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マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙


監督 フィリダ・ロイド
出演 メリル・ストリーブ、ジム・ブロードベンド、アンソニー・ヘッド

 政治家だったマーガレット・サッチャーは、政界を引退し老後を過している。夫デニスは亡くなった。年老いたマーガレットは認知症を患っている。そんなマーガレットにとってデニスはまだ健在で、いつもマーガレットのそばにいる。
 イギリス初の女性首相で「鉄の女」と呼ばれ、重症の「英国病」に罹りどん底だったイギリスを、らつ腕を振るって建て直したサッチャー首相の伝記である。
 食料品屋の娘で政治家を志した独身時代のマーガレット。ヒース内閣の教育相を経て首相に就任。フォークランド戦争を戦い勝利し、イギリス国内で頻発する労働争議。北アイルランドIRAのテロと戦い、膨大な財政赤字を解消し、ソ連のゴルバチェフ、アメリカのレーガンとともに冷戦終結の立役者となった保守党党首で首相の時代。そして夫に先立たれ、認知症患者となった一人の老人のマーガレット・サッチャー。時間的には晩年のサッチャーに比重が多く、回想という形でイギリスの指導者サッチャーを描いている。
 サッチャーは、かなり強引で強権的な政治家だ。これほどの強烈なリーダーシップを発揮できる政治家でないと、当時のイギリスの舵取りはできないだったろう。フォークランドでアルゼンチンと戦い、北アイルランドでIRAのテロにさらされ、各地で発生する暴動、重くのしかかる財政赤字。しかし政権末期のサッチャーは独裁者になりかけていた。イギリス国民はそのサッチャーを辞任させた。国のリーダーを国民の意志で選ぶ民主主義の優れているところを見た。もしあの時、イギリスに民主主義がなかったらサッチャーは独裁者となっていただろう。
 圧倒的なメリル・ストリーブの演技である。独身の若いことは別の女優がやっていたが、政治家になってからと晩年はストリーブが演じている。特に認知症を患ったマーガレットの演技は鬼気迫るものがあった。サッチャーを通じて現代史を垣間見る興味は薄いが、一人の有能な女性の人生を知ることができる。
「皿洗いで一生を過す」より、社会で仕事をすることを選び、引退し認知症になって、夫との思い出に生きる一人のイギリス人女性。その仕事というのが首相だったということだ。  
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