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とつぜんSFノート 第35回

 小生が生まれて初めて買ったパソコンはNECのPC-8801MK-ⅡSRだった。ディスプレイはPC-KD851。プリンターはPC-PR101。全部で50万円ほどだったと記憶する。ボーナスをはたいて買った。8ビット機である。当時、16ビット機のPC-9801も発売されていて、どっちを買おうか迷っていた。その方に詳しそうな岡本さんに相談すると、「そりゃ16ビットの方がいいですよ。雫石さん」とアドバイスをくれた。それでも、いろんなことで、とっつきやすそうな8ビット機のPC-8801を買った。今から考えると後悔している。岡本さんの助言に従って9801にしておけば良かった。
 それでも8801は良い機械だった。名機といってもいいだろう。愛用した。10年以上使った。
 ゲームでよく遊んだが、今もそうだが、当時から星群の会の連絡人をやっていた。入会受け付け、雑誌の発送、会費の督促などの事務仕事をやっていた。その仕事に8801を使った。会員名簿は、どういうソフトだったか忘れたが、簡単なデータベースで管理していた。最もよく使ったのがワープロソフトだった。会員に出す、色々な書類はワープロで作成して、フロッピーディスクに保存していた。
 小生にとって、このワープロソフトの導入は画期的だった。まさに小生の人生で、知的活動面での最も大きな転換点だった。
 それ以前は、もちろん紙に手書きしていたが手書きは嫌だった。様々な筆記用具を使った。どれも気に入らなかった。万年筆は、小生はいらちゆえインクが乾ききらないうちに紙面に触れ、字をにじませてしまう。鉛筆は、手のひらでこすって黒ずませる。ボールペンはチップの横にできたインクの球が紙にベタッとくっつく。シャープペンシルは芯がポキポキ折れる。そもそも小生は筆圧が強い。だから手書きすると肩がこるのだ。そして、これが小生が手書きが嫌な最も大きな理由だが、小生は字が下手なのだ。子供が書いた字のようなカナクギ流で、人に自分の字を見せるのが嫌だった。字を書くのは嫌いなのに、文を書くのは好きという、実に困った人間なのだ小生は。
 幸い、同人誌星群の編集をやっている人は、長いつきあいの人で、小生の下手な字もよく知っている。最終的に印刷されるから、字の上手い下手は関係ない。手書きの原稿を見せる人は限られた人だから、あれこれ筆記用具を試しながら、なんとか手書きで過してきた。
 そういう小生がパソコンを買った。キーボードなんて初めて触る。カタログのキーボードの写真を切り抜いて、机に張って、キー配列を覚え、写真を指で触って練習した。なんとかキーボードを扱えるようになって、ワープロソフトを買った。ワープロなるものが発売されたことは知っていた。タイプライターとどう違うのかよく判らなかった。それでも、手書き以外の文章作成方法を考えていた小生にとって渡りに舟だった。
 最初に買ったワープロソフトは「ユーカラ」だった。使ってみて驚愕した。文章を書くという作業を、根底から覆すツールだった。タイプライターとは全く別のものだということも判った。画面上に字を表示して文章を作成する。編集、修正、訂正は自由自在。その画面上の文章を好きな枚数だけ印刷できる。しかも印字された文書は、小生の文章でありながら、下手くそな字ではなく、読みやすい文字でプリントアウトされている。さらにさらに、その文書を紙ではなく、フロッピーディスに保存でき、好きなときに呼び出して自由にアレンジできる。これほど便利でありがたいものはなかった。
「ユーカラ」だけではなく「JAT8801」や「春望」といったソフトも買って、あれこれ試し使いして楽しんでいた。
 その後、8801とは別に、ワープロ専用機も買った。NECの「文豪」だった。この機械も愛用した。
 そしてウンドウズパソコンに乗り換え、インターネットを始めて、現代に至っている。今はワードと一太郎を使い分けている。小説など縦書きの文章は一太郎を使い、ブログの記事や、ちょっとしたエッセイなど横書きの文章はワードを使っている。 
 今は手書きはほとんどしなくなった。だから、生命保険の控除の書類やら、扶養家族の届書など、しかるべき所に提出する書類を書く時は気が重い。困ったものである。少しは手書きの練習もするか。
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