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JFKふたたび

「弾の残量は」
「ほとんど残ってません」
 隊長のカダに聞かれた、クド軍曹はサバサバした表情で答えた。
「正確には、あとどれぐらいだ」
「全員、銃での自決はできません」
 ジャイの侵攻軍は、すぐ目の前にいる。ハンとジャイ。国境を接しているこの2国は、少々の小競り合いはするが、おおむね平和は保たれていた。先の大戦から60年。スポーツの交流を通じて、友好関係を発展させ、平和友好条約の締結にこぎつけるまでに関係は良くなっていた。
 ところが、1ヶ月前、突如、ジャイ陸軍が国境を突破、ハンの首都にあと50キロの距離まで迫ってきた。理由は簡単だった。ジャイのもう一つの隣国ドラの独裁者キチアイが失脚。あとにジャイの傀儡政権が樹立した。後顧の憂いをなくしたジャイの独裁者ベツネは、ただちにハンに侵攻した。ハンの情報不足が招いた危機だ。対外情報担当のオマリ少将は責任を問われ処刑された。
 ここは首都の西方50キロ。山あいの基地コーエン。両側を山に挟まれた、細長い土地にこの基地はある。ジャイ軍は基地の南に布陣している。このコーエンを落とされれば、ジャイは首都まで一気になだれこむだろう。
 不思議な静寂だ。銃声が途絶えてどれぐらいたっただろうか。ずいぶん前のような気がするし、ついさっきのような気がする。前線は完全に膠着状態となった。
「敵も弾がつきたか」
「判りません。ラハは何を考えているのやら」
 敵将ラハ大尉はしたたかな指揮官だ。白兵戦の上手さは世界1との評価もある。
「もし、敵も弾ぎれなら、白兵戦ということになるな。狭い山道だ。少人数の白兵戦だな。ところで敵に戦車はあるか」
「斥候のアカホの報告では3台は有るそうです」
「ラハはそれをどこで使うかだな。白兵戦のメンバーを選んでおいてくれ」
 3人の屈強な戦士がカダの前に並んだ。トリ、カネ、アラの3人。いずれも歴戦の勇士で、カダの部隊では、白兵戦にかけては圧倒的な技量の持ち主だ。
 突然、砲弾が炸裂した。爆風は少ない。代わりに濃密な煙が立ちこめた。
「発煙弾だ。敵も弾切れだ、白兵戦で来るぞ。行け」
 アカホが最初に陣地を飛び出した。快足を飛ばして走る。あとにヒラが続いた。ヒラのあとに3人が走る。
 煙が薄くなった。目の前にジャイ軍が忽然と現れた。重装甲機動歩兵の大群だ。オレンジ色のヘルメット、パワーローダー仕様の強化セラミック製の装備で身を包んでいる。群れの前面に巨大な兵が3人。オガ、ラミ、カメだ。ジャイが誇る白兵戦専門の機動歩兵だ。
 トリが敵と接触した。閃光が3度瞬いた。トリの光線剣がひらめいた。鎧袖一触。3人の敵兵が彼の足元に転がった。3人とも胸に小さな傷があるだけ。心臓だけを光線剣のレーザーがえぐった。恐るべきトリの剣技。手練の早業だ。
 トリの働きで、敵の陣形に乱れが生じた。そのスキに、カネ、アラの2人が突入した。最強の鉄人カネが、超高速高周波振動破壊槌を振るう。本来は重機に装着して、要塞を破壊する道具だが、パワードスーツを装着したカネは、手で持って軽々と振るう。パワーアシストが働いているとはいえ、おそるべき怪力だ。破壊槌に触れた敵兵は、一瞬で消滅する。超高周波振動によって分子レベルまでバラバラに分解される。
 カネのすぐ後ろで大巨人アラが鉄棒を振るう。彼が振るうのは、ただの鋼鉄の棒である。それでなくても強大な筋肉の持ち主のアラが、超強力なパワードスーツを着用して振るえば、凄まじい破壊力の武器となる。
 アラの鉄棒がジャイの兵士の頭をかすった。紅い霧が一瞬舞った。兵士の頭が破裂した。紅い霧の後、白い破片が飛び散った。兵士の脳が飛散したのだ。
 ジャイの若い兵士がアラに襲いかかった。ジャイ屈指の光線剣の使い手サカだ。アラはサカの剣をかわして鉄棒を振るった。サカの腹にまともヒットした。ヘソを中心に胴体が切断された。鉄棒に赤いひもがまとわりついた。大腸だ。サカの大腸がアラの鉄棒にからみついている。ドサッ。切断面を上にして胴が地面に落ちた。赤黒い物体がどろりと流れ出した。肝臓だ。
