りの五郎蔵役の藤原竜也はとにかく声がいい。しかしたまにはこの人が恋をする(男を演じる)ところが観たい。エリザベス一世じゃないけど「あの男に恋人を演じさせよ」と言いたい。

捨て子、身投げ、児童(使用人)虐待・・舞台で直接演じられはしないが、登場人物の口を通して語られるのは考えてみれば寒々しくも恐ろしい素材ばかりだが、作者の軽妙な筆に乗せられて、重い話も軽々と進んでゆく。

中年女性に対する一方的で差別的な揶揄など聞き苦しいところもあるし、結局はありきたりの人情物の枠を出ない作品とも言えるが、それでも、時代の大きな転換期に右往左往しながらも弱い者同士助け合いつつしたたかに生きていく庶民の姿が生き生きと描かれている。
丸谷才一が言うように、「プロレタリア作家」井上ひさしの面目躍如だ。

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