彦四郎の中国生活

中国滞在記

韓国「徴用工判決問題」を考える❹日中韓国民の歴史認識問題—歴史の捏造・隠蔽、プロパ—

2018-12-01 22:48:33 | 滞在記

 中国において1990年代より本格化させた「反日教育」、そして、「中国共産党賛美」を進めるための歴史の捏造(ねつぞう)や隠蔽(いんぺい)、中国共産党の負の歴史(※「文化大革命」「大躍進政策」「日中戦争時の国民党軍・中国共産党軍の日本軍に対する対応の違い」など)に関しては、学校や大学などで教えることは「大きな制限や禁止(不講)」がされている。歴史は常に捏造や隠蔽などがなされながら広まっていく。これは、「日中韓」の間、日本においても多少なりともされていることだ。日本では「教科書検定」により、それらのこと(主に隠蔽)が行われてきている。

 「徴用工問題」において、韓国の「書籍」などでもその捏造が行われているという記事が、この11月に日本のインターネット記事で紹介されていた。2015年、ユネスコの世界文化遺産として「日本の近代産業遺産」の一つに認定された「長崎県の軍艦島」に関して、2016年に韓国で出版された絵本『恥ずかしい世界文化遺産 軍艦島』の内容である。

 この絵本では、朝鮮の人の少年たちが鉄格子の中ですし詰めになっている様子や、両足を縛られて逆さ吊りにされている場面、島の外に朝鮮人を逃がすまいと夜間にサーチライトを照らしている様子などの挿絵が描かれている。まるで、ナチスのアウシュビッツを彷彿させる。(軍艦島とは、長崎県冲に浮かぶ、明治から昭和にかけて稼働していた海底炭鉱の洋上拠点の島。)  この絵本などは、まったく事実とかけ離れた 「捏造」本として批判をされてもいる書籍のようだ。

 「歴史は常に書き換えられる」とは、昔から言われていることたが、今、世界から注目もされている「東アジア―中国・日本・韓国・北朝鮮」情勢のただなかにある「日中韓」を巡る歴史問題でも、この捏造が行われてきたことを、『歴史問題の正解』や『こうして歴史問題は捏造される』(いずれも新潮新書)では いろいろな歴史資料を基に分かりやすく述べられている。

 例えば、南京大虐殺は300000(30万)人と、中国政府及び南京市にある記念館は公式発表をしている。上記の有馬氏の書籍では、30万人という数字はアメリカが主導した「極東軍事裁判」で初めて出された数字だと言う。これは、広島・長崎での原爆投下による被害者(死者)を上回る数字にしたいというアメリカ政府の出してきた捏造された数字(「日本軍は中国の南京において原爆投下による死者数を上回る虐殺を行ったんだ」という印象を日本人に強く与えるため。)だということが、さまざまな資料を引用して述べられている。

 日本の福田康夫・元首相は、「南京虐殺記念館」を訪問し、「日本人は歴史の真実を直視すべきだ。この南京大虐殺で何人が虐殺されたのかという数字が問題視されてもいるが、数字よりも、実際にここで大虐殺があったことを直視することが重要なことだ」というコメントをした。私は、このコメントの「歴史を直視すべき」ということには賛同するが、数字にこだわるなということに関しては賛同できない。歴史の直視には、数字的にも重要なことだと思うからだ。

 ちよっと「徴用工判決問題」から、話は横道にそれたかもしれないが、どうも「日本、中国、韓国」それぞれの国民間の近現代史における(特に1940年~45年における)が、それぞれの国の政権による「捏造・誇張・隠蔽、そして宣伝(プロパガンダ)」により、歪んだ形の歴史認識に それぞれがなっているような気がしてならないからだ。例えば、韓国のBTS(防弾少年団)を巡る問題にそのことが現れもしている。(日本への原爆投下に関して)

 韓国のグループBTS(防弾少年団)は、いまや韓国のみならず、日本でも中国でもそのファンは多く、世界的多くのファンを持っているグループだという。日本の雑誌『アエラ』の表紙を飾り、特集が組まれたことも最近ある。「かっこいいバカは僕らのスタイル」—防弾少年団が世界で愛される理由—というタイトルでの特集記事だった。「BTS 日本初!全国4大ドームツアー 38万人動員予定」「社会の問題を積極的に発信するグループとして韓国国内では有名」なのだという。

 このグループを巡る騒動の発端は、グループメンバーの一人「ジミン」が、「原爆のキノコ雲の写真と、日本の敗戦による朝鮮解放を喜ぶ民衆の写真を背中にプリントしたTシャツ」を着用し出演していたことに対する抗議が最近起きたことだった。それを発端に、これまでに、ナチスドイツを賛美するようなこと(2014年に「ファッション誌でメンバーが、ナチス親衛隊がかぶった帽子をまねたものを着用」していたことや2017年のコンサートでナチスドイツの旗を連想させる旗を振ってコンサートを行ったことなど)が問題視され始めた。

 世界的な関心事として、イギリスBBC報道、アメリカCNN報道、中東アルジャジーラ報道などてもこの問題が取り上げられ、アメリカのユダヤ系人権団体や日本の被爆者団体から非難声明があがっている。これらの記事を読むと、「かっこいいバカ」ではなく、「かっこをつけた ただの無知なバカ」という印象のガキグループなのだが‥‥。この問題が浮上し、日本のテレビ局の歌謡番組「ミュージックステーション(Mステ)」「歌謡祭」などへの出演が見送られ、今年のNHK紅白出場確実とされていたが、出演がこれも見送られた。

 これに対して韓国では、「徴用工判決」にたいする日本人の「報復」だととらえる声が上がり、日韓合同ユニット「IZ※ONE(アイズワン)—日本人が3人入っている」の、韓国公共放送KBSへの出演は止めるべきだという声が大きくなっているとの報道もされていた。

