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マグニフィセント・セブン


監督 アントワーン・フークア
出演 デンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ、イ・ビョンホン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、マーティン・センズメアー、ヘイリー・ベネット、ピーター・サースガード

 黒澤明「七人の侍」ジョン・スタージェス「荒野の七人」いずれも小生の大好きな映画。本作はこの名作2本のリメイク。大好きな名作のリメイクということで、少々危惧をいだきながら観た。危惧は不要であった。大変に良かった。久しぶりに観た本格西部劇だ。近頃、本格西部劇がないとお嘆きの小生も大満足である。
「七人の侍」を原点とする西部劇「荒野の七人」シリーズは「荒野の七人」「続・荒野の7人」「荒野の7人 馬上の決闘」「荒野の七人 真昼の決闘」と4本ある。それぞれの俳優と役名は次の通り。
志村喬=勘兵衛、ユル・ブリンナー=クリス、ジョージ・ケネディ=クリス、リー・ヴァン・クリーフ=クリス。勘兵衛の志村はもちろん日本人。3人のクリスは、ブリンナーは東洋人の血が入っているらしいが、全員白人俳優。今回は七人のリーダーが黒人で、しかも役名がクリスではない。「荒野の七人」から「荒野の七人 真昼の決闘」の4作のクリスは俳優は違うが、同一人物という設定だろう。
今回のリーダーはサム・チザムという。クリスとは違う人物である。基本的な設定は「七人の侍」「荒野の七人」と同じだが、依頼人の依頼動機、主人公の設定、他の6人のキャラ、そしてなにより悪役の設定が違う。
ローズ・クリークは開拓民が苦労してつくった町。そこから金が出た。金鉱採掘権を持った実業家ボーグは、金採掘にじゃまな町民に立ち退きを迫る。立ち退き料20ドル。もちろん町民は拒否。ボーグはヤクザな手下を大勢かかえていて町民に暴力。勇気ある町民の一人がボーグに抗議。ボーグ冷酷に射殺。夫を殺されたエマは夫の仇討ちと町を守るため、全財産を持って助っ人を探す。そして彼女はすご腕のガンマンで賞金稼ぎのサムと出会う。
あとは、おなじみの展開。サムをリーダーに6人の助っ人を雇い、町民に銃の訓練をして、強大な敵を戦う。
秀逸だったのは悪役の実業家ボーグのキャラ。「荒野の七人」の野盗の頭目カルベラは愛嬌があり七人を追放するだけという甘い所があったが、ボーグは冷酷で非道なんとも憎たらしい悪役となっていた。この敵役の造形がこの映画の成功の一つの要因だろう。
 敵役の変遷を見ても面白い。「七人の侍」野武士、「荒野の七人」野盗、「続・荒野の七人」野盗、「荒野の七人 馬上の決闘」メキシコ政府軍、「荒野の七人 真昼の決闘」山賊、「マグニフィセント・セブン」実業家。悪役が実業家である。主人公のサムが黒人男性。もう一人の主人公たるエマが白人の女性。悪役が白人の男性。これをオバマ、クリントン、トランプとなぞらえるとなかなかおもしろい。
 ともかく、西部劇好きの飢えを癒してくれた。ただひとつだけ不満が。負け戦ばかりの落ち武者勘兵衛は死に場所を求めて、流れ者のガンマンのクリスは少しの金と正義のため、ところがサムは違う。どう違うかはネタバレになるので書かない。とはいえ、名作である。
エンドロールで、この曲が流れた時はウルッと来た。

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