彦四郎の中国生活

中国滞在記

日韓関係の未来と今のこと❸「韓中日」それぞれの国での、「正しい歴史認識」教育の重要さ

2018-12-08 16:10:22 | 滞在記

 ◆前号の「アジア・キャンパス」プログラム関連の記事よりの続き。

 1年間の交換学生プログラムを終え、今は日本人留学生との交流を担当する学科内の学生会長を務めている韓国人Jさん(25・国民大学4年)は、「韓国人は日本といえば植民地・強制徴用などの問題を真っ先に思い浮かべるが、普通、日本人が考える韓日関係の歴史はそんなに過去まで遡らない」とし、「日本人は主に経済交流が活発になってからの韓日関係を先に考える」と話した。Jさんは、「民間次元の交流を増やしながら、両国国民の認識を変えていくのが重要だ」と話した。

 国民大学に交換留学に来ている日本人のSさん(21・津田塾大学3年)は、「強制徴用判決以降、日本にいる両親が電話をしてきて、『韓国で反日感情が高まっているが、日本人ということで不利益を受けていないか』と心配していた」とし、「メディアを通じて日本人が触れる韓国に対するイメージが、私が暮らしているここの本当の姿とは違うようだと感じた」と話した。続いて、日本国内で韓国に対する学習が必要だと強調した。Sさんは「日本社会の雰囲気のせいなのか、現在、韓日間で複雑化している歴史問題が実は人権問題ということを認識できていない人が多いが、これに対する認識の変化が必要だ」と話した。(韓国「中央日報」のキャンパス・アジアプログラム2018年11月開催関連の記事は以上)

◆韓国の世界的人気グループの「原爆Tシャツ問題」で明らかになったが、「原爆投下=日本の植民地支配からの解放」という韓国国民の歴史認識。「原爆投下という人類的悲劇」に対して「それだけの認識しかないのか」ということに、日本人として驚きもした。

 中国の大学で「日本概況」の授業を何回か行うことを通じてわかったことだが、中国の大学生たちは「原爆投下」の事実をほとんど知らない。歴史認識の教育においては、ひたすら、「近現代史での日本及び日本軍の残虐性や非道性、そして中国共産党の歴史を賛美する内容」「文化大革命などの中国共産党の負の歴史については触れられず」の学校での(小中高・大学)歴史教育しか受けていない。そして、日常的な「反日ドラマ」の放映を見て育ってきている中での「歴史認識への」の影響は大きい。

 改めて、日中韓それぞれの国での「正しい歴史認識」を進めていくことの大切さを思う。

 これで、「韓国と日本の」日韓関係、徴用工判決問題、丹波マンガン記念館関連のブログシリーズを終わります。

 最後に、「丹波マンガン記念館」に対して、日本の右翼勢力の一つである極右・超過激な「ヘイト集団」が押し寄せ、威圧行動や破壊行動などをおこなわないことを願っています。記念館を維持している李さん家族たちは、韓国の極左勢力団体の度重なる依頼によって「徴用工像」の記念館内敷地への建立を受け入れたのですが、記念館設立は、「マンガン鉱山」で働いた日朝両国民の大変な労働の様子を後世に残し伝えたいという想いで、細々と30年近く親から子へと 素朴に経営維持をしているのです。

 日本の世論が今、「文政権に対する批判とともに反韓感情」も高まるのは、やむおえない事態だとも思いますが、この日本国内の対韓国世論の雰囲気に乗じて、「丹波マンガン記念館」への攻撃行動をすることも十分にありうるからです。

 


