彦四郎の中国生活

中国滞在記

北京の春❹―万里の長城、「八達嶺長城」と「居庸関長城」

2019-04-07 12:35:12 | 滞在記

 紀元前500年頃の「春秋戦国時代」の楚の国の長城造営から始まって1600年頃の「明時代末期」までの約2000年間にわたって造営され続けてきた中国の万里の長城。東シナ海に面した「天下第一関」の「山海関」から西端のシルクロードの「嘉峪関」まで約1万kmにわたるが、各時代の中国各国で造営された中国国内の長城を全て含めれば約3万kmにも及ぶとも言われている。

 とりわけ、明の時代の首都(都)となっていた北京を防衛するための北京周辺の長城は幾重もの重なりをもち、北東からの「満州族」や北西からの「蒙古族」の襲来に備えたものだった。

 昨年の春に引き続いて、3月25日(月)、今年は妻とともに万里の長城に行くこととなった。万里の長城見学で、北京から近いところに「八達嶺長城」がある。北京の市内から北西に約75kmのところだ。ここに行くには、北京北駅から列車で(1時間ほど)行く方法と、北京北駅近くからバスが出ているので、それらを利用する方法がある。一番便利なのは列車なのだが、2022年「北京冬季オリンピック」がこの八達嶺付近を会場の一つとして開催されるため、高速道路の整備工事にともない鉄道路線が閉鎖されていたので、今年は利用できなかった。25日の早朝、宿泊しているホテルの人に依頼して、八達嶺までの「往復タクシー」(貸し切り)を利用することにした。料金はけっこう高額で900元(約15000円)。

 朝の7時40分にホテル前にタクシーが到着したので八達嶺に向けて出した。北京市内は早朝の出勤時間と重なりかなり渋滞していた。この日も北京では珍しく青空の快晴。北京市内の渋滞の中だが、沿道の大きな街路樹はさまざまな花々が咲いていて美しい北京の春だった。市内の渋滞を抜けてからは高速道路を走る。午前9時半ころ、八達嶺観光の中心地近くまで来ているはずだが、なんだかタクシーが走っている方向が昨年度とはまったく違う。

 観光客が一人もいない村の中にある売店・食堂の前でタクシーは止まった。「なぜこんなとこで止まるんだよ」と聞くと、ここから歩いて行くのだとのたまう。「はたしてこんな所から長城見学に行けるんかい」と不信をもちながら、運転手の後について行った。新しく造られているトンネル工事の中を通って行ったりすると、20分間ほどで、八達嶺観光の中心地がようやく見えてきた。どうやら、私たちが長城見学を終えて戻ってくるまで、タクシー運転手が親しくしている村の「売店・食堂」で、待っているつもりのようだ。3時間後の午後1時半に「売店・食堂」に戻って来ることを告げて、長城をめざした。

 麓から長城の高いところまでロープウェーがあるので今回も利用した。一気に高いところまで上がる。ロープウェーを下りて、八達嶺長城の最も高い「北八楼」を目指す。月曜日にもかかわらず、多くの人で混雑していた。急な長城の上の道を登る。下りる時も急坂を気をつけて下る。長城では「禁煙」なので、少々辛い。

 長い長い長城の城壁が続く。3700mほどの長さがある八達嶺長城には「北楼座群から南楼座群」43の楼座がある。

 最も低い場所には大きな門が二重に設置されていて、「鑰鎖門(やくさもん)」と呼ばれる。北京に入るための「鍵と鎖」を意味している需要な門である。あと1カ月後の八達嶺の新緑の季節の看板。

 12時半ころに八達嶺観光の中心地に戻り、土産物店を見て廻ったり、食堂で昼食をとった。1時過ぎにタクシーが待つ場所に向かって歩き始めた。まだ通行が許可されていない工事中のトンネルを通り抜け、人のいない工事中の道を歩き1時半前にタクシーが駐車している場所に着く。運転手は食堂・売店のなかで店の人と だべっていた。

 タクシーに乗って北京市内に向かう。何を考えたか、途中で運転手は道を引き返し、脇道の山道に入って行った。なぜこんな細い道を行くのだろうか?不思議に思って乗っていた。山々に桜花がたくさん咲いているところに来た。日本の桜とは違うが、見事な全山の「山桜」が望める。しばらくすると、山道から「居庸関(いようかん)」長城の巨大な楼閣が見えてきたではないか。タクシーは残念ながら止まって居庸関観光というぐあいにはならなかったが、その威容は見ることができた。タクシー運転手が気をきかせて、居庸関が見える道を走ってくれたようだ。そしてまた、多くの車が走る大きな道路に合流していった。

  上記の写真は、写真集「長城」の居庸関の写真。この関は、北京から北西に50kmkのところにあり、北京を防衛するための「最後の超重要関門」となっていた。かのジンギス・ハーンも、この関で北京を目指して戦った記録があるようだ。

 八達嶺から1時間半ほどで、渋滞のない北京市内の故宮近くに到着し、タクシー代金を支払った。午後3時となっていた。

 今、浅田次郎著『長く高い壁』を読んでいる。—日中戦争下の万里の長城。探偵役を命じられた従軍作家が辿り着く驚愕の真相とは?この戦争に大義はあるのか―。「戦争の大義」「軍人にとっての戦争とは何か」を真摯に捉え、胸に迫る人間ドラマ。—

 当時の北京市内と北京市内の北東にある「司馬台長城、将軍(張飛関)長城など」を舞台として物語が展開されている。このあたりの長城は ものすごい急登攀を要する長城壁が連続している秘境のような場所のようだ。

 昨夜(4月6日の土曜日)午後7時半から1時間半のNHKBSプレミアム番組で「空旅中国―万里の長城」があったので視聴した。語りは近藤正臣さん。上記の「居庸関」も紹介されていたが、万里の長城の歴史についてとてもわかりやすく、とても優れた番組だった。また、再放送がされるかもしれないと思う。