彦四郎の中国生活

中国滞在記

Wカップロシア大会❾―サッカーに熱心になり始めた中国人は、日本代表をどのように見ているのか⑤

2018-07-08 15:54:04 | 滞在記

 中国は、世界各国の中で、経済力や軍事力で急速な伸びを示し、世界の中の強国としてアメリカに追いつこうとしている。中国の国家主席・軍事委員会主席である習近平氏は、大のサッカーファンとして知られている。どれくらいのサッカー好きなのか、一度一緒にサッカーをしたいものだと思うが。「中国のW杯出場、中国でのW杯開催、そして将来の中国のW杯優勝」が彼の夢(中国の夢)の一つとも言われている。2022年のカタール・W杯への出場、2030年のW杯開催国が彼が中国共産党の事実上のトップとして君臨する年月での具体的なプランとなるのかと思う。

 サッカーW杯のイベントは、オリンピックイベントよりも世界的に多くの人々が熱狂するスポーツイベントだ。経済と軍事の力だけでなく、サッカーやオリンピックでの自国の活躍は「国民の自尊心」「國への誇り」などを持ちせるためにもとても重要な要素になることはまちがいない。このため、2015年には中国サッカー総合改革プランが発表された。そして、「サッカー重点校」は予定よりも3年早く、2017年に2万校を指定した。中国ならではのスピード改革の実施には、いまさらながら驚かされる。

 中国の中学校や高校には、基本的に日本のような「運動系クラブ活動」「文科系クラブ」はない。あるとしても、有志で学校が作らせたクラブ(学校対抗戦)くらいであり、それは、日本の運動系クラブのような練習量はない。試合前に一定期間練習をする程度である。普通の学校でサッカーをしている光景は、今でもあまり見ることは少ない。休み時間や放課後の遊びとしてのバスケ、バスケ、バスケの世界だ。そして、大学受験を目指しての勉強・勉強の6年間である。

 そんな中で、2万にも上るサッカー重点校指定と言うのは、いったいどのような内容なのか興味はある。ひょっとしたら、10年ぐらいの短期育成強化で、かなりの成果を出す可能性もある。

 中国の多くのインターネット記事などで「アジアの光」と賞賛された日本サッカーについて、とても興味深いインターネット記事があった。それは、「我々は日本のサッカーに何年遅れているのだろうか?―20年?―」という記事だった。この記事は、「日本はどのようにして強くなったのだろう?」ということについてかなり詳しく分析している記事だった。本田圭佑、柴崎岳、大迫勇也、乾など日本代表には一つの共通点がある、つまり彼等は高校サッカーの出身ということに注目している記事だ。

 前回の第96回全国高校選手権大会には何と4093校のチームが出場、48チームが全国大会に出場したことなど、100年近くの歴史を持つ学校サッカーの存在をその強さの重要点として述べている。また、各都道府県の市単位などでの地区リーグの存在、40才〜70才までの年齢層のチームの各地の存在などもとりあげられていた。つまり、幅広い層のサッカー愛好者の多さに注目している点だ。

 中国の世論調査によるとW杯への関心をしめした中国人の割合は87%で、開催国のロシアやブラジル、イタリアなどをも上回ったとも報じられていた。(試合の賭博「くじ」に関心を持つ人も多いから、純粋にサッカーへの関心というのは‥‥?) 「人口33万人のアイスランドが健闘」という見出しで、「人口33万人のアイスランドがW杯で活躍している。一方アジアの某国は、十数億の人口を擁し、核兵器を製造する実力もあるのに、W杯に行けない。インドよ頑張れ。」と、ひねりを効かせた自国代表への皮肉が、ネット上での支持を得たり、「サッカー代表チームを話題にするな。卓球で自尊心を保とう」という書き込みにはも「最近は男女とも日本に負けているぞ」とのツッコミを感じる内容でもある。

 中国サッカーが今後 どのように発展していくのか注目したいと思う。

 

 


