彦四郎の中国生活

中国滞在記

藤沢周平短編ドラマ「橋ものがたり」は珠玉の名作だった—日本のテレビドラマ❶

2019-04-21 23:14:11 | 滞在記

 久しぶりにとても良いテレビドラマを見た。3月10日と17日のBSフジ「橋ものがたり」。時代小説の名手・藤沢周平原作の"市井もの"の原点となった傑作短編集『橋ものがたり』。「橋」を題材にした10扁からなるが、その中から選りすぐりの3扁を映像化した「小さな𣘺で」「吹く風は秋」「小ぬか雨」が2週にわたって放映され。水の都だった江戸では、橋は人々をつなぎ、隔てるものだった。そんな出会いと別れの場所を舞台にして、それぞれ「家族の絆」「老境」「悲恋」を軸に珠玉の物語が描かれていた。

 「小さな𣘺で」

 松雪泰子、江口洋介らの主演で1組の家族の絆が描かれていた。10歳の広次と母・おまき(松雪)、姉・おりょうと暮らしているが、父・民蔵(江口)は、博打で借金を作り姿を消していた。懸命に働きながらも父への恨みをこぼす母を、広次は複雑な思いで見つめている。そんなある日、母とのいさかいが絶えなかった姉が、妻子もちの男と駆け落ちしてしまう。‥‥‥。松雪泰子の哀愁をおびた表情や広次の元気にふるまう表情がとてもこの物語をすばらしいものにしていた。

 「小ぬか雨」

 結ばれない運命にある男女の恋物語だった。本格時代劇初主演となる北乃きい、永山絢斗らが主演。両親を亡くしたおすみ(北乃)は、伯父に任された履物屋を営みながら静かに一人暮らしをしている。自らの意思と関係なく、伯父のすすめで 素朴だががさつな職人の勝蔵(仁科貴)との縁談が決まり、その結婚の将来に希望を抱けずに悶々と日々を送っていたおすみ。

 ある夜、「追われているの少しの間だけかくまさってほしい」と、若い男(永山)が家に逃げ込んできた。‥‥‥。北乃きいの演技が輝いていた。彼女はかって、NHK「中国語講座」に出演していたことがあったが、いい女優になっていた。勝蔵役の仁科貴は、かっての名優「川谷拓三」とうりふたつだったのに驚いた。「小ぬか雨」の舞台となっていた橋は、私が住む家の近くにある「太鼓橋」だったのにもまた驚いた。京都の桂川と宇治川と木津川の三川が合流して淀川となる男山にある石清水八幡宮境内の麓にある放生川にかかる小さな橋が太鼓橋だ。

 「吹く風は秋」

 橋爪功の主演で、老博徒の諦念と矜持(きょうじ)を描いていた。壺振り師の弥平(橋爪)は、親分を裏切ったほとぼりを冷ますために江戸を離れていたが、老境にさしかかり、住み慣れた土地への郷愁を抑えきれなくなる。決死の覚悟で江戸に戻った弥平は、とある女郎屋の前で、夕焼けを眺める おさよと出会う。弥平はおさよのことが気になり‥‥。橋爪功の演技が圧巻だった。老境の身の気持ちや心情がよくわかる。

 「小さな𣘺で」は、珠玉の3扁とうたわれるだけあって、どれも素晴らしかった。ぜひ再放送をしてほしい日本の時代劇ドラマだった。

 NHKのBSプレミアム放映された「ぶらっと鉄道旅」。この30分間ほどのテレビ番組はなかなか素朴な旅番組で、よく見ている。4月10日頃に放映された回は、「京阪電車」での旅だった。旅人は東ちずるさん。出町柳駅から伏見稲荷駅までの間の駅で下車しながら京都の街を巡り、出会った人についてリポートをしていた。「京都の地蔵盆」の地蔵のこと、平安神宮の桜、伏見稲荷の鳥居、そして、宇治川の葦原を守り西日本一の燕の育成地を育む人達のことなど。4月上旬の桜の季節の様子もリポートしてくれて、中国にいて京都の桜を見ることができない私とって、なつかしい光景だった。

 私が日本に帰国していた2月4日(月)に、BSテレ東(旧BSジャパン)で、「京杭大運河―王宮に繋がる水の路1794キロを行く」(日中共同制作—中国大紀行)が放映されていたこと知ったのは、つい最近のことだった。再放送があればぜひ見ておきたい番組だと思った。

 旅人は田辺誠一。北京から柳城、そして黄河、楊州から揚子江、さらに蘇州や浙江省の杭州にいたる大運河。隋の時代にほぼその運河は造営された。中国の歴史を知る上では、この大運河の役割を知ることは大切だと思う。