 ハンの3人がジャイの兵士を破壊している少し先で、オガ、ラミ、カメのジャイの3人が同様のことをしている。トリがオガに接触しようとした、その時、ジャイの陣地の奥から、3台の巨大な物体が姿を現した。戦車だ。カネの破壊槌と、ラミの破壊槌が激突した。達人が振るう破壊槌どおしが接触した時、振動周波数が一致することがある。そうなると、槌は分解せず、接触した瞬間、エネルギーを放出する。常人なら、エネルギーが槍となって、身体が真っ二つになるが、カネ、ラミともに超人兵。破壊槌をかまえたまま、ズズズズズと後方に滑った。摩擦で双方の靴から白煙が出る。
 カネが一瞬早く体勢を立て直した。ラミに向かう。ラミは後退した。オガ、カメの同じく後退した。
 閃光が三つ瞬いた。戦車が砲弾を撃った。トリ、カネ、アラの3人は至近距離から戦車砲の砲撃をうけた。
 トリが光線剣を振った。レーザーを止めて特殊チタン合金の剣が砲弾を受け止めた。トリは身体を回転させて剣を回した。砲弾はそのままジャイの陣地に飛び込んだ。
 カネが破壊槌を振った。高周波振動はOFFにしてある。破壊槌に当たった砲弾は一瞬、ひしゃげて、猛烈なスピードで飛んだ。カネが破壊槌を振ったあとで、砲弾が当たる音がした。破壊槌の先端が赤熱している。空気との摩擦で発熱したのだ。敵陣で閃光がしたあと、爆発音が聞こえてきた。
 アラが鉄棒を振った。砲弾の信管に当たった。砲弾が膨張した。爆発しているのだ。膨張しつつ飛翔した砲弾は、そのまま敵陣へ。着弾してから爆風が暴れた。
 伝説の再来だ。85年戦役のおり、シダ大佐指揮のハンの部隊が、やはりジャイの侵攻軍と接触。同じように戦車砲の直撃を受けた。その時の白兵戦の主力をになっていたのが、今の隊長で、当時のカダ中尉。そしてカケ、バスの3人。この3人がやはり、敵砲弾を撃ち返して、敵陣に甚大な被害を与えた。この3人の戦果は、長らく伝説としてハン国民の間に伝えられている。その伝説の3連発が、今、ここに再現された。
 カネたちの活躍で、戦車3台は進行を遅らせた。しかし、歩兵と戦車。それに、さすがにカネたち3人も、先ほどの荒業で体力を消耗して後方に退いている。戦車の後ろからは、ジャイの最強兵、ラミ、オガたちが進軍してくる。さしもの強力な、ハンの最前線部隊も、ジリジリと押されだした。このままだと、ここ聖地コーエンは落とされる。早急に戦車3台を撃破する必要がある。
「どうだ、あの戦車は処理できるか」
 カダが作戦参謀のキドに聞いた。
「あのタイプの戦車は特殊装甲です。まともに行ってはだめです。車両の前面に空気取り入れ口が開いているでしょう。あそこに正確に手榴弾をぶち込めば破壊できます」
「例の3人を呼べ」
 副官のクボに命じた。クボは発煙筒を打ち上げた。7色の煙が上空に上がった。
 シュッ、シュッ、シュッと空気を切り裂く音が3回聞こえた。3人の男がカダの前に立っていた。
「説明しろ」
 クボが状況を3人に説明した。その内の一人、ボタが立ち上がった。手には巨大な鉄球を持っている。鉄球に付いている鎖を持って回し始めた。鉄球も鎖もすぐ見えなくなった。かわりに銀色の円盤がボタの周囲に出現した。フッと円盤が消えた。次の瞬間、ジャイの兵たちに血煙があがった。真っ赤な太い一本の直線が現れた。その直線が戦車に延びた。ガゴーン。金属と金属が激しく衝突する音がした。ゴッ、鉄球が戦車の前に落ちた。一瞬、戦車が止まった。ボタの手を離れた手榴弾はその戦車の、空気取り入れ口に入った。ボゴン。戦車が止まった。内部の機構は完全に破壊されただろう。
 ジャフの左側に半円形の光が光った。ジャフが左腕を振ったのだ。彼の左手を離れた、チャクラムは自陣から敵陣まで、対角線の軌道を飛んだ。クロスファイアー。光の輪となったチャクラムは正確に敵兵の首をとらえて行った。その軌道上の兵はすべて首を飛ばされた。赤い線を引きながら、数十個の首が上空にとんだ。2投目をなげた。キーン。チャクラムが弾き飛ばされた。そこにオガが立っている。オガの振るう光線剣がジャフのチャクラムを弾いたのだ。
オガは戦車の前に立っている。戦車を守っているのだ。
