—北朝鮮の実像(実態)を、中国の学生たち、及び中国の人たちは ほとんど知らないのではないかと思う—
前号までのブログ記事では、「韓国—徴用工判決」を巡る問題を10回くらいのシリーズで扱った。「日中韓北」とロシアという4つの国々がある東アジア。それぞれの国々の近現代史についての「正しい歴史認識」の重要性に改めて思い至る内容になった。ところで、最近わかったことだが、中国の学生たちは、「北朝鮮の実像(実態)」をほとんど知らないのではないかと思う。日本人は、新聞やテレビ、インターネットなどの報道を通じて、「金日成—金正日―金正恩」と3代に続く「金王朝独裁国家」のおぞましい人民支配の実像・実態を国民のほとんどは知っているが‥‥。
最近、日本での留学を終えて中国に戻っている学生と「日中関係」を巡る最近の動向のことを話していると、学生が「寺坂先生、一つ聞きたいんですが、私が日本留学中に受講した講義の一つの中で、日本人の先生が"北朝鮮は<ならず者国家"だ!>と言いながらその北朝鮮の実態について話していましたが、これは本当なんですか?」と質問されたことがあった。
中国の路上にあるキオスク的な露店などでも売っている雑誌「VISTA看天下」(10元)などには、2017年5月号に「北朝鮮特集」が組まれたこともあったが、その内容を読んでも「金一族の王朝的独裁体制」のことはなどは 否定的には何も書かれていない。また、独裁恐怖体制下での「暗部的」な実態なども書かれていない。この雑誌は 中国で発行されている数多くの雑誌の中では最も「開明的」な雑誌なのだが‥‥。また、このような雑誌を買う人は一般的には まだまだ少ない。
中国に暮らして6年目に入り、中国のテレビ報道やインターネット記事、新聞などを見る機会も多いが、思い返せば、「北朝鮮に関する否定的な報道」に接したことはなかったように思う。もちろん、中国の高官が北朝鮮を訪問して会談したり、北朝鮮の高官や金正恩が中国を何度が訪問して習主席と会談をしたことなどは伝えられる。また、金正男氏が暗殺されたことも伝えられたが、それはその事件を簡単に報道したものに過ぎなかった。あきらかに、長年、「北朝鮮の暗部」に対する報道は禁止というか、中国国民には知らせない「報道規制」をかけているようだ。
だから、中国の人たちは「北朝鮮に関して」のマイナス的なイメージは薄く、「中国に比べて経済的に遅れている社会主義国」「中国と同じ社会主義一党支配の国」「中国とは友好的な国」というようなイメージしかないのではないかと思う。だから、中国の大学生たちも、中国の一般国民と同じように「北朝鮮の実態」についてはほとんど知らないのだろう。長年、北朝鮮に対してのこのようなイメージしかもたず大人になった中国の学生が、留学先の日本の大学の講義で、「北朝鮮はならず者国家だ」という話を聞いても、にわかには信じられないのだろうかと思う。
長年の一党独裁国家体制下の「情報統制・情報操作」の中では、自国や隣国に関しての「正しい歴史認識」をもつということはなかなか難しい。ただ、日本や韓国に関しては、その2国の「ドラマ」「映画」「アニメ」「インターネット報道」などを通じて、実態・実像で知っていることは多い。しかし、北朝鮮に関しては、中国人が実態・実像を知ることかできる そのような情報源が 中国国内ではほぼない。