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狐の呉れた赤ん坊


監督 丸根賛太郎
出演 阪東妻三郎、楠公子、羅門光三郎、寺島貢、谷譲二

 昭和20年の映画である。GHQの通達により、封建的なテーマやチャンバ時代劇は造れなかった。それでも時代劇は造られた。その代表作がこの作品だろう。
 主演はチャンバラスター阪東妻三郎。バンツマの名前は知っていたが、バンツマ映画を観るのは初めて。チャンバラをしないバンツマの映画だ。
 張子の寅八は大井川の川越え人足。酒飲みの暴れ者。喧嘩なら人に負けない。そんな寅八が狐狸妖怪が出るという森から赤ん坊を拾ってくる。意地っ張りの寅八は「俺が育てる」といった手前その赤ん坊を育てる。
 大酒呑みで喧嘩っ早いガサツな男が、実は優しくの人情に厚い男。定石どおりのキャラだが、バンツマが実に上手く、暴れん坊寅八を大変に好感の持てる人物を演じている。この赤ん坊の正体は予想される通りで、良い子に育つ。善太と名づけられた赤ん坊が七つになったとき実の父子といういってもおかしくない寅八、善太の身の上に大きな出来事が起こる。
 古い映画だけあって、歌舞伎っぽい雰囲気はするが、それが新鮮で、なかなかけっこうな人情話になっている。
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