9月中旬までにほぼすべての大学で学生たちが8カ月ぶりに戻った中国だが、日本の大学よりもかなり厳しいコロナ対策をしている面がある。大学に戻る前のPCR検査の全員実施がその一つで、その結果が陰性と判明するまでは大学に戻ることはできない。大学食堂や教室などの建物内に入る場合は必ず検温検査があるが、これは日本も同じだ。
とても厳しいコロナ対策は、「大学に戻った中国の学生たちは、大学構内(キャンパス)から出ることができない」という措置だ。これはどの大学でも同じなのだろうか。
中国では1・2・3月の新型コロナウイルス(COVID19)の感染拡大にともない、全国津々浦々で都市封鎖・地域封鎖を強力に行い、感染拡大の防止策を行った。このため、4月以降は新たな感染がほぼ終息した。その後、東北地方(黒竜江省・吉林省・遼寧省など)の都市や北京市などでのクラスター感染はいくつか起きたが、即座に都市封鎖や地域封鎖と住民全員のPCR検査を行い感染の広がりを封じ込めてきている。
そして、8月上旬、遼寧省の大連市の水産加工関連施設での44人のクラスター感染が発生、即座に市の封鎖と市民600万人全員ののPCR検査が行われる。同じ時期に新疆ウイグル自治区の自治都・ウルムチでもクラスター感染があったが、即座に封鎖及び市民350万人のPCR検査実施。中国ではその後、8月中旬以降の新たな感染はほぼない状況で推移している。ほぼ現在までのこの1カ月間、新たな感染がない状況だ。
今週の月曜日、日本のテレビ報道番組で「なぜ? 新規感染者ゼロも‥‥大学封鎖?」「なぜ、大学の敷地から出られない?」「寮の学生たち―封鎖を解除せよと‥」「買い物外出も✖」「学生―正当な理由がないと出られない―病院とか」「宅配頼みフェンス越しに受け取る」「海外から入国した人以外、新規感染者がいないのに なぜ?」「感染が0なら"大学封鎖"は不要?」などのテレップが流れるものだった。
その報道によると、中国の大学では、学生は8カ月ぶりに大学に戻ってきたのだが、病気やけがのための治療などの特別の理由がない限り、大学構内から一歩も外に出れない「大学封鎖」が行われているという。ちょっとした病気やけがの場合は、大学構内には診療所や小さな病院もあるため、学外の病院に行くことは認められないようだ。歴史的古都である西安市にある西安外国語大学の学生から市の教育庁に「9月25日の金曜日までに封鎖が解除されなければ、抗議自殺のようすをネットで中継する」というメッセージが送信されてもきていると報道されていた。25日と言えば今日だ。
中国の大学構内の敷地面積は広大だ。私が勤務する閩江大学は中国では平均的な敷地面積の大学だが、それでも日本の大学では最も広い北海道大学とほぼ同じ広さをもつ。大学敷地内にはたくさんの学生寮の建物があり、大きな食堂も4箇所ある。大学構内で、生活に必要なものはほぼ購入でき、学生たちはほぼ全員が4年間寮生活を送る。だが、3回生や4回生になると、大学の近くにアパートを借りて生活する学生たちも少数ある。(大学は黙認している場合が多い) しかし、そのような学生たちも、そのアパートと行き来することはできなくなっていると思う。
日本のテレビ報道は事実なのか、閩江大学もそうなのか、翌日火曜日の授業の際に学生たちに聞いてみたら、大学封鎖は本当だった。ロシアなど感染拡大が今も多い国々と接している中国東北部や西域の大学や北京など北の方の大学だけの「大学封鎖」ではなく、閩江大学のような南方の福建省福州にある大学もそうだった。これはいつまで続くのだろうか。学生たちにとっては、「大学には戻れたのは嬉しいが‥‥、大学封鎖となっていたのはとても辛い!」である。もちろん、アルバイトに行くこともできない状況が中国では始まっていた。大学の外に出られないストレスも大きいだろう。
中国での大型連休は2月の春節時期の2週間と10月の国慶節の1週間。例年なら日本をはじめ世界各地へ海外旅行にでかける人が多いが今年はほぼ国内旅行。今年の国慶節の連休は10月1日~8日までと少し長い。中国の大手旅行会社によればこの連休で約6億人のひとが旅行に出かけると推定している。