Wカップロシア大会❽―サッカーに熱心になり始めた中国人は、日本代表をどのように見ているのか④

2018-07-08 12:30:08 | 滞在記

 ―日本のベルギー戦を受け、中国サッカーファンの多くが日本チームを絶賛―

 日本の決勝トーナメントVSベルギー戦を受け、中国のネット空間は日本への絶賛と羨望に満ちていた。体格的に劣るアジア人が「赤い悪魔」のベルギーから2点を奪い、ベルギーを一時窮地に陥れたことに対する尊敬の念を隠していない。また、第3戦のポーランド戦では、ラスト10分間の日本チームのプレーには中国でも批判があった。だが、中国大手インターネット網の「網易」が行った調査では、この「談合試合をどうみるか」という問いに、1万1000人のうち72%が「批判できない。一次リーグ突破のほうが重要」と答え、「激怒する。スポーツ精神への冒涜だ」の14%などを上回ったと伝えられていた。

 中国ウオッチャーの遠藤誉さんの記事から、それに関したもの(ネット記事やコメント)を紹介したい。以下はその一部。

 ◆中国大陸のネット空間には、サッカーファンたちの何十万というコメントが満ちている。その中から適切な意見を抜き出すのは多少の困難を伴うが、圧倒的多数が日本チームを礼賛していた。代表的な意見をいくつか拾ってみよう。(遠藤誉氏)

 ◆日本チームは尊敬に値する!―西野監督礼賛も

🔴たしかに日本はベルギーとの戦いで最終的には負けはした。しかし、あの強豪「赤い悪魔」から2点を奪ったのだ。その原因はどこにあるのか?   🔴組織力と精神力だよ!   🔴アジアで唯一、16強まで上りつめた。8強にはなれなくても、アジア人だってあの背の高い欧米人に勝てるんだって教えてくれた。 🔴中国は日本に学ぶべきだ。 🔴俺は日本は好きじゃないけど、でも今回の日本は凄かった。正直、羨望の気持ちでいっぱいだ。 🔴日本チームに対しては、「尊敬する!」、そのひとことしかない。尊敬に値する!  🔴でもさ、西野が辞めて、クリンスマンとかってのが次の監督になる可能性があるってネットに書いてあるけど、なんだろう、この気持ち。それって面白くないよな?あの西野と今回の日本チームがあってこその、あの訳の分からないような熱気だったんじゃないのかな。西野が代わって応援する気になる?

 ◆体格と体力の差―西野監督への恨みも

🔴日本人は背が低い。ベルギーのあの圧倒的な身長差と巨大な体躯に勝てるはずがない。それが体を張って強靭な精神力と組織力で「赤い悪魔」から2点もゴールを奪ったシーンは、同じアジア人として誇りに思った瞬間だった。中国チームだって訓練すれば日本チームのようになれるかもしれない。その勇気を与えてくれた。 🔴そう、後半の最後の方は、まるで巨人と小人のような差を見せつけられた。体力的にも限界だったのではないか。 🔴なぜ西野監督はもっと早く選手交代をさせなかったのか。それが悔しくてならない。ベルギーは選手交代をした瞬間に凄まじい勢いで反撃していったじゃないか。体格の差だけじゃない、体力の限界だったんだよ。 🔴そうだよ!早くに選手交代をしていれば、日本はベルギーに勝てたかもしれない。アジアの夢を叶えてくれたかもしれない。それくらい、日本のチームは凄かった。正直に礼賛する。

◆―中国は日本に学べるか?―

🔴中国が日本チームに追いつける日が来るとは、とても思えない。 🔴そもそもサッカーに対する概念が違うんだよ。日本は小学生の頃からサッカーを学ばせ、中学、高校と、学校間の対抗し合いさえある。大学に進めばなおさらだ。そういった優秀な選手が下から積み上がっていって、プロの選手になっていくんだぜ。 🔴中国ときたら、どうだい?学園(キャンパス)サッカーなんて、あるかい?小さい頃からサッカーをやったとしたって、たかだか遊びみたいなものだよ。日本じゃ、プロになれなくたって、ちゃんと勉学の道が用意されていて、他の専門や職業を選択することができる。中国はどうだい?プロの道から外れた者は、もうそれでお終い。人生の選択がなくなってしまう。とせこの親が、そんなリスクを我が子に負わせるっていうんだい?た゜だから無理無理!中国チームが日本チームみたいになる日は来やしないよ。

