tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費者物価の反転上昇は自然

2013年07月29日 10時47分22秒 | 経済
消費者物価の反転上昇は自然
 6月の消費者物価(生鮮商品を除く)が0.4パーセントの反転上昇に転じました。同時に発表された東京都区部の7月分も0.3パーセントの上昇でした。日本経済もいよいよデフレから脱出し始めたようです。

 マスコミの解説でも明らかなように、この上昇を引っ張っているのは輸入物価の上昇です。つまり物価上昇の原因は円安です。円高によるデフレで呻吟していた日本経済が、円安になってデフレから脱出したのですから、これは狙い通りの結果です。

 輸入価格の上昇が国内価格の上昇につながるのは当然で、便乗値上げさえなければ健全です。10パーセントの円安ですから、せいぜい2パーセント程度の上昇が限度で、これは一過性のものです。先ずはデフレ脱出、日本経済の健全化への前進を喜びたいと思います。

 ところで、日銀はインフレターゲットとして2パーセントを掲げていますし、安倍政権の構想では年率1パーセントの持続的なインフレを考えているようです。
 そこで、今回の消費者物価上昇と、これらのインフレターゲットの関係はどうなるのかいうことになるわけですが、正直言って、これは関係ありません。

 かつて、インフレの原因シリーズを書かせて頂きましたが、現状の物価上昇は「輸入インフレ」に当たります。インフレターゲットの数字の方はホームメイドインフレを指していると思われます。

 ホームメイドインフレの主因は「賃金コストプッシュインフレ」ですから、今後の労使交渉により賃上げ如何で決まります。今後の賃金コストの上昇(生産性上昇を超える賃金の上昇)が1パーセントであれば、ほぼ1パーセントのインフレ、2パーセントであれば、同2パーセントとなります。

 もっと円安になれば、それに輸入インフレが加わりますし、消費税が上がれば、その分も加わります。逆に、また円高になれば、それは円高デフレという形で、これまで経験した通り物価を押し下げます。
 
 報道では、家電製品などの耐久消費財の価格に底入れ感という観測もありました。今まではデフレの中で、何でも値下げして競争しようと、かなり無理な価格引き下げをしてきたのが、デフレ脱出とともに是正されるとすれば、それの経済や経営の健全化の動きと言えるでしょう。

 ハイビジョンの32型TVセットが3万円台とか、ズームレンズのデジカメが何千円とか、どう考えても「これで企業に利益が出るとは思われない」ような価格設定も、いわばデフレ経済の犠牲と考えれば、その是正は消費者物価上昇に多少の影響はあるかもしれませんが、経済・経営が正常な姿を取りもどしつつあると考えるべきでしょう。

 再び円高に戻るようなことがないように、政府・日銀が国際投機資本にきちんとした対応をしてくれれば、こうして日本経済は経済成長を取り戻し、正常化の道を辿るでしょう。その過程で、雇用も次第に正常化し、賃金も毎年上昇し、国民生活も着実の改善していくはずです。

 今、日本経済は二十数年ぶりの円高是正という環境変化の中で、その変化に健全に対応していると考えられます。政策当局も企業労使も国民も、今後も誤りない健全な対応を進めていただきたいと思っています。