ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

イプセン作「海の夫人」

2015-07-20 21:48:10 | 芝居
5月26日新国立劇場小劇場で、H.イプセン作「海の夫人」をみた(演出:宮田慶子)。

北部ノルウェーのフィヨルドを臨む小さな町。灯台守の娘エリーダは初老の医師ヴァンゲルと結婚し、先妻の二人の娘ボレッテとヒルデ
と共に穏やかに暮らしていた。エリーダにはかつて結婚の約束を交わした船乗りの恋人がいた。彼との関係が途絶え、生活が保証された
ヴァンゲルの後妻となり愛される日々を過ごしてきたが、生まれたばかりの息子を亡くし、ここ数年は精神が不安定で空虚な生活を送って
いる。毎日海で泳いでばかりいる彼女を近所の人々は「海の夫人」と呼んでいた。
そんな中、突然かつての恋人が現れ、一緒にここを出ていこうと言う。自分の意志で結婚したわけではなく、ずっと自由への憧れを胸に
秘めていた彼女は、海と同じ引力を持つその男の登場で心揺れるが…。

舞台装置が斬新。中央の細長い舞台を両側から客席が挟む形だが、舞台の片方の端が小高くなっている。もう片方は反り返った壁だが、
足がかりがついているので、少し上まで登れる(美術:池田ともゆき)。

原作は1888年に出版され、翌年の初演は大成功だった由。
北欧らしく重苦しい話だが、笑えるシーンも幾つかある。
年頃の娘ボレッテ(太田緑ロランス)を巡る恋の駆け引きは面白いが、当時の女性にとって、成人した後は誰かと結婚するという選択肢
しかなかったという厳然たる社会構造が、改めて胸に迫って来る。

エリーダのかつての恋人(真島秀和)は黒づくめの衣装で不気味に現れる。「さまよえるオランダ人」のような印象で、非常に魅力的。
彼は武器を所持しているが、決してちからづくで元カノを拉致しようとはしない。「そんなことをして何になる」と言うように、見た目と
違って意外と紳士的だから、尚更エリーダも揺れ動く。

ヴァンゲル夫人エリーダ役の麻美れいが、いつもながら素晴らしい。

「人形の家」とは異なる結末に、初演時のたいていの観客はほっとしたのではないだろうか。だから当時大成功だったのかな、と、これは
うがち過ぎか?

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