日韓関係の未来と今のこと❷—「隣国を知ろう」朝鮮半島映画祭(東京)、「韓中日キャンパスアジア」

2018-12-08 15:09:15 | 滞在記

◆「丹波マンガン記念館」「徴用工判決問題」「日韓関係の未来と今のこと」連動シリーズのブログは、次回で最終となります。

 ①―「朝鮮半島映画祭」―

 朝鮮半島をテーマにした映画祭「朝鮮半島と私たち」が12月8日〜14日、東京で開催される。日本大学芸術学部の学生たちが、映画を通じ、隣国・韓国への理解をもつために企画している。映画祭では朝鮮半島と関りとある作品18本を上映予定。(於:東京渋谷「劇場・ユーロスペース」)  2005年初公開『パッチギ』(京都を舞台に、朝鮮学校で学ぶ生徒たちの青春を描いた作品)や2004年初公開『血と骨』(韓国・済州島から日本に来た人の壮絶な人生を描いた作品)などの映画上映、小栗康平・崔洋一・行定勲監督らとのトークショーも予定されている企画のようだ。

 ②―「韓中日 キャンパス・アジア」プログラム—

 韓国・中国・日本協力事務局(TCS)が支援して、3国教育部が主管し、続けられている大学生交流事業がある。「キャンパス・アジア」プログラムだ。この事業は、「韓国と中国と日本の学生たちなど」が集まって、特に国家間が東アジアのことについて議論し合うプログラムである。今年も開催されたが、この内容を韓国の「中央日報」が記事として報道していたので 以下に紹介したい。

 現在は韓国の東西大学に留学中の日本人のYさん(21・立命館大学3年)は、韓日間の歴史葛藤が繰りかえされる理由について、「教育の違いだと考える。自国の観点だけで見る歴史を教育させていることが問題だと思う」と話した。日本では1990年代後半〜2000年代初期、いわゆる「自虐史観」をやめて植民地支配を肯定したり事実が省かれたりした右翼指向の教科書を出すことがブームとなった。Yさんは「学校で、強制徴用のような歴史的事実は少ししか習わなかった。私自身は関心があったので自分から探して勉強したが、私の同級生は背景知識があまりないこともあって、大きな問題として認識していない人々も多いと思う」と説明した。だからといって、日本右翼の意見が日本全体を代弁しているわけではないとYさんは強調した。Yさんは、「韓国では日本人が皆そうだと考えているが、それは大きな誤解」とし、「私も韓国に来る前、韓国の高齢者は日本人が嫌いだと思っていたが、来てみると皆温かく迎えてくださって考えが変わった」と話した。

 「キャンパス・アジア」1期生として修了した日本人Nさん(28・コンサルタント)は、「韓日関係で歴史問題が繰り返されすぎている。韓国政府の深刻性に対する認識が不足しているのではないかと思う一方、日本政府も若干攻撃的に反応している傾向がある。双方ともに責任がある」と話した。

 「キャンパス・アジア」に参加し、現在は立命館大学で学んでいる韓国人Uさん(21・東西大学)は、「繁華街や観光地に堂々と旭日旗が掲げられているのを見て、歴史問題を正確に知っていることが一番重要だと感じた」と話した。Uさんは、「韓国国民は反日感情を前面に出して無条件に日本を批判するべきではなく、日本もちゃんとした教育などを通して歴史問題をしっかり認識する必要がある」と話した。

◆次号に続く。

 


日韓関係の未来と今のこと❶11月5日・7日の「日本企業就職説明会(ソウル・釜山)」一つの現在

2018-12-08 14:00:57 | 滞在記

◆韓国は1990年代末から2014年あたりにかけての15年間、「高度経済成長」の時代だった。中国市場においても、「サムスン電気」や「現代自動車」「食料品」「化粧品」などが、韓国製の工業製品は日本企業と競合を争った。私が中国にはじめて赴任した2013年当時、携帯電話などは、サムスンの製品が中国市場を怒涛していた。また、2010年頃からは、韓国のドラマやエンターテーメント関係は、完全に中国での影響は日本を上回った。

 しかし、2015年を境として、中国の国内大手企業の製品の質向上と手ごろな価格に圧されて、中国市場での韓国企業製品の市場は急激に悪化した。このため、韓国は、官民一体となって、インドやベトナム、欧米での市場開拓にシフトを広げてきている。今、中国で、韓国の影響がとても強いのは、若者への「ドラマ、エンターテイメント関連」と「韓国式化粧や化粧品、髪型」、そして「整形手術・美容関連」である。

