彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国「春節・冬季五輪」を間近に控えて、新型コロナ感染に危機感―日本、感染再拡大第六波に

2022-01-11 08:36:20 | 滞在記

 ちょうど1年ほど前の2021年1月上旬、中国の北京市を取り囲むように位置する河北省で、かなり大規模な新型コロナ感染が広がった。そして、東北三省(黒竜江省・吉林省・遼寧省)や北京市でも感染拡大があり、2月上旬から始まる春節を控え、中国政府は「春節での帰省や旅行」など、省外への移動を特別な許可や陰性証明がなければ移動できず、もし移動しても、移動先での一定期間の隔離措置などの措置をとった。このため、春節期間2週間と、その前後1週間ずつ、合計1か月間の移動は全国的に事実上難しくなり、ようやく春節前までに、ほぼ、全国的に感染拡大の終息に成功をした。

 今また中国では、かなり大規模な感染拡大が起きている。この2年間あまり、世界に例を見ない強大・超厳戒・超厳格なさまざまな措置で「0(ゼロ)コロナ政策」を取り続けてきた中国。このため、各地で感染再拡大が起きても1か月ほどで感染を終息させてきた経過があった。今回は、1月31日から始まる今年の春節と2月4日から開幕される北京冬季オリンピックを目前に控えているだけに、中国政府や各省・各市は、この新型コロナ感染拡大に超厳重な警戒感をもってその拡大防止に取り組んでいる。特に、世界的に大流行してきているオミクロン変異種に対する警戒感は特に大きい。(中国の春節では、春節開始の1週間ほど前から、帰省のための民族大移動や旅行が例年始まる。)

 昨年の9月には私が暮らす福建省でデルタ株の感染拡大(400人ほどが感染/1か月ほどで終息)があり、そのために私の中国渡航も急遽(きゅうきょ)取りやめるという連絡が入ったのだが、今回は陝西省の省都である西安(人口1300万人)で12月中旬から始まった。そして、12月23日からは都市封鎖が始まる。西安は首都北京から900kmほど西南にあり、かっては長安と呼ばれていた歴史的な都市である。西安市街中心部には周囲14kmほどの城壁で囲まれている。郊外には、秦の始皇帝陵や兵馬俑があり、中国四大古都(西安・洛陽・南京・北京)の一つ。私はこの町を2016年5月に訪れた。

 1月5日ころの日本の朝日テレビ(ABC)報道番組「羽鳥慎一モーニングショー」の報道によれば、「先月23日から始められたロックダウンだが、当初は2日に1回だけ、家族の1人が買い物に行くことは許可されていたが、その後は、コロナPCR検査に行く以外の外出は禁止されることとなった。また、スーパーや飲食店、商業施設なども閉鎖された。このため、1300万人市民は食料を得ることが難しくなり、とても生活するのが困難を極めるようななり、"正直、コロナよりも食料が尽きるのが怖い"というようなSNS投稿が激増(1月3日時点までに3億8000万回の投稿)することになった。」と報道されていた。

 また、このABCの報道では、なんとか食料を買い出しに行った人が、城管(※地域の治安を担当し、見廻りをする職務の人たち。中国ではこの城管は、地域警察のような役割をしていて、時にはすざましい暴力を行使することがある。私も何回かこの暴力現場を見たことがあった。)の数名に集団暴行を受けている動画が流されていた。川に架かる橋が閉鎖されたために、市内の自宅に戻ることができず、氷点下の極寒の川を渡ろうとするが、途中で水圧により進めなくなり立ち往生する夫婦の映像(警告処分を受ける)、西安から他の町の自宅に戻って来た住民に対して、村役人が玄関のドア扉を溶接して家から出れなくなるようすの動画も放映されていた。感染者が多くでた地区の住民ら対しては自宅隔離ではなく、387箇所の隔離施設に移らされ、約4万2000人が収容されているとも報道されていた。

 中国のインターネット報道を見ていても、この食料不足の窮状を伝えるニュースがみられた。(上記写真右端)