◆―私が見たさまざまな中国インターネット網からの記事を見ても、だいたい上記の遠藤誉さんが紹介していたコメントや記事内容だったように思う。「中国が日本チームのようになれるのには20年はかかる」という記事などもあった。

 

 

 

 


Wカップロシア大会❻―サッカーに熱心になり始めた中国人は、日本代表をどのように見ているのか③

2018-07-08 08:24:36 | 滞在記

 スポーツくじなどを扱う「中国体育彩票」という名前の店が中国には実に多い。ここ福州の市街地でも300m〜400mおきぐらにこの店がある。この「くじ」(宝くじ的)のファンというか常連さんは、中国国内で約3億人といわれている。成人の少なくとも4人に1人は男女を問わずこれを日常的にやっていることとなる。今回のW杯には多くの常連さんが熱狂していることが予想される。「让人人都成为慈善家」と店には看板がある。この「中国体育彩票」でお金を使う人はみんな慈善家になれるという意味だが、この収益の一部は慈善事業に使われもするのだろう。

 今回のW杯大会で、ドイツが韓国に負けて第一次リーグ敗退が決定した予想外の試合結果を受けて、中国の警察は「スポーツくじ」の購入者に向けて、「はやまってビルからの飛び降り自殺などをしないように」というSNSコメントを出した。サッカーに熱狂し始めた中国だが、本当のサッカーファンというよりも、サッカーより商売やくじの結果が大事で、「サッカー競技好きとかには無関係なサッカーファン」も多いようだ。(今回のW杯開幕前後1週間だけの売り上げだけで、過去最高の約74億元・約1200億円となった。)

 アパート近くの「大手眼鏡チェーン店」のショーウインドーには「日本の侍ブルー」を彷彿させるサッカー選手の大きなポスターが店頭に掲示されていた。上海などの大都会のスポーツバーでは、中国人たちが日本代表のユニフォームを着て日本代表チームを応援したというこれまでの中国ではありえないニュースも伝わる。中には日本の国旗を掲げたり、顔に日の丸ペイントをする中国人サポーターまで現れたというから二度ビックリ。中国人が「ニッポン チャチャチャ」とコールする動画も公開されていた。

 香港の英字新聞「サウスチャイナ・モーニングポスト」の電子版では、これらのことを「ロシアW杯を現地で観戦した中国人客のほとんどは日本戦で対戦相手を応援したとしている。それでも、今までタブーだった、オープンに日本を応援することが、中国国内では少しずつ許容される環境なっている」と同紙は分析。「理由の一つは、数万人規模の日本人ビジネスマンらが上海や広州などの商業都市に駐在し、現地の人々と職場や生活で触れ合う機会が増えていること、また、昨年だけで700万人以上の中国人が日本を訪れていることや日本への留学生などの存在なども理由」として挙げていた。それらに加え、「中国の若い層の間で、日本のアダルトビデオが長年根強い人気で、日本のセクシーアダルト女優にも詳しいことも影の日本びいき」とも伝えていた。

 今回サッカーW杯には、中国でもメディアの関心は高く、毎試合の内容を詳しく報じている。国営「新華社通信」の電子版は「日本が粘り、セネガルと引き分け」と見出しを付けて速報。2度リードを許しながら追いついた日本を「意気が高く、試合全体を通して動きがよかった」などと評価していた。人民日報系の「人民網」も試合結果とともに、「日本はアジアの光だ。体格が同じ中国も日本に学ぶべきだ」といった「足球迷(サッカーファン)」の声を伝えていた。

◆次号に続く。

 

 


