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生きてるだけで、愛


 本谷有希子         新潮社

 あたしはエキ子。エキセントリック子の略なんだ。え、もちろん本名じゃないんよ。あたし板垣寧子25歳。「ムラのあるテンションとたまの奇行が玉にキズ」なんだけど、なんだかしんどいのよ。生きてるだけで疲れるの。ウツなんだ。過眠症なのよ。ずっと布団の中にいたいんだ。
 バイトするけど、長続きしないね。こんなあたしだから。で、合コンでたまたま隣に座った津奈木の部屋に居候してんの。同棲っちゃ同棲ね。
 で、津奈木の元カノがあたしを拉致して、無理やりイタ飯屋でバイトさせるんだ。そこは元ヤンキーがやってる店で、店のみんなはあたしに「ガッキー」なんてニックネームをつけて良くしてくれたわ。ここのみんな、燃えてるの。「日本一の店」にするんだって。トイレの壁に、相田みつをの「不器用だっていいじゃない、人間だもの」って句が貼ってあるし。けど、あたしそこのトイレ壊して辞めちゃった。だって、そこのトイレ、ウォシュレットだもん。ウォシュレットってこわいもん。
 あと、こんなこともあったわ。あたしが録画しておいた松岡修造のビデオ、あいつが勝手にはや送りするんだ。あたし、柿ピーをポケットに入れて部屋を出たわ。
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