株価急落
アメリカの住宅金融会社の低所得者向けの住宅ローン、いわゆるサブプライムローンについての危機感から世界の株式市況が急落しました。アメリカの住宅ローン10兆ドルのうち、サブプライムローンは13パーセント、1.3兆ドルほどで、その十数パーセントが不良債権化しているといわれているようで、アメリカの金融全体の規模からいえば、そんなに大きな規模ではないともいわれます。それなのに、何でこの問題が世界的な株の暴落をもたらすのでしょうか。株式市況は群集心理のようなものなどといわれますが、どうもそれだけではなさそうです。
8月17日には欧米市場は反発しているようですが、日本はもう18日の土曜日なっていて取引はありません。さて月曜日にはどう動くだろうかといった状態です。それはそうとして、株価の下落はもちろん金融界だけの問題ではありません。一部には実体経済にも深刻な影響が出る可能性もあるという意見もあります。
ところで、アメリカのサブプライムローン問題が世界的な株価急落を引き起こした原因を考えていきますと、ヨーロッパの金融機関も日本の金融機関も実損をこうむるなど、たんなんる心理的な影響は別として、世界の金融機関に損害が波及しています。この問題をたどっていきますと、金融のテクニックの問題として2つの問題に行き当たります。そのひとつは「債権の証券化」、そしてもう1つは「レバレッジの活用」です。
アメリカの住宅金融機関は、サブプライムローンという債権を証券化して世界の金融機関や投資家に売りさばいています。当然あまり優良な債権ではありませんから、いわゆるハイリスク・ハイリターン型の証券になります。証券化して売りさばき、それを世界中の金融機関や投資家が買えば、アメリカの住宅金融機関のリスクは世界に分散されます。そしてこれは、さらに種々のファンドなどに組み入れられるのでしょう。リスクの分散という面からいえば、それはよいのかもしれませんが、リスクの拡散でもあります。
そして、正確にはわかりませんが、こうした取引には、いろいろな場でレバレッジがかかるでしょう。レバレッジとは、現物取引をベースしてその上に載る信用取引部分です。単純化すれば、現物取引に対する信用取引の割合がレバレッジ(梃子)といえるでしょう。ヘッジファンドなどは、このレバレッジを活用して、出資者に大きな配当をしようとするものです。信用取引部分が大きくなればなるほど、儲かるときは儲けにも梃子の原理が働いて大きくなり結構ですが、損失の時はレバレッジの倍率に比例して損失が巨大になります。
アメリカ国内におけるサブプライムローンの残高が、証券化され、(多分)レバレッジをかけられて、世界中に拡大され拡散している中で、そのベースになっている部分で焦げ付きが起こったわけです。当然そのマイナスの影響は世界の金融機関や投資家に及びます。
証券化という技術は最近REIT(不動産の証券化)などでも活用されていますし、信用取引などは昔は政府による規制もありましたが、今は多く民間に任されているようです。金融手法はどんどん進化しているようですが、金融というのはあくまで潤滑油です。潤滑油がなければ機械(実体経済)は動きませんが、潤滑油だけでは何も出来ませんし、潤滑油の使い方や使用量を間違うと機械の運転に支障が生じます。機械の効率を最大限に発揮させるような潤滑油の使い方(金融制度・金融政策)はなかなかに難しいようです。