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大晦日の紅白歌合戦をテレビで観ていて奇しくもミュージシャンをアーティストと呼ぶ理由がわかった。

テレビやラジオを視聴していると音楽がかかるとき、歌手やバンド、作曲家、作詞家のことを「アーティスト」と紹介されることが多い。
私はそういう呼び方を耳にしてから違和感いっぱいで、なにをもってして音楽関係者を「芸術家」としなければならないのか理解できかなった。

演歌歌手がアーティスト?
アイドルグループがアーティスト?
オーケストラがアーティスト?

なんじゃいそれ?
しっくりこんな。
という感じだった。

で、先日の紅白歌合戦。
テレビでこれを観ていると、というか聴いていると出てくる連中のほとんどを私は知らないことに驚きを覚えた。
いかに世間から隔絶した生活を私は送っているのだろうか。
たはまた世の中に関心を払っていないのだろうか。といささかびっくりしたのだった。

「知らへんのはお父さんぐらいやで」

とカミさんは指摘する。
しかし聴いたことがないことには間違いなく、オープニングの郷ひろみ以降、松平健まで完全にアウェーの状態に置かれてしまった。
誰が出てきて何と歌っても、私には新人発表会とほとんどかわらなかったのであった。

しかしそれだけに「聴くことの質」に関してはかなり公平な判断が付いていた。

まず、これら私の知らない出演者たちにはある特定の傾向があることがわった。

その1:単品のアイドルがいない。

アイドルといえば昔は単品が常識なのであった。
私の時代、山口百恵でも桜田淳子でも、その後の松田聖子にしろ小泉今日子にしろだいたいが単品歌手でグループではなかった。
グループもいたにはいたが、ピンクレディやキャンディーズを除き、特別に秀でた人はいなかったように記憶している。
しかも一人分のインパクトは小さくなく、今のAKBだか日向坂だかなど大集団に圧勝の華やかさがあった。
もしかすると家電や薬と同じようにアイドルの世界も量販になっているのかも知れない。

2:ビジュアル重視

見た目が重視で明らかに歌が二の次であることもわかった。
派手な衣装。
奇異な踊り。
コンピュータ画像や最新の照明設備を駆使したセット美術戦略。
したがって映像のないラジオで聴いていると単なるどんちゃん騒ぎに聞こえてしまう。
一体あれは何なんであろうか。

3:歌詞が聞き取れない

かつて五木寛之がさだまさしの歌詞を取り上げ優れた日本文学であると評したことがあった。
今の歌は歌詞の意味がどうのこうのという以前に何を言っているのか聞き取れないことが多い。
したがって文学どころではない。
発音は外国語のようなイントネーションとよくわからない滑舌の日本語。
日本語であると認識するまで少し時間がかかることもある。
そして頻繁に交じる外国語の単語。
初めてサザンを聴いた高校時代。
桑田佳祐の歌い方は「ありゃなんじゃい」と思ったことがあったが、むしろそれは今やノーマルだ。
しかもたまに聞き取れたらどんなうたも相手を呼ぶ呼び方が「君が」「君が」「君が」でほとんど同じ歌詞のような様相を呈している。

4:そもそも歌がへたくそ

紅白歌合戦ではなく「NHKのど自慢」だったら鐘1つの歌が続出する歌唱レベル。
これには参ってしまった。
あるシンガーは「愛を込めて歌います」といった。
だから期待して耳を傾けていたら声は出ていないわ、かすれているわ、甲高いわ、何を言っているのかわからないでズッコケたのであった。
ある者はソウルミュージック風のバラードを歌い始めたのだが、はやり声が出ていなくてマイクを持っていない方の手の動きだけが米国の著名シンガーのような振り付けで動きつづける。
盛り上がりの部分でも基本ができていないらしく音程が微妙にずれているし、声に伸びがない。
カラオケ大会の様相を呈してきたと思った。
つまり格好だけ洋楽のトップスターをモノマネしたソウルシンガーやラップミュージシャンが紅白に出ているというわけなのであった。

司会の大泉洋が歌い終わった歌手に対して、
「いや〜〜〜〜、感動しました!」
と言ったとき、カミさんが一言。
「心にもないことを言わなあかん商売なんやな〜」

要はシンガーともアイドルともミュージシャンとも言いにくい、そんな人達なのだ。
だから十把一絡げで「アーティスト」とボカして呼んでいるのだろう。
芸術家も舐められたもんである。

なお、東京国際フォーラムから中継ということだったが、あちこち別の場所からも頻繁に中継されるため紅白歌合戦を観ているというよりも、どちらかというと往年の「ザ・ベストテン」を観ている感覚に陥ってしまったのは私だけだろうか。
次回から司会は久米宏と黒柳徹子にしていただきたいと思うNHK紅白歌合戦なのであった。






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