ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「オリンピーアデ」

2015-12-01 10:49:19 | オペラ
10月6日紀尾井ホールで、ペルゴレージ作曲のオペラ「オリンピーアデ」をみた(セミステージ形式、演出:粟國淳、オケ:紀尾井オペラ・アンサンブル)。

紀尾井ホール開館20周年記念バロックオペラ。
日本初演。全3幕を2部に分けて上演。

古代ギリシャの都市国家シチョーネの僭主クリステーネの娘アリステアはアテネの青年メガークレと愛し合っていたが、父クリステーネは結婚を許さず、メガークレは失意の内にクレタ島に行く。そこで王子リーチダに命を救われ、二人は揺るぎない友情を築く。
リーチダはアルジェーネという娘と密かに婚約していたが、父であるクレタ王は身分違いの結婚を許さず、アルジェーネは祖国を捨ててエーリデへと逃げてしまう。その地で彼女は身を隠すため、羊飼いの服を着てリーコリと名を変えて暮らしていた。
エーリデでは4年ごとにギリシャ全土から参加者が集うオリンピックの祭典競技が開催されていた。リーチダは悲しみを紛らわせようと、これに参加することにする。そこにシチョーネの僭主クリステーネがやって来て、優勝者に自分の娘アリステアをめとらせると決める。
リーチダはアリステア姫を見て恋に落ちてしまう。(かつて愛したアルジェーネを忘れている。)だが自分には戦いの経験がなく優勝には程遠いと感じる。そこで優勝経験のある親友メガークレを自分の身代わりとして戦わせることを思いつく。だがもちろんリーチダは、メガークレが昔アリステアと愛し合っていたことなど知る由もない。友からの強い願いでメガークレもエーリデの地に向かう…。

驚くなかれ、これはこのオペラのあらすじではない。このオペラが始まる前に起こった出来事なのだ!
リーチダへの友情から競技に出場する英雄的なメガークレ、愛情深いアリステア、不義と打算の人リーチダ、そして寛大で貞節を守るアルジェーネらが織りなす人間模様のドラマが展開する。

作曲家は26歳でこれを作り、27歳で早世したという。まさに天才だと思う。
ストーリーはシェイクスピアの「ヴェローナの二紳士」に似ている。2組のカップルが紆余曲折の末に結ばれる話だがその4人が全員女性という
のは…!?当時(バロックと古典の狭間の新古典の時代)カストラートが全盛だったらしいが。

チラシを読んだ時は、女性が一人で家を捨て祖国を捨てて旅に出る、というのはあまりにも危険なのでは?と思ったが。

D dur で明るく軽快に物語られてゆく。いわゆる貴種流離譚。

メガークレがリーチダから身代わりの出場を頼まれ、悩んだ末、親友のために恋人を諦める決心をし、「アリステアに会わないようにしないと。会ったらどうなるか自分でも分からない」と言っていると、すぐにアリステアがやって来て再会してしまうシーンが面白い。

リーチダは女二人から憎しみの言葉を浴びせられ、秘密をバラすと脅され、困ってメガークレに相談しようと思っていると、そこに彼の死の知らせが届く。畳みかけるような展開が素晴らしい。

メガークレが死んだと偽ってリーチダに反省させるという点は、これまたシェイクスピアの「冬物語」に似ている。

ズボン役の2人も、始まってみると全く違和感がない。
メガークレが絶望のあまり川に身を投げ自殺したという知らせを聞いて、リーチダは八方塞がりとなる。片思いの相手には呪われ、元カノからは、すべてを王にバラすと脅され、頼みの親友が死に、神の怒りが自分の身に降り注ぐのを感じ、恐れおののく。

ここから第2部。
アリステアはメガークレが秘密を打ち明け、別れを告げると嘆き悲しんで倒れる。メガークレは彼女をリーチダに託して去る。
リーチダに介抱されて気がついたアリステアは、リーチダが名乗ると「全部あなたのせいよ!」と怒りのアリアを歌う。思いがけぬ言葉に面食らうリーチダ。このアリアは爽快。評者など嬉しくて涙が出た(笑)。

自暴自棄のリーチダは王を襲って捕らえられるが何も語らず、「この不幸な若者に居合わせた人々が同情した」と王の家来が報告する。このアリアが思いがけず美しい。もう一度聴きたい。

リーチダの顔を初めて見た時、王は早くも驚きと戸惑いを見せる。
リーチダがかつてアルジェーネに与えた宝石が決め手となり、かつて神託により、アリステア姫と共に生まれた双子である彼を海に流せと告げられ、そうするようにと命令を受けたが、果たせず、海岸で見知らぬ異邦人に託した、と王の家来が告白(ここも「冬物語」などに似ている)。その赤ん坊は生後すぐ死んだ王子の代わりにとクレタ王に献上され、養育されてきたと分かる。
彼の罪を許すかどうか、最後は民の判断に委ねる、と王。

リーチダは処刑される前に、何か願いは?と問われ、友人に会わせてほしいと言う。メガークレが来ると、リーチダは「君が生きていてくれてよかった。一言だけ言う、生きろ、死ぬな」と。ここでも泣かされた。王子ハムレットが死ぬ前に親友ホレイショーに言うセリフそのままだ。

とにかく歌手陣がすごい!澤畑恵美、向野由美子、林美智子、幸田浩子、望月哲也、彌勒忠史、吉田浩之。全員の素晴らしい歌唱力に酔いしれた。
セミステージ形式はあまり好きではないが、今回全く違和感なく、ストーリーに没入できた。ペルゴレージの音楽と歌手陣のお陰だろう。

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