彦四郎の中国生活

中国滞在記

韓国「徴用工判決問題」を考える❺間違いなく「桁違いの影響を日韓関係に及ぼす」事態に‥‥

2018-12-02 20:59:10 | 滞在記

 11月29日(木)午前10時に、韓国大法院(最高裁)は、先月の新日鉄住金への「徴用工問題判決」に引き続き、三菱重工業に対して「原告たちの訴えを認め、三菱重工に対して賠償を請求する」との判決を下した。現在 他に12件の同様な裁判判決が控えているという。今後どれくらいの人たちが、裁判をひきおこすのか‥。

 11月29日の再びの判決を受けて、日本の河野外相は、「国際法違反はもとより、日韓両国の関係を維持していくのが難しくなるような影響がある事態でございますから、もう"桁違いの影響を日韓関係に及ぼす" 度重なる判決であるということを、韓国政府にまずきちんと認識をしてもらう必要がございます。」と、韓国政府の「日韓関係の安定的未来を考えない対応」を強く批判した。このまま事態が日韓政府の批判の応酬が続けば、間違いなく「国交断絶という危機を内包した"桁違い"の事態」となっていくだろうと思う。

 自民党国会議員の三原順子氏なども、「"元徴用工の異常判決"、"慰安婦財団の一方的解散"など、韓国は国家として恥ずかしくないのか。善良な隣人なら、一度約束したことを一方的に破るなど、有り得ません。韓国の行為にはまったく驚き、あきれ果てています。日韓の請求権問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で"完全かつ最終的に解決"とされています。日本はこの時すでに5億ドルも払っている。韓国政府が責任を持つべき問題なのです。」と、韓国・文政権の「日韓合意のちゃぶ台返し」に怒りを表わしている。

 多くの日本人の「韓国政府に対する」気持ちを語っているとも言える。私も、基本的には、この三原氏のこの思いには同感する面も多い。しかし、それだけでいいのだろうか?何かが足りない、やはり「血がかよっていない感」「三原氏や河野氏の歴史認識の浅さ・見識の軽さ」をやはり感ぜずにはいられない。

 同じ自民党の石破茂元幹事長は、11月30日(金)、早稲田大学で講演を行い、いわゆる徴用工訴訟などを巡り悪化する日韓関係について「判決は国際法的に間違っている」としつつ、「合法であっても、独立国だった大韓帝国を併合し、(朝鮮半島出身者の)名字を変えることが行われた。そういう歴史があったことをどれだけ日本人が認識するかだ」と述べ、過去の経過を踏まえた対応が関係改善に必要との認識を示した。私は、この石破氏のこのような認識は、とても大切なことだと思う。まあ、河野氏の場合は外相という任にあるため、石破氏のような認識を持っていた?としても、それを今は語るべき時期ではないと思っているのかもしれないが‥。

 法政大学教授(元北海道大学教授)の山口二郎氏は、韓国の大手新聞社の一つである「ハンギョレ新聞社」に、「日韓和解のために」と題して「寄稿」をしていた。長文にわたるのでその一部だけしかここに紹介できないが、「未来に向けた日韓和解」のためには一聴に値する意見でもあった。以下、その記事の一部。

 ‥‥(中略)‥‥。この問題には法律的側面と政治的側面がある。‥‥‥(中略)‥‥。私は、戦時中の強制労働に対する補償については、政治的決着しかないと考えている。‥‥(中略)‥‥。1965年の日韓基本条約には、冷戦構造下で日本と韓国が反共陣営の態勢強化のために手打ちしたという側面がある。当時の韓国では市民的自由や政治参加は限定されており、元徴用工の要求が韓国側の政策に十分反映されなかった憾みもある。それから半世紀の時間がたち、韓国社会における人権意識は高まり、被害者が自らの権利を擁護するために発言できる環境が生まれた。‥‥(中略)‥‥。元被害者が日本の謝罪は口先だけだと反発し、生きている間に補償を要求するのも理解できる。

