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あとは野となれ大和撫子


 宮内悠介    角川書店

 かってアラル海という海があった。ソ連時代、灌漑用水を採取するため、湖に流れる川の水量を制限した。ソ連はなくなった。そしてアラル海もなくなった。
 干上がったアラル海の跡に小国アラルスタンができた。中央アジアの小国である。カザフスタン、ウズベキスタンといった国に囲まれている。イスラム過激派もいる。そんな国が舞台である。
 アラルスタンの初代大統領が作った後宮。2代目大統領は女性の教育に熱心。後宮を教育機関に変えて、多くの若い女性に教育をほどこしていた。名大統領ともいうべき2代目大統領アリーが暗殺された。国は大混乱。国会議員たちはみんな逃げ出した。周辺諸国がアラルスタンを狙う。イスラム過激派のゲリラも首都に向かって進軍してくる。国を司る者はだれもいない。アラルスタン国家存亡の危機。アラルスタンをだれかが見なければならない。
 そんな時手を上げたのは、アリーの教え子後宮の少女たち。「しょうがないから、国家をやることにしようかな」
 少女たちのリーダーでチェチェン難民の子アイシャが大統領臨時代理に、とりあえず政府を作った。日本からこの地に技術指導に来ていた両親を空爆で亡くした日本人少女ナツキは国防相に就任した。アフガニスタンから逃れてきた子、少数民族の子。ワケありな女の子たちが、逃げ出した男どもに代わって国を運営する。迫り来る過激派。なんとか頼りになりそうなアラルスタン国軍の大佐でさえ「いっておくが、俺たちの軍は弱いぜ」四面楚歌、内患外憂、八方手詰まり、少女たちは国を救えるか。
 なんとも痛快なエンタメ小説である。ただ、国家運営が女子高のクラブ活動に見えないこともない。
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