ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「ガラスの動物園」

2022-10-12 10:25:56 | 芝居
9月28日 新国立劇場中劇場で、テネシー・ウィリアムズ作「ガラスの動物園」を見た(演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ)。



新国立劇場の海外招聘公演。仏語上演、日本語と英語の字幕付き。

不況時代のアメリカ、セントルイスの裏町のアパートで、母と娘と息子がひっそりと暮らしている。
母アマンダは昔の華やかな思い出が忘れられない。娘ローラは高校中退、専門学校も辞めてしまい、家に引きこもっている。
弟トムは倉庫で働いて、家族のために家賃を払っているが、鬱屈した思いを抱えて詩を書いている。
娘の将来を心配した母は、トムに、誰かいい男性を連れて来るようにと頼む。
トムは同僚のジムを連れて来るが・・。

英語やドイツ語とはまた違った、短くて鋭い響きのフランス語が美しく魅力的。

冒頭、母親(イザベル・ユペール)はキッチンで料理をしながら盛んに子供たちに話しかけ、自分でも立ったまま食べ、飲み、動き回る。
そのエネルギーに圧倒される。しかも早口!
そして食べ物は全部本物。シリアルもミルクも。
蒸発した父の肖像画が壁にかかっているはずが、ないのが困る。セリフにも出てくるのに。
ソファと椅子がないのも不自然。
だから役者たちはキッチンのカウンターに座ったり、舞台の端(客席の真正面)に座ったりする。これもまた不自然。
なぜ椅子とソファを置かないのか分からない。

雨が振り出すと、母と息子は慣れた様子で空き缶やコップをいくつも取り出し、雨漏りが垂れる床に置く。

4人全員に共感できるし、感情移入できるというのが、やはり名作。
母親の言動も少々喜劇的に見えかねないが、それでも娘の将来を心配してのことだから、とても笑えない。
よい暮らしと輝かしい青春時代を謳歌していた彼女が、思いがけず没落してからも、かつての栄光の日々を語るのは、仕方ないことだろう。
しょっちゅう聞かされる子供たちは可哀想だが。

かつて学校で、ジム(シリル・ゲイユ)はローラ(ジュスティーヌ・バシュレ)のことを「ブルーローズ」と呼んでいた。
そのことをローラが言うと、ジムは大声で「ブルーローズ!」と言いつつ飛び上がる。すぐに思い出したようだ。

戯曲が普遍的ということ。だから4人の登場人物全員に共感しかない。これはすごいことだ。
そのことを今回、改めて思った。

ただ、中劇場は、この芝居には大き過ぎた。

フランスの俳優たちが、米国の芝居を、なぜわざわざ日本に持って来てフランス語でやるのか、と当初は違和感があったが、
これは、イザベル・ユペールの驚くべき演技を目撃できるというめったにないチャンスだった。

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