ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「黒蜥蜴」

2018-02-06 10:45:16 | 芝居
1月9日日生劇場で、三島由紀夫作「黒蜥蜴」を見た(原作:江戸川乱歩、演出:デヴィッド・ルヴォー)。

宝石商・岩瀬は娘・早苗を誘拐するという脅迫状に脅え、私立探偵・明智小五郎を雇う。大阪のホテルに身を潜める父娘の隣室には、岩瀬の
店の上客である緑川夫人が宿泊していたが、実は彼女こそ、誘拐予告をした張本人の女賊・黒蜥蜴だった。黒蜥蜴は部下の美しい青年・雨宮
を早苗に紹介すると見せかけ、彼女を奪い去り、そうとは知らず犯人を警戒し続ける明智の前に、何食わぬ顔で現れる。
クールでいながら犯罪へのロマンティックな憧れを隠さない明智に魅入られた緑川=黒蜥蜴は言う。「要するにあなたは報いられない恋を
してらっしゃる。犯罪に対する恋を」。明智はすかさず切り返す。「でも自惚れかも知れないが、僕はこう思うこともありますよ。僕は
犯罪から恋されているんだと」。自信に満ちたその態度を裏打ちするかのように、明智は見事に早苗を奪還してみせる。
が、黒蜥蜴は怯まない。
美の狩人・黒蜥蜴VS.名探偵・明智小五郎の勝負は、報われない結末に向かってさらにヒートアップしてゆく・・・。

その初日を見た。
この作品はこれまで2回見たことあり。その前にテレビで見たこともあった。主演は三輪明宏、そして麻実れいだったか。
原作は江戸川乱歩。それを三島由紀夫がよくできた芝居に仕立てた。
ただ、最後のソファのくだりはいろんな意味であまりいただけない。
突っ込みを入れる余地が大いにあるが、やめておこう。ここを認めないと、この感動的な芝居は成立しなくなるので。

「~したの」の代わりに「~したんだわ」というなど、古い東京弁が多用され、いささか耳に引っかかる。

緑川夫人(実は女賊、黒蜥蜴)役の中谷美紀は声が素晴らしい。「猟銃」で演技のうまさは知っていたが、第一声を聴いた時、評者は思わず
オシッ!と心の中で叫んだほど。それはまさに緑川夫人の声だった。セリフ回しも演技も申し分ない。

名探偵・明智小五郎役の井上芳雄は受身の役だが、なかなかカッコいい名探偵ぶり。少々若過ぎるが、中谷美紀の情熱をしっかり受け止める。

雨宮潤一役の成河は適役。
家政婦ひな役を朝海ひかるがやるというのには驚いた。今まで若きヒロインを演じるところばかり見てきたので。
だが、この役は重要かつ結構面白いし、もちろん達者に演じていた。

「私が死ぬのは捕まったからじゃないの。私の本心を聞かれてしまったからなの」
人を人とも思わぬ恐ろしい犯罪を重ねてきた女が、生まれて初めて人を愛してしまった。彼女は自分が自分でなくなることへの恐れに錯乱し、
どうしていいか分からない。そして探偵もまた、そんな彼女に強く惹かれているのだった。切ない・・・。

そんな切ない気分をますますかきたてる生演奏。いささか通俗的だが、要所要所に適切に使われ効果的。悪くない。
ただ、時々肝心のセリフが聞こえない。三島の芝居は華麗なセリフがキモなのだから、そこは気をつけてほしい。

緑川夫人はシーンごとに服を変え、それが皆、その場にふさわしく、しかも非常に美しい(衣装:前田文子)。
今回の衣装は決定版ではなかろうか。

今まで見た中で、一番ロマンチックで官能的な演出だった。忘れがたい。
ただ、残念ながら芝居の流れが悪い所があり、役者がセリフを忘れたのかとハラハラさせられる場面もあった。



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