Wカップロシア大会❻―サッカーに熱心になり始めた中国人は、日本代表をどのように見ているのか②

2018-07-08 07:12:26 | 滞在記

 2018年の3月下旬ころ、万達(ワンダ)広場と呼ばれるショッピングモールに、「FIFA WORLD CUP RUSSIA2018―あと77天17小時11分(開幕まであと77日17時間11分)」という看板が見られた。私が勤める閩江大学では、大学のホテルにロシア大会のマスコットらしいものが開会中に置かれていた。アイスクリームには「ロシア式牛乳アイス」も売られていた。天津焼き栗屋さんにもWカップの商売用ポスターが貼られている。近年の中国国内サッカーリーグは、海外から有名選手を巨額の金で獲得し、サッカー観戦者も増大している。新しい国民スポーツとしてのサッカー人気がじわりじわりと高まってきている中国の姿は、日本の1990年代の日本のサッカー人気の高まりとよく似ているように思える。

 ロシアで開催中のサッカーワールドカップ(W杯)、日本は予想を上回る活躍ぶりでアジアでは唯一、1次リーグを突破した。だがある意味、日本を上回る盛り上がりふりを見せているのが、今回出場していない中国だ。中国のメディアやネットは今回の大会、さらに日本チームの活躍ぶりをどのように見ているのだろうか。

 中国メディアの報道によると、今回ロシアW杯には10万人の中国人サポーターがロシアに出かけ、6万人のチケットが中国人サポーターの手に渡ったという。国際サッカー連盟(FIFA)の統計では、中国のサッカーファンには3万7000枚を購入したことになっており、多くの人が非正規のルートで手に入れたとみられている。W杯観戦に訪れた数千もの中国人ファンが、所持していたチケットが偽物とわかり入場できなかったとも伝えられていた。

 中国の国内リーグのサッカースタジアムでは、ザリガニを食べながらビールを飲んで観戦するというのが定番なので、今回のロシア大会では10万匹ものザリガニがロシアに「W杯応援のため」送られたとも伝えられていた。中国はW杯には2002年の「日韓共同開催」の大会以来出場はないが、中国国内では自国の代表よりも、欧州や南米の強豪チームの選手(メッシやロナルドやネイマールなど)というスタープレーヤー人気が高い。そして、今回ロシアを訪れている中国のファンの多くはスーパー富裕層ではなく、急速に増加している中産階層のようだ。彼らは自分たちの社会的イメージを高めることに関心が高く、そのため海外旅行や今回のW杯に行く傾向があるようだ。

 習近平国家主席のサッカー好きは広く知られているが、今回のW杯の試合を見ていて、驚くことの一つはサッカーフィールドの周りを囲む「広告」での中国企業名が非常に多いことだ。今回の大会での「12の主要広告企業」のうち、その1/3にあたる次の4つが中国企業だ。①万达(ワンダ)―不動産業、②Hisense―家電メーカー、③蒙牛―食品メーカー、④VIVO―スマホ(携帯電話)メーカー。その他に3つの中国企業が準主要広告企業に名を連ねている。これは世界で最も多く、第二位のアメリカ企業の2倍に当たる。韓国では「現代自動車」が主要広告企業として1社入っていたが、日本の企業は1社も入っていない。

 こうしたW杯に関する中国の奇妙な存在感について、大手インターネット「捜狐網」などによると、中国中央テレビの著名キャスター、白岩松は、「ロシアでのW杯には、中国は代表チームが行かなかったほかは、基本的にほかは全て行った」という皮肉たっぷりのコメントを発表。この「神吐槽(神のようなツッコミ)」は中国のサッカーファンで大きな話題になったという。中国サッカー協会幹部らは、これに対し2022年のW杯には出場できるよう努力する、これは全ての中国サッカーファンの目標だと述べた。

 これに、白岩松氏は、6月25日、「こうした態度はよいが、あと3年で、どうやったら出場できるのだろうか」と問いかけ、さらに、今回 アジアで出場している韓国や日本と比べて 何が中国のサッカーには足りないのか考えてみる必要がある」とコメントしている。