 ジャフがチャクラムを手に持った。オガが剣を構える。静寂が走った。その場が凍りついた。ふわりジャフの右手がゆらめいた。1個のチャクラムが空中に舞い上がった。それはオガの脳天に落下。オガは剣でそれを払った。ジャフの左手が閃いた。もう1個のチャクラムが斜めに走った。ゴト、オガの首が落ちた。首のないオガの胴体がその場に突っ立っている。ぶわっ!かって首が付いていたところから鮮血がほとばしった。血の噴水が止まってからオガの胴体がゆっくりと倒れた。ジャフのチャクラム2段投げ。そのオガの死体を戦車が踏む。血液と臓物がキャタピラーにまとわりついてスピードが落ちる。ジャフの投げた手榴弾は正確に、その戦車を破壊した。
 フジの右手を離れたチタン合金の球は、彼の手を離れた瞬間真っ赤になった。炎の尾を引いた球が飛ぶ。ボッボッボッ。球がジャイ兵の身体を貫いていく。ヘソの下、腹、胸、後ろの兵ほど体の上に穴が開いていく。一番後ろの兵は頭部を破壊された。下あごだけが残っていて、顔の上半分が吹っ飛んだ。フジの投げた球は浮き上がって飛ぶのだ。2投目、3投目を投げた。行く筋もの炎がジャイの陣地を走った。球筋にいる兵は全員即死。フジの投げるチタン合金の球は、凄まじいスピードで飛ぶ。直撃をくらった兵は身体に穴が開くだけだが、その周囲は凄惨な光景と化す。穴の開いた兵の周囲にいた者は、着弾と同時に、その場を弾き飛ばされる。球のスピードがあまりに速いから、着弾した時のエネルギーは膨大なものになる。兵の毛穴から射出したエネルギーが物理的な破壊力を持って周囲の兵を襲う。弾き飛ばされた兵の中にジャイの古強者アベがいた。彼は30メートル飛ばされて着地した。顔がゆがんでいた。亀裂がいっている。裂け目から灰色の脳がこぼれている。右手は無い。左手は胴体からブラブラしている。骨の関節だけでかろうじてくっついている。地面に接触した背中は、べろんと皮膚が剥け、その中心に脊髄がむき出しになっている。衝撃で筋肉が飛散したため、肋骨がところどころ背骨に残っている。肋骨の間に赤い物体がピクピク動いている。心臓だ。さすがだ。さすがジャイの古強者アベ。強靭な生命力だ。
 フジの視線の先にラミがいる。ジャイ最強の兵だ。巨大な破壊槌を持っている。フジが投げた。ラミ、破壊槌を振る。炎の球はラミの頭をかすめて飛んだ。破壊槌は空振り。2投目。こんどは破壊槌とフジの炎の球が激突。一瞬に衝撃波は広がった。周囲に立っている兵はいない。死人の荒野に、二人の男が立っている。ラミの後方に残った1台の戦車が動いている。
 フジ投げた。ラミが破壊槌を振るう一瞬前に、球がラミの頭を破壊した。ドゴーン。戦車が砲を撃った。フジ投げた。砲弾と球がぶつかった。球の力の方が強かった。砲弾は弾き返され、フジの炎の球とともに戦車に向かって飛んだ。2発とも着弾。車体に巨大な2個の穴が開いた。その穴から火が噴出した。戦車が消えた。残の戦車砲弾が誘爆したのだ。
 ポンとフジの肩をカネが叩いた。トリ、アラ、アカホ、セキたちが、フジ、ボタ、ジャフにタッチしながら、ジャイの陣地に向かう。生き残った敵をしまつするために。
 聖地コーエンは死守された。
 
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阪神拙攻。またまた3チームが団子

 昨日までの巨人戦は、いわばエキビジションゲームみたいなもん。きょうからが本番。で、聖地甲子園で、広島に引導をわたすべく、先発した能見があかん。3回までに5点取られてしもた。
 一方阪神。広島より3本多い10本もヒット打っとんのに、金本のソロ、狩野のタイムリー、関本のツーランの4点。内容をからいうと、6点か7点取っとてもええ。拙攻といえよう。
 能見、久保、岩田の新3本柱がこのところ調子を落とし取る。大いに心配や。安藤はあの調子やし、誰を頼りにしたらええんや。
 またまた阪神、ヤクルト、広島が団子。おもろいことはおもろいけど、もうそろそろワシら阪神ファンを安心させてえな。
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