今年1月・2月・3月の新型コロナウイルスの禍い後、初めての大型連休となる。最も人気の観光地には新型コロナウイルスの感染が最初に広がった武漢の名所「黄楼閣」が選ばれているようだ。この建物は、新型コロナウイルスの武漢での終息時にライトアップされるなど、復興のシンボルともなっている「中国三大楼閣」の歴史的建造物。中国の衛生当局は「世界の感染状況は深刻だが、中国国内は通常通り旅行して問題ない」とコメントしている。
さて、大学だが、先週の金曜日に突然、「先生、10月1日~8日までの国慶節に伴う大学の休日は、短くなりました。10月1日~4日までの4日間だけ、半分になりました。」と学生との授業の中で初めて知って驚愕した。今週の水曜日にこのことを大学に問い合わせたところ、「その通りです」との返答。急な変更措置のようだ。中国は大学でもどこでも、中国社会はトップダウン・上意下達の、突然の指令社会だ。忘年会であっても、突然にその日の開催が告げられたりもする。つまり、地位の高い者が下部の人に突然に指令するのが当たり前の世界。長年の共産党一党支配社会の習慣とも言える。
前述のように学生は大学構内から出ることができない「大学封鎖」の状況なのだが、この国慶節の4日間の休みにもやはり大学から出ることはできないのだろうか。今日の授業でそのことを、4回生「日本文学作品名編」の学生たちに聞いてたところ、「はい、この4日間に縮まった連休も大学から出ることはできないんです」と話していた。なんとも中国という国家らしい状況であるが、「この大学封鎖は、いつまで続くか まったく大学からの説明はありません」とのことだった。ここにも上意下達の「下の者は上のものにだまって従うものだ」という中国社会の現状がある。
9月上旬、日本の萩生田文科相は、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が続く大学について、「後期もオンラインの学校には違和感を感じる。感染予防策を講じて、教室での対面授業実施の拡大を検討してほしい」との声明を出した。この発言の影響に後押しされてか、9月上旬には「後期もオンライン中心にという方針を出していた大学が多かった」がここ2週間あまりで減少している。「できるだけ対面授業の比率を増やしていく」という方針への転換に。
日本の私立大学や国公立大学の多くは9月中旬~下旬にかけて後期授業を開始するところがほとんどだ。関西では近畿大学が9月10日ころからすでに開始している。後期授業の形態だが、関西では①対面授業とオンラインの併用が「大阪大学、立命館大学」、②対面とオンライン併用だがオンライン中心が「京都大学」、③オンラインが「神戸大学、関西学院大学」、④対面が「関西大学」、⑤対面とオンライン併用だが対面中心が「同志社大学」などと、9月中旬ごろには報道されていた。オンラインの神大や関学の学生は納得できないかもしれない。「大学 そろり対面授業 秋学期」との見出しの朝日新聞報道も。
同志社大学では昨日24日から後期授業が開始された。同志社大学では7割の授業で対面授業が開始されるようだ。立命館大学では来週から授業が開始されるが、5割で対面授業を実施するとの報道。
4月上旬にクラスター感染がおきた京都産業大学でも今週から、対面授業が一部始まった。3割ほどの授業が対面での実施となるようだ。教室棟のある建物入り口での通行者の高体温を画面に映し出す検温検査が実施されていた。
まずはしばらく日本からのオンライン授業で大学の前期をスタートした私だが、今後 この身はどうなるのか、日々の不安はかなり大きい。いつ中国に渡航しなければならなくなるのか、Xデーが来る日への不安である。それがいつなのか。近づきつつあるようにも感じる。中国政府の外国人の入国を段階的に暖和しつつあるからだ。