 このBTS(防弾少年団)の原爆Tシャツ問題に関して、「韓国では原爆投下=日本からの韓国解放という歴史のイメージで、日本人をバカにするとかしないとかの意味はあまりなく、それ以上の意味はない」という釈明も述べられていた。「原爆投下(多くの人々が一瞬にして死ぬという、人類史上の凶悪な出来事なのだが)=韓国人にとっては朝鮮の日本からの解放、喜び」というイメージしかもっていないことの歴史認識の日韓の大きな歴史認識の違い。この「原爆投下」に関しては、中国人も韓国人と同じようなイメージを持っているようにも、私は大学で「日本概論」などの授業を行って思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


韓国「徴用工判決問題」を考える❸—1910年・韓国併合、35年間の朝鮮人「喪国」の歴史—

2018-12-01 18:46:00 | 滞在記

 一枚の絵画がある。「喪う(うしなう)」、「喪国之痛」と題された絵。朝鮮人たちが「國を失った痛み・喪失感」を描いた絵画である。中国の詩人・杜甫に「春希(しゅんぼう)」と題された「国破れて山河あり」(国破山河在)で始まる漢詩がある。1945年8月、日本は敗戦となり、東京・大阪を始め、日本の各都市の多くは空襲により廃墟と化した。日本人にとってこの「国破れて山河あり‥」の漢詩が心に染み入った時代はなかったとも言われている。1910年、「日韓併合条約」によって日本国領土となった「朝鮮半島」。朝鮮の人々にとって、このことは「国失くして山河あり‥」であった。

 1868年「明治維新」、そして「廃藩置県」・「徴兵令」・「殖産興業」と「富国強兵政策」を強力に推し進め、「欧米列強に負けじ」と国力をつけ、「大日本帝国憲法」を制定。1894年の「日清戦争」に勝利し1895年に「台湾併合」。このころまで朝鮮半島は「朝鮮王朝」(中国の清国に朝貢する国ではあったが)という独立国であったが、1897年に国名を「大韓帝国」と改名。

 徐々に朝鮮半島への日本の影響力が強まっていった。1904年に「日露戦争」が勃発し、一応の日本の勝利となる。これにより、日本は朝鮮半島を植民地化する政策をより強め、ついに1910年に、当時の大韓帝国総理の李完用と大日本帝国総理の寺内正毅との間で、「日韓併合条約」が結ばれ日本領地となっていった。伊藤博文が「朝鮮総統府」の初代総統となり、以後 朝鮮半島を1945年8月までの35年間、「日本領」として統治した。日本本土の日本人に比して、同じ「日本国民」となった朝鮮人の人々は「二等・三等国民」としての扱いを受けていた屈辱の35年間だった。

 朝鮮の学校では「日本語を使った教育」が行われ、朝鮮人の人たちの「日本人化」が進められた。1941年(昭和16年)にアメリカとの開戦による「太平洋戦争」が開始されると、国内の労働者不足を補うため、朝鮮半島の人々を「徴用工」「女子勤労挺身隊」として日本各地の工場や炭鉱・鉱山などでの「労働」に従事した(させた)。

 1945年、日本からの解放、再び独立国となった朝鮮半島だが、1951年から始まった「朝鮮戦争」により、「北朝鮮」と「韓国」の南北に分断され、今日に至っている。分断後の「韓国」では、アメリカ・日本との関係を強め、1965年に「日韓基本条約」が締結され、日韓の間の問題となっていた「従軍慰安婦・徴用工・女子勤労挺身隊」などの問題は、日韓の政府間ではこの年に最終解決を確認したとされた。(※個別の裁判所訴訟に関しては「可能」とする余地は残した。)

  この条約締結時の韓国大統領は朴槿恵(前韓国大統領)の父、朴正煕(パク・セイキ)大統領であった。この条約締結により、日本は「韓国国内に残る日本の公的・民間的遺産」を全て放棄した上に、合計5億米ドル(無償3億米ドル・有償2億米ドル)、及び、民間融資3億米ドルの経済協力支援を約束した。その額は、当時の韓国国家予算の2年半分に相当した。この交渉の過程において、日本側は「徴用工などへの年金を支払いたい」と韓国政府に申し入れた。しかし、韓国政府側は、「日本からのお金は、その徴用工問題などの費用も一括して韓国政府が受け取る」として譲らなかった。

 この条約締結後、元「従軍慰安婦・徴用工・女子勤労挺身隊」の人々にどのように金銭的な補償が行われたのかに関しては、私は 今のところちょっと分からない。当時の韓国では「軍事政権」的な政権が続き、韓国民の権利や民主主義なども極めて低い立場に置かれていた時代だったので、「雀の涙」くらいの金銭を渡したくらいで(又は、そのお金さえ受け取れなかった人が圧倒的に多かったのではないかと‥‥)、当時の韓国政府はこの問題を終結させた可能性もある。この時代に文在寅大統領は、反政府運動の罪を問われ、逮捕され、「刑務所」に入れられている。

  2000年代に入り、韓国国内での民主主義や権利が大きく向上し、昨今の徴用工問題などでの「個別裁判闘争」が始まってきた。歴代の韓国大統領は「日韓関係」に亀裂が大きくなり「国交問題」の危機を避けるため、「韓国国内での裁判が開始」されても、大法院(最高裁判所)では「原告の敗訴」、又は、確定判決にはいたらないよう配慮してきた。しかし、文在寅大統領は、最高裁長官などを昨年9月に 新たに任命し、今回の判決に至らせている。

 そして、朴槿恵政権下で、「これまで、徴用工問題での審理・判決を遅らせた」として、文政権は最高裁判所の元判事や元長官などを逮捕・拘束し、罪を問い始めている。