<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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ビデオが普及する前。
ロードショー公開が終わっている一昔前の映画を数本まとめて上映する「名画座」は映画好きの学生にとって貴重な存在であった。

難波道頓堀の戎橋劇場、キタ堂島の大毎地下劇場と大毎名画座は定番。
京都祇園会館は三本立てのボリュームで、まるまる一日映画三昧。
後に住んでいた地元で発見した堺国際劇場はほぼ貸し切り状態で2本立て。
名画座ではないが天王寺ステーションシネマでもちょっと遅れの映画を何本か鑑賞した。
いずれも忘れがたい映画館だ。
ついでに何度も繰り返しになるが、どの映画館も今はない。

私にとっての名画座映画館のメインは大毎地下劇場だった。

地下鉄四つ橋線の西梅田駅を下車。
駅と続いている堂島地下センターを歩いて南へ向かう。
途中、インディアンカレーで名物の酢キャベツでカレーライスを食べて腹ごしらえ。
目指す大毎地下劇場はそこからすぐで、時間があれば手前の旭屋書店で立ち読みをした。
ここの料金は確か前売りの学生価格が600円だっと記憶するが、この600円で数々の名画を知ることになった。

最も多い回数見た映画が「スティング」「明日に向かって撃て」「天国から来たチャンピオン」「大陸横断超特急」で、中でも「スティング」は何度見ても飽きない素晴らしい映画だと思っている。
初めて見たときはその結末の見事さにびっくり。
自分自身が映画の登場人物ロバート・ショー演じるシカゴの親分ロネガンみたいに何が起こったのか暫し呆然としたことを今も鮮明に思い出すことができる。
今でもたまにDVDで「スティング」を見るのだが結末を知っているのになぜかドキドキ楽しむことができる。
ポール・ニューマンの粋な感じ、ロバート・レッドフォードの若さ。
スコット・ジョプリンのラグタイム。
どれもこれも魅力的なのだ。

この大毎地下劇場のずっと上。
多分6階ぐらいだったと思うが、ここに大毎名画座があった。
ここはエレベータを降りたところがすぐ入り口。
驚くことに入り口のチケットも切りの場所が映写室になっていて客は映写機を見ながら客席に入る構造になっていた。
ここでは「俺たちに明日はない」「惑星ソラリス」なんかを見た記憶がある。

名画座の魅力をDVDやブルーレイ、オンデマンドなどで体験することはできない。
なぜなら劇場と自宅のテレビでは雰囲気が全く異なる上、音響設備も名画座とはいえ自宅のコンシュマー用音響システムに比べると上質だからだ。
数多くの作品を見ることができて、かつ劇場で、ということになると今やその選択肢はまったくないといってもいい。
私の中学、高校、大学時代は恵まれていたのかも知れないと最近つくづく感じることがある今日このごろなのだ。

つづく


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