私が中国に10月や11月に渡航することはとても大変なリスクが伴うこととなる。大変なことになる覚悟がいる。もし、大学側から11月中旬までに中国に戻ってほしいとの連絡があった場合、まず、①飛行機の片道チケットを購入することがものすごく難しい。11月中旬までの航空券はすべての路線で売り切れていて、キャンセル待ちである。そして運よく購入ができたとしてもチケットの値段は通常の約10倍以上の金額に跳ね上がっている。コロナ問題が発生する前では、1700元(2万5千円ほど)だった料金は、20000万元(30万円)以上になっている。航空便の運行が極端に減少しているためだ。そして、この料金を大学側が全額支払うとは到底思えない。そのほとんどは自己負担だろう。ばかばかしくなる。(※夏休みと冬休みの日本への帰国と中国に戻る往復航空券は、原則、大学が負担することとはなっているが)
②日本を出発する日の3日前にPCR検査を受けなければならない。(自己負担4〜5万円) 陰性証明がなければ、飛行機に搭乗できない。 ③中国の空港に到着したら、すぐに検査を受け、陰性ならば 近くのホテルに2週間隔離となる。もし陽性反応なら、患者用病院に。隔離はビジネス安ホテルだが、一日のホテル代金は400~500元(6000円〜7500元)✖14日間=5600元〜7000元(8万4千円〜10万5千円)は自己負担。基本的に室内から出ることはできないし、来客も許可されない。一日三食の食事と水のペットボトルがドア前に置かれるだけだ。上記写真は、この9月4日に日本から中国に戻った私の教え子が隔離されていたホテルの部屋の微信ラインで送信されてきた写真だ。
③隔離が終って、アパートのある福建省福州までの新幹線又は飛行機の予約が必要で、その費用も自己負担。④福州のアパートに戻れても、そこで自宅隔離が1週間。アパートのドアのところに監視カメラが新たに設置され、外出しないように監視される。毎日の体調や検温結果をアパート(団地)の管理委員会に連絡をしなければならない。買い出しにも行けないので、何も食べることはできない。学生に買ってきてもらえればいいが、学生は大学封鎖で外出不可。他の知人もアパートの室内に入ることはできない。つまり1週間は食料が調達できにくい状況になる。
④はれて、3週間以上の隔離が終ったら大学に行って授業をすることが可能になる。ここまでにほぼ1か月近くを要することとなる。やってられないと思ってしまう。⑤隔離ホテルでのインターネット状況により、その間のオンライン授業ができるかどうかわからない。また、自宅の福州のアパートのインターネット料金はこの7月までしか支払っていないので、インターネットの再開設のため中国電信の店に行き料金支払いなどの必要があり、開設までに期間がかかるので、オンライン授業はこの間 不可能となる。つまり、3週間の隔離中、まったくインターネットができず、オンライン授業もできない可能性も大きい。
⑥大学での前期授業は12月中にほぼ終了予定、1月上旬には期末試験。だから、11月中旬に中国に渡航しても3週間の隔離生活などのため、大学に行くことが可能になるのはどんなに早くても12月10日ごろ。ほぼ前期授業が終わりかけて来る頃だ。しかも隔離中のオンライン授業はできないかも。そうなると3週間分もの補習授業が必要となる。
⑦来年の1月20日頃から2月下旬まで大学は5週間ほどの冬休みとなるが、日本に帰国しても2週間の隔離、また中国に戻っても3週間の隔離と、合計5週間の隔離なのですべてが隔離生活になってしまう。このため、毎年、休暇帰国を楽しみに中国生活を耐えている私だが、冬休みに日本に帰国することはできない。
◆なんとも悩ましいことだが、これが今、海外で働く企業駐在員や大学教員たちが置かれている現状だ。海外勤務厳冬の時代である。オンライン授業は、通常の教室での対面授業と違ってとても大変なことなので、中国に戻って教室での対面授業をしたいと思うが、①~⑦のことを考えると、来年の2月下旬までの冬休み終了まで日本に滞在してオンライン授業をしていた方がよりベター(better)かとも思える。しかし、大学の方から「中国に戻って」という連絡があれば、戻ることも考えなくてはならない。Xデーはいつくるのか、日々 不安に包まれる。さて、大学側はどのように判断するだろうか。12月までの中国渡航要請は大学側にとってもデメリットが大きすぎるのだが。
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