 10月30日に「徴用工判決」が初めて出された1週間後の11月7日、ソウルで開催された「日本企業就職説明会」には韓国の若者が多く訪れた。韓国の大手新聞社「中央日報」は、「日本就職博覧会に2500人集まる‥‥日産や楽天など112社が現場面接」と報じた。11月5日に釜山で開かれたイベントと合わせると、日本企業全体の採用規模は660人程度に対し、事前書類申し込みは6200件を超えたという。韓国のイベントを紹介した6日の朝鮮日報は、韓国の雇用労働部の関係者の話として、「これほど熱を帯びるのは、韓国の青年たちの間で日本への就職に対する関心が高いことを示している」と伝えた。

 韓国での日本就職ブームは、日本側の統計でもうかがえる。日本の法務省の統計によると、2017年末時点で、大学などの専攻を生かして業務にあたる「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得した韓国人は2万1603人で、前年比に比べて約14%増加しているという。

 このことについて、12月上旬のNHK報道番組「これでわかった!世界の今」で特集されていた。特集テーマは「就職難—韓国の若者、日本企業に就職を」。(上記の写真は、その番組の写真—「日本企業面接会場」「家賃補助・新人教育・生活支援」「日本企業・運送関係者―"運送の関係も年々高齢化していて、若い人たちには人気がない職種なので、韓国などの外国人を採用しているのが今の実情です。"」「韓国人でこのイベントに参加した人の一人—"これから10年、20年を考えた時に、自分を成長できる場所は日本です。"」

 この報道では、韓国に新しくできた「日本企業への就職対策塾」のことも伝えられていた。この塾には現在100人近くが受講生として在籍、受講生の多くが日本企への就職を果たしてきているという。経営者の塾長は元日本人外交官。日本語の勉強も開講しているという。「日本は就職率が高いと聞いていいなあと思った」と語る受講生。

 「韓国の大企業は学歴・技能・経験重視、中小企業は給料面などで不人気」「韓国の大企業では、とても有名な大学卒業予定者でなければ面接の機会すら与えられない。日本への就職を準備する人たちと情報を共有したくて対策塾に参加した。」「採用の際、日本企業は"人"を見るが韓国企業は履歴書の"スペック"を見る。私は"人"として働きたい。」などと塾生が語る。

 韓国社会では、「有名大学合格へ向けての大学入学試験」や「企業就職」の競争が激烈だ。それは、かなり厳しい中国社会以上、いや、中国をはるかに超越した社会だ。就職に関しては、「容姿」も重視されるため、整形手術を受けることも常識となっている。報道番組では韓国での大学進学や就職のことを「地獄のようだ」とも表現もしていた。

 最近、「日本の大学との提携関係」を結ぶ韓国の大学も増加していることも、この報道番組では紹介していた。これは、大学の学生の定数を確保し、留学生数を増加もさせたい日本の私立大学の願いとも一致していることだ。番組では、韓国の大学関係者の話として、「日本の大学と姉妹校提携が進めば、学生が交換留学生として日本に留学に行っても、日本の学生と同じように就職支援も受けることが可能になる」と語っていた。

 ◆このような就職を巡ることも、今の「日中関係」の現在なのだと思った。

 

 

 

 

 

 

 


韓国「徴用工判決問題」を考える❻下がり続ける文在寅大統領への支持率と韓国社会、「中二病」

2018-12-08 11:07:07 | 滞在記

 韓国の文大統領は、昨年春の大統領就任当時は80%を超える支持率があったが、その後 徐々に支持率を下げ、2018年12月3日時点では9週間連続で下落し、ついに50%を下回り大統領就任以来の48.4%で最低となった。(まだまだ、高い支持率だが)  「不支持」も就任後では最高の46.6%で、「支持」と「不支持」が拮抗するようになってきている。また、文氏の出身地域である釜山での不支持が55.3%と、支持の39.4%を大きく上回ったとも伝えられる。

