ノーベル賞は、ダイナマイトを発明し販売、巨万の富を築いたアルフレッド・ノーベル(スウェーデン人)の遺言に従って創設され、物理学、化学、生理学、医学、文学、平和、の6分野、さらに1960年代からは経済学分野を加えた7分野で構成されている。人類に対して、大きな貢献をした人物に贈られる賞である。最初の授与はノーベル財団によって1901年に行われた。7分野中、6分野はスウェーデンの首都であるストックホルムで授与式が行われている。
そして、平和賞だけは、ノルウェーの首都であるオスロで授与式が行われる。2024年のノーベル平和賞は、世界に核兵器被爆の実相を伝え続けてきた日本の原水爆被害者団体協議会(被団協)に、12月10日、ノーベル平和賞が授与された。
12月11日(日)の早朝3時から、私はノーベル賞授与式(1時間余りの光景をLive録画・日本のTBSテレビ系列)というものを初めてyoutubeで視聴した。オスロ市庁舎の授与式会場に式典参加者が着席し終わると、トランペットによる開始の演奏、ノルウェー国王夫妻・皇太子夫妻の4人が入場し着席。国連の常任理事国(5か国/アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国)のうち、米・英・仏のノルウェー大使級は式典に参加。ロシア・中国は不参加のようだった。式典が始まり、まずは四重奏の演奏と女性歌手による歌唱。
次いで、フリードネス・ノーベル賞委員長によるスピーチでは、「核兵器が二度と使われてはいけない理由を身をもって立証してきた」と被団協を評価、さらに、「私たちは被団協から学ぶべきだ。決して諦めてはならない」と訴え、平和賞受賞理由を述べる。
そして、被団協の代表委員や事務局長ら3人に、平和賞証書とメダルが授与された。授与のあとに、代表委員の一人である田中煕巳さん(92歳)が20分間余りの受賞スピーチを行った。その内容は、自らの長崎での被爆体験(当時13歳)のこと、被団協の長年の活動のこと、そして、近年のロシアによる核兵器威嚇などのことに触れる。
「核兵器は極めて非人道的な殺戮兵器であり、人類とは共存させてはならない。現在、世界には約1万2000発の核兵器があり、そのうちの4000発はすぐにでも発射可能な状況にある。すみやかに廃絶しなければならない。‥‥たとえ戦争といえども、こんな殺し方、こんな傷のつけ方をしてはいけない。私はその時(被爆)、強く感じたものであります。」と、静かに語った。また、日本政府の被爆者や被爆により即時に亡くなった人たちなどへの、日本政府の歴史的な対応の問題についての批判にも言及した。
田中さんのスピーチが終わると、会場の式典参加者はスタンディンク・オペレーションでの拍手を行った。私も田中さんの20分間余りの、淡々と静かに語りかける中にも説得力のあるスピーチを聞き、感銘を受けた。
田中さんのスピーチのあと、和服姿の女性3人(日本人女性・東南アジア系女性・欧米系女性)が三味線をもって登壇した。三味線の演奏や日本人女性の篠笛の独奏、そして歌唱。続いて登壇した男性3人の三重奏。曲はなんと日本の名曲の一つ、滝廉太郎作曲・土井晩翠作詞の「荒城の月」(※♪春高楼の 花の宴‥)演奏に合わせ男性がこの曲を日本語で独唱し始めた。素晴らしかった。
これらの演奏が終わり、ノルウェー国王・皇太子両夫妻が前に進み、「被団協」の3人らに歩み寄り、お互いに握手をしていった。
このノーベル平和賞授与式などのことについて11日、日本の各テレビ局でも報道がされていた。「"核使用が取り沙汰される現状に限りない憤りを覚える"と危機感を示した」と、田中さんのスピーチに触れていた。
また、ノーベル平和賞授与式当日のオスロ市内での、市民がキャンドルを灯した折り鶴を作っている光景、日本から来ている高校生平和大使たちが、オスロ市内の高校で「出前授業」をしているようすなども報じられていた。
11日、中国のネットニュースでは、このノーベル平和賞授与式での田中さんのスピーチのある部分を切り取って大きく報道している記事もあった。ある部分とは、広島・長崎での原爆投下により、即死、または数日間以内に亡くなった約20万人あまりの人たちに対して、日本政府の国家補償が一貫してなかったということについての田中さんのスピーチでの批判部分。これに関しての林芳正官房長官の見解も記事にあった。(※日本政府は、日本全国各地でのアメリカの空襲などで死亡した人たちと原爆で即時、または数日間内に死亡した人たちとを空襲による同一的な死亡者としている。)
原爆ヒロシマ・ナガサキ➡核兵器、そして東日本大震災による福島第一原発の処理水海水排出問題をも彷彿させる記事となっていて、これらの問題を巡る日本政府の問題点をクローズアップしている印象のある記事だった。
■日本政府が参加していない「核禁止条約」。この条約は核の保有や使用を禁止するだけでなく、被爆者の支援や核による環境汚染問題への対応などについての内容の条約である。日本はこの条約に参加するべきと私は思う。
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