雫石鉄也の
とつぜんブログ
最後の課題
軍人の死刑は、伝統的に銃殺となっている。その軍人が半人前であっても銃殺に処せられるらしい。現に今、オレはこうして銃口の前に立たされている。
銃声が響いた。弾丸が身体にくい込むのが判る。痛い!次の瞬間には意識をなくした。
思わず胸をさすった。そこに穴は開いてなかった。夢か。このところ毎晩のように銃殺される夢を見る。なぜかは判っている。あと、三日でそれが現実になるからだ。
この宿舎は二人部屋だ。同室の男は課題を果たして部屋を出ていった。オレも三日後には出ていく。
銃殺されて死体で出ていくか、課題を果たして教官たちに祝福されて出ていくか、いずれにしても、この訓練所でのオレのカリキュラムは終わる。
あと三日以内に課題を果たさなければならない。ロッカーを開けて拳銃を取り出した。扱い方の訓練は充分に積んだ。オレは必須科目の銃器の評価は特Aだ。その他の必須科目、選択科目はほとんどがAで、語学だけがBだ。C以上が合格だからオレは履修した全教科合格だ。ただ修了に必要な単位が一単位だけ残っている。その課題の期限が三日後なのだ。
銃を持って隣室へ入る。「妹」がまだ寝ている。オレより五歳下。「妹」アユミは十五歳だ。 安全装置を外し、銃口をアユミのこめかみに当てる。撃てるはずがない。
今はかりそめの平和が保たれているが、いつ何時彼の国と戦争になるか判らない。わが国と彼の国、建国以来絶え間ない戦争を続けてきた。この両国に完全な平和が訪れる時はどちらかの国が消滅した時だけ。
軍事は国の最重要事項だ。そんなわが国の最精鋭部隊が、最後の課題をクリアすれば、オレが入隊する部隊だ。
オレは祖国防衛の最前線に立つわけだが、オレは格別愛国者というわけではない。十歳でこの訓練所に入所した。オレに両親はない。ものごごろついた時は施設だった。施設で育ち、ある日軍服を着た人がやって来て、この訓練所に連れてこられた。どうも、施設が軍に提出した、オレに関する書類に軍の教育訓練担当者が興味を持ったらしい。
訓練所に入所したその日、オレに五歳の「妹」が与えられた。
「この子はキミの妹だ。名前もキミがつけなさい。そしてキミが育てなさい。育児の方法は教えます。キミにはこれから、一人前の軍人になるべく訓練を受けてもらう。妹は軍人にはならない。妹はキミの『妹』にしかならない」
訓練所の教育は厳しかった。妹はオレによくなついた。可愛い。訓練でへとへとになって宿舎に帰ってきて、アユミの顔を見れば癒された。ここの訓練生には必ず「妹」や「弟」がいる。
月日は流れた。訓練所にも休日はある。外出もできる。申請すれば軍の車も借り出せる。
アユミとよくドライブにいった。私服を着て軍から借りたスポーツカーにアユミを乗せて走っていると、恋人同士がデートしているように見えるだろう。
その日、高速道路のパーキングに駐車した。門限は午後十時。九時だから飛ばせば間に合う。アユミがトイレに行った。なかなか帰ってこない。見に行くと五人ほどの若い男に取り囲まれている。
「オレの妹になんの用だ」
「いや、なに、おにいちゃんには用はない」
かなりタチの悪そうな連中だ。格闘技特Aのオレは連中を処理するのに五秒かからなかった。アユミがオレの胸に顔を当てて泣く。
「怖かったわ。おにいちゃん」
オレは一生アユミを守っていこうと決心した。
「今から一週間以内にアユミを殺しなさい。首を切断して教務に提出しなさい。それが最後の課題です。実行出来なかったら銃殺です」
オレが今から入隊する部隊で最も求められること。平然と人を殺せること。なんのためらいもなく、殺せと命令されれば殺す。相手が敵ならもちろん。命令とあらば、相手が鬼でも蛇でも、親でも、恋人でも、そして可愛い「妹」でも。
課題を与えられてから四日経った。十年間妹としてかわいがってきたアユミだ。どうしても殺せない。
毎朝九時には教務からメールが来る。
「本日課題を果たすか?」
最終日にOKをクリックした。
「第四実習室に銃とナイフを持って来なさい」
第四実習室に行った。アユミが全裸でベッドにくくりつけられていた。実習室の床は流れた血を掃除しやすいようにタイル貼りだ。
アユミがすがるような目でこっちを見つめる。銃をアユミのこめかみに当てる。引き金を―。
銃声が響いた。弾丸が身体にくい込むのが判る。痛い!次の瞬間には意識をなくした。
思わず胸をさすった。そこに穴は開いてなかった。夢か。このところ毎晩のように銃殺される夢を見る。なぜかは判っている。あと、三日でそれが現実になるからだ。
この宿舎は二人部屋だ。同室の男は課題を果たして部屋を出ていった。オレも三日後には出ていく。
銃殺されて死体で出ていくか、課題を果たして教官たちに祝福されて出ていくか、いずれにしても、この訓練所でのオレのカリキュラムは終わる。
