tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ファンドの増配要求

2007年05月17日 21時41分16秒 | 経営

ファンドの増配要求

 株主総会がだんだん近づいてきます。最近の新聞記事を見ていて気になるのは、上場企業の株を取得した○○ファンドといったようなところが、企業に増配要求を突きつけるといった動きです。

 ファンドにしてみれば、手っ取り早く収入を得るのは、増配させるということでしょうが、問題は、そうした増配要求が本当に経済社会の役に立つのか、それとも単にファンドが安易にカネを欲しいからか、どちらの意図から生まれているかです。

 多くの日本企業はまだまだ財務体質が弱いことは世界的にも知られています。しかも、資源も何もなく、人間の働きによる生産性の向上だけが命綱の日本の経済・経営です。軍事力はもとより、政治力にもあまり頼れない日本企業なのです。国際競争の中で生き残るにはコストダウンと生産性向上しかないのです。

 失われた10年の中で労使協力してコストダウンをし、ようやく収益が上向いてきた日本企業ですが、この収益向上による資本蓄積は、生産性向上を支える技術開発に振り向けて、初めて世界をリードする生産性向上、国際競争力確保が可能になります。特に昨今の地球環境問題も含め、技術革新のグローバルな急展開の中では、資本蓄積→開発投資が企業の将来を明確に左右します。

 その大事な資本を、ファンドに配当してしまったらどうなるでしょうか。ファンドは10年20年株主でいてくれるわけでありません。配当が増えて株価が上がれば株は売ってしまうでしょう。残るのは資本蓄積の不足で、技術革新投資に遅れた日本企業です。

 配当というのは、法人税を払った後の利益の中から払うものですから、ほぼ2倍の経費負担に相当します。労使で一生懸命経費を節減しても、その効果は雲散霧消です。それなら、配当を増やす分の2倍人件費予算を増やして賃上げしたほうが、企業の将来にとってはまだましかもしれません。このあたりは、労使で協力してよくシミュレーションして、企業の将来、雇用・賃金の将来を考えてみたらいかがでしょうか。◇