 1月7日付「朝日新聞」には、「ロックダウンの西安 生活圧迫—厳戒"ゼロコロナ"/妊婦、診察拒まれ死産/食べ物ない/"人災だ"当局批判、SNSで共感」の見出し記事が掲載されていた。記事によると、「1月4日、SNSにアップされた書き込みが波紋を広げた。1日夜、西安に住む妊婦が腹痛を訴え病院に行ったものの、PCR検査の陰性証明の期限が切れているとして診察を拒まれた。妊婦は寒さの厳しい屋外で2時間待たされた末に出血。ようやく診察を受けたが、8カ月になる胎児が死産になったという。妊婦の親戚だという市民が書き込み、6日、市当局が謝罪した。」

「"ゼロコロナ"の実現という"勝利"のために、私たちは"代価"とされてはいないだろうか—。西安の著名ジャーナリスト、江雪氏はそんな疑問をつづった文章をSNSで4日、公開した。コロナの拡大防止を絶対視する画一的な対応により"人道的被害"を招こうとしていると、当局を批判したもの。SNSでは"人々の真実の声だ"などと共感が広がっている。‥‥‥中国では2年前に都市が封鎖された武漢で、政府への疑問や批判をつづった著名作家の方方さんの『武漢日記』が注目された。今回の文章は"西安版 武漢日記"とも呼ばれている」などと記事に書かれていた。(北京・高田正幸朝日新聞特派員筆)

 1月10日付朝日新聞には「妊婦死産 中国副首相が発言―都市封鎖の西安 政策不備あらわ」の見出し記事が掲載されていた。それによると、中国の孫春蘭副首相(上記写真右端)は1月6日に、「妊婦の死産について"ひどく心を痛め深く恥じている。政策の不備があらわになった"と述べた」と書かれていた。このような謝罪的発言をするのは、中国共産党主要幹部としては異例な印象はある。ちなみに、孫副首相は71歳の女性。病院側の対応に市民の批判が相次いだこともあり、妊婦が死産した病院の幹部は免職・停職などの処分が出された。

  12月23日から厳重な都市封鎖を続けている西安では現在までに2000人余りの感染者が確認された。2020年に武漢で感染が広まって以来、最大規模の感染拡大とされているが、西安での新型コロナ感染拡大は現在は終息に向かいつつある。しかし、すでに、西安のある陝西省に隣接する河南省に感染拡大が広がっていた。中国政府の発表では、この3週間あまりで陝西省から省外にすでに移動した人の数は1600万人と推定している。

 河南省は歴史的には「漢中」と呼ばれたところで、中国の歴史の中心地だった。省都は鄭州市、歴史都市である洛陽市もある。人口が最も多い省であり、私が勤めている大学の学生たちの中には、この河南省出身者はとても多い。もう学生たちは、期末試験を終え、すでに故郷の河南省に帰省している学生も多いかと思う。河南省の中でも特に、許昌市と鄭州市の感染拡大が多い。河南省も西安市もデルタ株の感染拡大だ。

 中国のインターネット記事には、「鄭州市では6時間で1260万市民全員のPCR検査を実施した。医療人員数3.3万人を一挙に投入して実施した。毎秒583人を検査したこととなる。」と報道されていた。すごいスピードだ。なんとか春節開始までに終息させたいという政府の取り組みには、改めて驚かされる。

 中国政府が最も警戒していたオミクロン株の市中感染が北京にほど近い天津市(人口1400万人)で起きていた。昨年12月中旬から中国各地の空港で、海外からの渡航者のオミクロン感染は多数確認されていたが、本格的なオミクロンの市中感染は中国ではこの天津市が初めてだった。天津市は北京市の外港ともいわれる街で、高速道路で30分ほどの距離で北京への通勤圏でもある。オミクロン株の市中感染者の初確認は1月8日の2人(29歳の塾講師の女性と10歳の小学生女児)。2人の濃厚接触者18人もオミクロン株感染であることが、9日に判明。このうち8人は女児が通う小学校のクラスメートだった。9日から市民全員のPCR検査が開始されている。昨日の1月10日までにオミクロン株の市中感染者は41人が確認されている。