 この12月中に、文大統領が熱望している「北朝鮮の金正恩委員長の韓国・ソウル訪問」(世論調査では、訪問を「歓迎61%、反対31%」)が実現すれば、一時的に多少は支持率が回復する可能性は高いが、いずれにしても、今後も支持率の下降傾向は続くと予想される。経済問題・雇用問題・景気低迷が不支持の最大理由とされる。あまりもの「八方美人・ばらまき政策・大衆迎合」が国民の支持をうしないつつあるようだ。

 韓国社会は「格差がとても大きい」「競争がとりわけ激しい」社会とも言われる。大企業と中小企業との賃金格差などの問題だが。文大統領は「格差をなくす」「雇用を増やす」「南北融和を実現する」を国民に訴えて当選した。就任後、「雇用大統領」とも呼ばれ、最低賃金の大幅引き上げ政策を行った。

 その結果、中小企業は「給料が払えない、もう人を雇えない」などの状況となり、経済がより閉塞する悪循環となり景気も後退した。期待された「経済政策」に関する最近の世論調査では、「評価する25%、評価しない60%」となっている。「北朝鮮政策」に関しての最近の世論調査は、「評価する55%、評価しない30%」となっている状況だ。政策の基本的柱である「①経済政策、②北朝鮮政策、③中国・日本・アメリカ政策」において、②の北朝鮮政策の支持のみで保っているような政権となってきていると言えるかもしれない。また、文氏自身も「それでよし」とするようなところもある政治家のようで、最近では、「北朝鮮の主席報道官」「北朝鮮の使いっ走り」とも揶揄されたりもする。

 いずれにしても、「韓国・徴用工判決問題」は、2022年の次回「韓国大統領選挙」で文氏が大統領職を辞するまで、混迷を続け、日韓関係の悪化問題はさらに続きそうだ。この「徴用工判決問題」に関して、韓国国内のメディアは評価が分かれてもいる。文政権支持(革新系)のハンギョレ新聞は、「裁判巡る裏取引で遅れた正義」と見出しをつけ、判決を肯定的に報じた。保守系と言われる中央日報は「韓日関係に台風」、同じ保守系の朝鮮日報は「韓日国交正常化の軸となる請求権協定に動揺」との見出しを付け、それぞれ日韓関係の土台が崩れることへの懸念を示す有識者コメントを掲載した。

 この「徴用工問題」に関して、中国社会での日本批判などの報道は ほぼされていないのは、「日中関係」の改善?が一定 進められた現状を反映している。中国共産党政権の見事なまでの情報統制といえる。

◆いずれにしても、韓国国民の「日本に対する感情」はとても複雑だ。「中二病」とも韓国の新聞「中央日報」の記事では表現もされている。「自分たちの身の丈を考えずいる彼らは、どこか"中二病"のようだ。」とし、まず、韓国の現状を、「満たされない欲求に対する不満が膨らみ、未来に対する不安に抑圧されている韓国社会の姿は、典型的な思春期の青少年の姿だ。大韓民国が"中二病"を彷彿させるほどの疾風怒濤の思春期を経験しているが、必須の発達段階として受け止めて無事に過ごせば、成熟した先進社会に侵入できる。」(中央日報・裴明福論説委員)

◆北朝鮮から命をかけて「脱北」した人たちが韓国には何万人も暮らしている。この「脱北者」たちは今、大きな不安を抱え、脅えながら暮らしていると日本の報道特集番組「脱北者たちの終わらない旅—南北融和ムードの中で」が伝えていた。文大統領のあまりにも北朝鮮金王朝政権に媚びている外交政策。この中で、「北朝鮮への強制送還」の現実も皆無ではない状況におびえ暮らしていると報道されていた。