『リトル・トリー』を読んだ流れから、インディアンの文化に触れる書籍を数冊読みましたが、その中の1冊で時代小説家の赤木さんから贈られた本が、この『魂の民主主義-北米先住民・アメリカ建国・日本国憲法』。
11世紀後半、部族間の殺し合いのど真ん中に飛び込み「暴力より話し合いを」と説得し続け、最終的にインディアンたちによるイロコイ連邦の建国へ導いた若者の話に始まり、連邦建国と同時に成立したイロコイ連邦憲法がのちにアメリカ合衆国憲法、そして日本国憲法にどのような影響を与えたかということが綴られています。
もともと、現在のニューヨーク州北部に位置するオンタリオ湖南岸沿いに住んでいたモホーク族、オナイダ族、オノンダーガ族、カユーガ族、セネカ族がイロコイ族としてまとまり、イロコイ連邦が発足。1142年、発足するにあたり、5部族すべての人々に対して、全117項目に及ぶ新たな社会の詳細なルールが提示されます。それが「大いなる平和の法」と呼ばれる、今もって効力を失っていないイロコイ憲法なのです。
連邦大会議の見事な構成と役割分担、他者の意見を尊重し、たとえ少数意見でも互いが納得するまで話し合いを続ける討議方法には、現代人が置き忘れた「魂の自由」を尊重するインディアンの姿勢が如実に表れています。800年以上も前に、すでにこのような民主主義のルールを創り上げたインディアンの叡智に、改めて感銘を受けました。面白い本です。
著者は星川淳さん。現地での聞き取りも含め、10年に及ぶ調査を経て書き下ろしたものだそうです。初版は2005年6月。発行は築地書館で1,500円+税。