「奥密克戒全球、新冠疫苗或将失効?」(オミクロン株が地球的に大流行、新型コロナワクチンの有効性がすでに失われているのか?)の見出し記事も報道されていた。中国ではワクチン2回接種は早々と昨年の9月までには90%以上に達していたが、その有効期限が切れている人が大半だ。

 そして、今朝11日、中国のインターネット記事には、「天津すでに700人が新型コロナに感染している」との衝撃的な報道記事が掲載されていた。いままでは48時間以内の陰性証明があれば市外にでることは可能だったが、都市封鎖措置がされる可能性がある。北京冬季五輪開始まであと3週間あまりとなった。今日11日付朝日新聞には「オミクロン 北京緊張/五輪直前 隣接の天津で感染拡大」の見出し記事が掲載されていた。

 すでにオミクロン株の市中感染が年末に少数ながら確認された中国・香港で、中国全国人民代表者大会香港代表の一人の誕生日を祝うために、180人規模の大宴会が香港市内で1月3日に行われ、どんちゃん騒ぎの上、参加していた香港政府高官や香港議会議員(親中国派議員)らの多くがコロナに感染していた。これに対して、香港市民から批判の声が大きく上がっていた。1月に入り、香港では、海外からの渡航は禁止され、コロナ感染対策が強く打ち出されている最中(さなか)の出来事だった。(上記写真右端)

 日本では、12月下旬の大晦日以降、爆発的な新型コロナ感染拡大が続いている。新型コロナの第6次感染拡大が始まった。オミクロン株感染は、特に沖縄の米軍基地や山口県の岩国米軍基地に由来したものが多い。アメリカでは1日のオミクロン株新規感染者が100万人を超えている。また、ヨーロッパのイギリスやフランス、イタリアなどでも1日の新規感染者数が数十万に上っている。日本でも今後、オミクロン株感染が主流となつていくだろう。

 1月7日付朝日新聞には「沖縄・山口・広島 まん延防止」「感染増に危機感/広島県試算 10日後には1日800人」の見出し記事が掲載されていた。

 1月8日・9日と1日の新規感染者数が8000人を超えた。約4カ月ぶり(昨年9月11日以来)の8000人超えだという。1週間前の1月1日・2日の15倍増の感染者数となり、そのオミクロン株の感染力は「強力な感染力をもつとされていたデルタ株の、さらに3~4倍の感染力をもつ」とされている。1月10日付朝日新聞には、「年明け早々制限"心疲れる—嘆く飲食店(3県まん延防止)」の見出し記事。

 京都府でも昨年の第5波の時の1日新規感染者数で最も多い日に近くなっている。また、故郷の福井県では、第5次の時にはどんなに多くても1日の新規感染者数し20人未満だったが、昨日の新規感染者数はなんと40人を超えていた。

 12月上旬以来、私は胃潰瘍症状に悩まされはじめ、12月17日に受けた胃カメラ検査では胃潰瘍が確認された。その治療を始めて3週間あまりが経過した。もうほとんど胃潰瘍の自覚症状はない。1月23日に再び胃カメラ検査を受けて、胃潰瘍の消滅を確認する予定だ。「さあ、これから居酒屋に行って 飲めるぞ」と楽しみにしていたのだが、京都府に「まん防止措や緊急事態宣言」などが出され、酒類提供の制限が出される日もそう遠くないのではないかと懸念される。

 この8・9・10日の三連休、京都市内の繁華街の人出はすごかった。また、飲食店や居酒屋には行列待ちの光景も多くみられた。1月9日付朝日新聞には、「3連休の街—"不安だけど" 飲食店に列、"また制限心配"」の見出し記事。今のうちに呑みに行きたいという気持ちはわかる。1月1日から爆発的に感染確認が激増した要因としては、12月23日~25日のクリスマスの人出増加や年末での人出増加に加えて、オミクロン株の市中感染増加とされている。そして、大晦日から正月三カ日の人出増加、さらに学校の始まりや3連休と続いているので、この1月中旬から下旬にかけては、1日の新規感染者はどこまで増えるのか、とても心配だ。おそらく第5波の感染状況をはるかに超えることが予想されてもいる。