彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国の交通・罰則・歩行者事情—超車優先社会が、ほんのちょっとだけ変化—車庫証明不要の駐車事情

2024-06-08 12:23:39 | 滞在記

 2013年9月、中国の大学に初めて赴任する時に、「中国に行ったら超安く走ればいいような中古の車を買って中国各地をドライブしたいなあ」と考えもしていたが、その思いも数日して消し飛んでしまった。あまりのスレスレ運転(車体感覚15cmほどの)のきわどさの当り前さ、右折左折時のランプ点灯の無さ、信号を守らない車の横行状況、車の駐車状況のようすなどを目にして、中国で事故無しに車を運転するなんて、日本人の私にとってはとても無理だと思ったからだ。

 通勤に毎日乗っていた市内公共バスさえも、前を走る車に腹を立てた運転手が、前の車の走行妨害カーチェイスを始めたり、渋滞の時になんとバスが歩道に乗り上げて走るなど、そんな日本では考えられないような光景を日々体験、目にすることになった。そして、中国人のバス運転手だけでなく一般のドライバーの、事故を回避する運転技術のすごさに感嘆もしていた。

 歩道を歩いていれば、まっすぐ歩いていて、無意識にちょっとだけ左右に進行方向を変えたら、背後から電動バイク(自転車)に衝突されたこともあった。当然に「すみません」と謝ってくれるかと思いきや、その逆に「何をぼさっと歩いてんねん!気をつけろ!」と、罵(ののし)りを飛ばされもした。

 あれから10年以上が経った中国。今まで、病院に行くような交通事故にも合わずに無事過ごせたことに不思議な気もする。歩道を歩るく時には絶対に、まっすぐ歩くこと、左右に歩みを変える時には必ず後方を確認すること、横断歩道を渡る時には、慎重に慎重をかけて渡ることを日々心掛けた。そして、車はもちろん、免許が不要でとても便利な電動バイク(自転車扱い)を買わず、乗らなかったことが、事故に合わずに過ごせた要因だ。まあ、日本人にとっての中国生活のストレスは相当なものだった。でも、そんなことにも随分と慣れてもきている。

—2020年頃からだろうか、中国でも、車の運転への罰則が厳しくなり始めたようだ―超車優先社会の中国社会も、ほんのちょっとだけだが、歩行者への配慮ということも考えられた交通ルールへと変化してきてもいる。

 2020年1月~2023年2月まで、新型コロナウイルス感染拡大問題での中国の「ゼロコロナ政策」により、中国での生活を離れていたが、2023年3月に3年ぶりに中国に戻り、驚いたことの一つが「電動バイク(法令的には自転車扱い)—免許は不要、交通罰則もない、ヘルメット着用は自由、性能は50ccオートバイと同じ、電動バイクなので歩道を背後から走行してきても無音」の大氾濫(だいはんらん)だった。歩道など、おちおち歩けるものではなかったし、横断歩道は危険地帯だった。信号もほぼ全員が、赤信号でも走りまくっていたのだ。

 当然に、横断歩道を渡るときは、360度に目をやって、おびえながら歩行者は横断するという状況だった。特に朝の通勤・通学時間帯の午前7時〜8時、午後5時〜6時に横断歩道を渡るのは、大げさではなく命がけだった。中国では、赤信号でも車は右折可なのだが、日本人である私は、それに慣れるのに月日もを要した。

 交通ルール違反、罰則の強化により、車の赤信号無視が減少した背景には、中国国内にある超AI監視カメラが爆発的に設置され始めた2020年頃からと言われている。これにより、ようやく交通ルールに従う風潮が中国でも起きてきたようだと‥。中国の交通ルール違反での罰則は、次のように日本の罰則とよく似てもいる。

①違反点数が12点になると、免許取り上げとなり、再び自動車教習所での免許取得が必要となる。②飲酒運転は、マイナス12点。5年間の運転停止。③信号無視はマイナス6点。④スピード違反はマイナス3点(※10kmオバーは許容される/20kmオーバーは完全アウト)。⑤横断歩道前の停止線越えはマイナス3点。

