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とつぜんコラム №189 国の「終活」を考える

 先の東京都議選で自民党は惨敗した。かような武蔵野の地方選挙のことなど、どうでもいいことだが、これが国政選挙を占うサンプルと見るのならば、無関心ではいられない。
 加計学園の問題、稲田防衛相の失言など、安倍自民党にとってマイナス要因が多発したことも自民惨敗の要因の一つだろう。とはいいつつも、国政の現状は安倍自民党1強の状態であることは変わらない。支持率も落ちているとはいえ、まだ40パーセント台だ。この支持率は自民党内でも安倍さんに代わる人材がいない。また、自民党に取って代わる政党がない、など、他にいないという消去法ゆえの安倍自民党の支持率ではないだろうか。それに、曲がりなりにも日本の経済が、とにもかくにも回っているから、この支持率であろう。これが経済が回らなくなると、支持率はさらに下がるだろう。
 経済が回る。これは経済が、ゆるやかではあるが右肩上がりが期待できるゆえの希望だろう。経済とは、とどのつまり、モノが売れてお金が世の中に回っているということだろう。ようするにモノが売れるという前提にたっての話だ。ところが、21世紀のこの日本で、20世紀ほどモノが売れるだろうか。売れまい。出生率の低下。人口の減少。それになんといっても、モノはほぼ行き渡っている。   
例えばテレビだ。いまどきテレビのない家はないだろう。若い知人はテレビを持ってないが、だいたいが、今の若い人はテレビなど見ない。テレビはないがスマホとパソコンは持っている。そういう人は別として、たいていの家にはテレビはある。もう、これ以上、日本でテレビが売れるだろうか。売れるとしたら、買い替えの需要のみだろう。
 かっては放送の受信装置はラジオだけだった。それが映像も見られるテレビが出現。売れた。映像に色がついた。カラーテレビが売れた。あと液晶だ、ハイビジョンだといって、次々新しいテレビが出て売れた。次のテレビとして4Kだの8Kだのといっているが、白黒がカラーになった時ほどの爆発力は期待できないだろう。
 テレビを例に取ったが、これはすべての工業製品にあてはまるのではないか。素直に考えても判る。この世に無限のモノはない。日本の人口は有限なのだ。市場には限りがある。こう考えると、未来永劫、経済が右肩上がりで伸びていくことはない。
 経済だけではない。日本は成熟した文明国である。成長途上の青年期の国ではない。中年ではない。もう初老の国といっていいだろう。いずれ老年となり、衰弱して死を向かえるだろう。だから、いつまでも右肩上がりなどという幻想を追わず、右肩下がりということを前提とした、為政が必要ではないだろうか。
 そして、いずれくる国としての死を向かえることも意識しなくてはならないだろう。どんなモノにも必ず終わりがある。国としての「終活」の準備も視野にいれなければなるまい。そういうことを踏まえたうえで、いかに今を安楽に暮らせるかを考えなくてはならない。
 これは日本だけのことではない。人類の文明もいずれ滅ぶ。生物のひとつの種としての人類も成熟期にかかっている。もう、これ以上の繁栄は望めないだろう。いかに、おとなしく、他の生命に迷惑をかけないよう、文明を持った生命としての誇りを持ちつつ、終焉を迎えるかを考えなくてはならない。
 
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海底2万哩


監督 リチャード・フライシャー
出演 カーク・ダグラス、ジームス・メイスン、ポール・ルーカス

 いうまでもなくジュール・ベルヌの古典SFを、ウォルト・デズニーが映画化したのが本作。古い映画である。1954年の映画だ。
 昔のデズニー映画らしく、明るく楽しく実に健全な映画である。お話は原作が古典だから、ご存知のムキも多かろう。世界各地で船舶が沈没させられるという事故が多発。船乗りはこわがって航海に出ない。海の怪物は海運業の大きな脅威となっている。
 アメリカ政府の依頼を受け、パリ博物館のアロナクス教授は助手のコンセイユとともに調査船に乗り込む。船には銛打ちの名人ネッドも乗っていた。その調査船も怪物に襲われ沈没。アロナクス、コンセイユ、ネッドの3人は「怪物」に助けられる。「怪物」それは天才ネモ艦長率いる高性能潜水艦ノーチラスだった。3人はネモから捕虜のような客人のような待遇で迎えられる。
 そして3人は、驚異の海底旅行をする。海底のお弔い、海底の収穫、沈没船の宝箱、人食い人種の襲来。などなど、さまざまはイベントで楽しませてくれる。メインイベントは大イカとの戦い。このシーンはさすがに迫力があった。いまでも怪物映画として通用するのではないか。
 しかし、この時代は、ダイオウイカは深海の謎の怪物だったのだな。今はNHKで生きて動いてる動画が放送されるし、しょっちゅう水揚げされてるし、神秘でも怪物でもない、ただのでかいイカだ。
 この映画のノーチラス号のデザイン、良くできていると思う。

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