あと三日以内に課題を果たさなければならない。ロッカーを開けて拳銃を取り出した。扱い方の訓練は充分に積んだ。オレは必須科目の銃器の評価は特Aだ。その他の必須科目、選択科目はほとんどがAで、語学だけがBだ。C以上が合格だからオレは履修した全教科合格だ。ただ修了に必要な単位が一単位だけ残っている。その課題の期限が三日後なのだ。
銃を持って隣室へ入る。「妹」がまだ寝ている。オレより五歳下。「妹」アユミは十五歳だ。 安全装置を外し、銃口をアユミのこめかみに当てる。撃てるはずがない。
今はかりそめの平和が保たれているが、いつ何時彼の国と戦争になるか判らない。わが国と彼の国、建国以来絶え間ない戦争を続けてきた。この両国に完全な平和が訪れる時はどちらかの国が消滅した時だけ。
軍事は国の最重要事項だ。そんなわが国の最精鋭部隊が、最後の課題をクリアすれば、オレが入隊する部隊だ。
オレは祖国防衛の最前線に立つわけだが、オレは格別愛国者というわけではない。十歳でこの訓練所に入所した。オレに両親はない。ものごごろついた時は施設だった。施設で育ち、ある日軍服を着た人がやって来て、この訓練所に連れてこられた。どうも、施設が軍に提出した、オレに関する書類に軍の教育訓練担当者が興味を持ったらしい。
訓練所に入所したその日、オレに五歳の「妹」が与えられた。
「この子はキミの妹だ。名前もキミがつけなさい。そしてキミが育てなさい。育児の方法は教えます。キミにはこれから、一人前の軍人になるべく訓練を受けてもらう。妹は軍人にはならない。妹はキミの『妹』にしかならない」
訓練所の教育は厳しかった。妹はオレによくなついた。可愛い。訓練でへとへとになって宿舎に帰ってきて、アユミの顔を見れば癒された。ここの訓練生には必ず「妹」や「弟」がいる。
月日は流れた。訓練所にも休日はある。外出もできる。申請すれば軍の車も借り出せる。
アユミとよくドライブにいった。私服を着て軍から借りたスポーツカーにアユミを乗せて走っていると、恋人同士がデートしているように見えるだろう。
その日、高速道路のパーキングに駐車した。門限は午後十時。九時だから飛ばせば間に合う。アユミがトイレに行った。なかなか帰ってこない。見に行くと五人ほどの若い男に取り囲まれている。
「オレの妹になんの用だ」
「いや、なに、おにいちゃんには用はない」
かなりタチの悪そうな連中だ。格闘技特Aのオレは連中を処理するのに五秒かからなかった。アユミがオレの胸に顔を当てて泣く。
「怖かったわ。おにいちゃん」
オレは一生アユミを守っていこうと決心した。
「今から一週間以内にアユミを殺しなさい。首を切断して教務に提出しなさい。それが最後の課題です。実行出来なかったら銃殺です」
オレが今から入隊する部隊で最も求められること。平然と人を殺せること。なんのためらいもなく、殺せと命令されれば殺す。相手が敵ならもちろん。命令とあらば、相手が鬼でも蛇でも、親でも、恋人でも、そして可愛い「妹」でも。
課題を与えられてから四日経った。十年間妹としてかわいがってきたアユミだ。どうしても殺せない。
毎朝九時には教務からメールが来る。
「本日課題を果たすか?」
最終日にOKをクリックした。
「第四実習室に銃とナイフを持って来なさい」
第四実習室に行った。アユミが全裸でベッドにくくりつけられていた。実習室の床は流れた血を掃除しやすいようにタイル貼りだ。
アユミがすがるような目でこっちを見つめる。銃をアユミのこめかみに当てる。引き金を―。
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中日の守備がウノさんやったら阪神勝っとったかも
阪神の二人の外国人ピッチャーやようがんばっとうやん。メッセンジャーにしても、きょう投げたスタンリッジにしても、報われないピッチングをもくもくとこなしとう。メッセンジャーはこないだ報われたけど、スタンリッジ、きょうも報われなかった。かわいそう。被安打3。森野にホームラン打たれた。この1本が決勝打。あまりにきのどく。
阪神の打線はもっと打ったれよ。フライばっか打上げてからに。中日の内外野が全員ウノやったら、阪神勝っとんたんやけどな。いっぺん中日のベンチに頼みに行け。ウノさん、久しぶりにへディングやってくださいよ。って。
阪神の打線はもっと打ったれよ。フライばっか打上げてからに。中日の内外野が全員ウノやったら、阪神勝っとんたんやけどな。いっぺん中日のベンチに頼みに行け。ウノさん、久しぶりにへディングやってくださいよ。って。
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