 信号付近などでの超高性能AI監視カメラでの交通違反摘発、これを中国国民は「電子警察」と呼ぶ。これにより、車の信号無視の常態化はようやくなくなった感がある。また、横断歩道に歩行者がいれば、車を止めるという光景も見られるようになってきた。ただ、電動バイクに関しての規制は、私が暮らす福建省の省都である福州市では何もなされていなかった。そして、‥‥。私はある感動的な光景に出くわすこととなった。

 それは、2024年4月1日から10日にかけて日本に一時帰国し、中国に戻ってからのことであった。なんと、電動バイクが交差点の赤信号で停車してるではないか。そんな光景はいままでに見たことはなかった。電動バイクの4割近くが停車、あとの6割は信号無視。4割もの電動バイクが止まってる光景は感動ものだった。

 なぜ、そうなったのか?中国人で電動バイクに乗っている人に聞いてみたら、「4月から信号無視への罰則が布告されたからですよ」と言う。それによると、信号無視をした場合、一回目は警告の知らせが届き、二回目からは罰金(50元=約1000元)が取られますとのこと。もちろん電動バイクは免許不要なので、違反点数はないとのこと。まあ、50元程度の罰金なら、信号無視はなかなか無くならないだろうが。歩道走行も禁止という布告もしてほしいと思うが、中国全国民の足となっている電動バイクなので、規制はあまりしないのだろうか。

(※電動バイクは、上記の写真のように、赤信号で停車しても、横断歩道上に停車しているものがとても多い。このため、電動バイクの隙間を通って、遠慮がちに歩行者は横断歩道を渡らざるを得ない。でも、以前に比べて停車しているだけでもましだとは思う。もちろん、信号無視も相変わらず多い。)

 中国の駐車事情は日本とはまるで違う。車を購入する際に、日本では「私はこの購入した車の駐車はここでします」という「車庫証明」が必要。だが、中国では不必要だし、提出を求められない。中国の都市ででは高層住宅がとても多い。私が暮らしている分譲高層住宅団地でも、歩道や道路は駐車している車や電動バイクで溢れている。

 私が住む住宅棟の近くの団地入口付近も駐車した車で門までの歩行が難しいのが日常的。団地内の道路は広めの二車線なのだが、道路の両側に車が列をなして駐車されているので、事実上の一車線道路となる。。

 折り重なるように無茶苦茶に駐車しているので、奥に駐車している車は発進ができないのは困るだろうとずっと思っていたが、後に、そのための解消方法がわかった。車のフロントガラスのあたりに、携帯電話の電話番号が書かれたものが置かれているのだ。電話してくれたら、車を移動しにいきますよというためのものだ。

 まあ、歩道であろうがどこであろうが、歩行者の迷惑は一切に考えないで駐車するというのが中国社会の常識のようだ。だが、首都の北京や国際都市の上海などでは、この駐車や電動バイクに関する規制は厳しいものがあるかもしれないとは思うが‥。

 道路での駐車は一応は違反のようだ。このためか、私が暮らす団地内の幹線道路では、1か月に1度くらい、駐車違反の取り締まりが行われ、車のガラスに違反用紙が張られている。違反点数はマイナス何点なのだろうか。

 2022年頃からEV自動車の販売が加速し、世界的にも中国の自動車ブランドが勢力を伸ばしてきている中国だが、中国国内の交通ルール・歩行者事情とはこんなものだ。ほんのちょっとだけ、歩行者の安全も考えられ始めたといった感じか。

■アパートから近い、福建師範大学正門前の電動バイク(自転車)の販売店の張り紙(CM)を見ると、安いもので2000元(約4万円)、高いものだと2万3000元(約46万円)。まあ、よく売れる価格帯は、3000元~5000元(約6万円~10万円)のようだ。私の勤める大学の構内でもこの電動バイクが溢れているのが中国社会の今だ。

 


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