 第二次世界大戦中の強制労働に対する補償の問題は、ドイツでも存在した。ナチス時代のドイツで強制労働された人々が、1990年代アメリカでドイツ企業に対して補償を求める訴訟を提起した。件数は膨大であり、ドイツ政府は個別に解決するのではなく、政府と企業の出資による「記憶・責任・未来財団」を創設し、ここから170万人の被害者へ総額44億ユーロの補償金を払い、2007年に同財団は業務を終了した。

 法的紛争を泥沼化させるのか、過去の人権侵害に対して誠実に謝罪し、政治的、道義的な解決に踏みきるのか、日本政府は大局的な見地から決断しなければならない。‥‥中略‥‥。日本が第二次世界大戦を終わらせ、植民地支配の清算を行うためには、石頭の法律論てではなく、政治的な勇気が必要である。

◆この山口氏の[寄稿]記事での主張には、いくつか賛同できるところがある。しかし、山口氏の意見に疑問を感じるところもある。例えば「ドイツでの強制労働」訴訟の解決の仕方と、今回の「徴用工等」の政治的解決の仕方と同じ形式の財団とはなり得ないと思う。1965年の「日韓基本条約」において、この問題の国家間での補償問題はいちおう政治的には解決となっているからだ。そのため元徴用工などの補償を含めた巨額な金額を 当時の韓国政府に支払っているからだ。その巨額な金額の中から「元徴用工」に対して、韓国政府は納得いく補償を国家としてしなければいけなかったからだ。それを歴代の韓国政府はやっていなかったような節がある。だから、今回の「元徴用工」裁判が起きるのだが、原告団は、「韓国政府」にまず「補償の実施」を向けるべきなのだと思うが、「日本」と「日本企業」だけに向けるというのも、私は納得ができないものを感じる。

◆石破氏の言うように、日本人及び日本政府が、過去の「歴史認識」を十分に踏まえて対応にあたるということは、繰り返しになるかもしれないが、「誠実な対応」ということはやはり、問題の真の解決に向けてはとても重要なことだと思う。安倍首相や安倍政権のブレーン・サイトには、このことが分かっていない。高須クリニックの高須氏などは、最近、インターネットでもよく政治問題にも発言し、「次期 首相には 断固とした政治姿勢をもっている河野太郎氏がふさわしい」などと発言している。この「日韓関係」を巡る問題に関しては、私は「河野氏の見解」より、「石破氏」の見解の方が奥が深い見識だと思う。だから、高須氏の見識はどこか浅いものを感じもする。

 「三菱重工は韓国最高裁の判決を受け入れを―日本の市民団体促す」というインターネット記事があった。11月30日朝、日本の市民団体が三菱重工本社に近い東京・品川駅前で賠償判決を歓迎するとともに、同社に判決の受け入れを促したという記事だった。この市民団体は、「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会」。この日、駅を行き来する人たちにビラを配り、判決受け入れの必要性をマイクで訴えたとあった。同団体や「朝鮮人強制連行真相調査団」の日本側連絡協議会などは2007年から共同して「金曜行動」を開始し、この日で488回目を数えるという。すごい回数にわたって、持続的な支援活動を行っていると感心もするが‥‥。

◆この行動に参加している人たちは、長年にわたり「裁判支援」をしているようだが、「批判を向ける相手が日本の企業や日本政府」だけというのも、私には納得できないことだ。「支援」することはよいのだが、批判や裁判を起こすべき相手の第一はまず「韓国政府」だということが この日本人の支援者たちは理解できていないように思えるのだが、どうだろうか。この問題の補償政策は、「基本的には韓国政府が中心となり担い、それに対して日本政府や日本企業が支援するという形の財団設立」という形をとることが 歴史的に最も正しい方法ではないかと思える。

◆この「徴用工判決問題」に関する、日本の「立憲民主党」や「日本共産党」、「国民民主党」などの政党からの 見解らしきものは、インターネット記事や日本のテレビ報道などを見る限り、まったく聞こえてこない。ただ、日本共産党の国会議員・穀田議員が国会での質問で、「1965年の日韓協定で、今後の個人的請求権の放棄までは内容として含まれない」ことを政府関係者に確認したことだけは、インターネット記事で知った。これらの政党の「外交政策・国防問題・アジア専門家」などの深刻な人材不足を いまさらながらとても痛感する。