彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本共産党の米朝首脳会談絶賛に疑問を呈する❺―

2018-07-01 06:53:22 | 滞在記

―1958年から現在に至るまでの60年間の日本共産党のトップ―

 ①宮本賢治 1958年に書記長に就任、1970年に委員長に就任、1982年に議長に就任、1997年に退任。(約40年間) ※2007年に死去(98才)

   ②不破哲三 1970年に書記局長に就任、1982年に委員長に就任、2000年に議長に就任、2006年に退任。(約36年間)※現在88才。

 ③志位和夫 1990年に書記局長(当時35才)に就任、2000年に委員長に就任し現在に至る。(約28年間)※志位氏は大学生時代、宮本賢治氏の長男の家庭教師であった。現在63才。

◆日本共産党のトップ人事の在任期間はとても長い。①②ともに40年間近い。志位氏もあと10年間ほどは続ける可能性もある。世代交代をそれなりに行ってきているが、現代の国民感覚から言えば、「トップの座がとても長すぎる」とも感じる。とりわけ、「党内の民主的な議論が停滞する原因」ともなっていないのだろうか。

―日本共産党の「外交・安全保障(安保)」政策―

 アメリカいいなりの外交から自主外交に転換し、過去の侵略戦争と植民地支配を真摯に反省して、アジア中心の自主・平和の外交に踏み出すことを主張。日米軍事同盟=安保条約を21世紀の早い時期に廃棄し、非同盟・平和・中立の日本にすることを目指す。日米友好条約を結び、対等・平等の新しい日米関係をつくる。安保廃棄前にも米軍基地の異常を正し、米軍の横暴勝手をやめさせ、日米地位協定の抜本改正を主張。沖縄への新米軍基地建設(辺野古)に反対、米海兵隊の削減・撤退を主張している。ガイドライン法=戦争法のもとで、日本を戦争のできる国、アメリカのおこす戦争に参加する国にしようとする「集団的自衛権の行使」に反対している。

―日本共産党の「北朝鮮」に対する最近の論評―

 社会主義とは無縁の「独裁体制国家」と批判。

―日本共産党の「中国」に対する最近の論評―1967年以降日本共産党と中国共産党は30年間近く長く対立・絶縁関係にあったが、1998年に交流を再開している。交流再開後、「社会主義を目指す新しい探求が開始された国」と高く評価していたが、「近年の同国の国際的動向には、核兵器問題、東シナ海や南シナ海での力による現状変更を目指す動き、国際会議の民主的運営を踏みにじるやり方などから、『新しい大国主義・覇権主義』が見えるとし、これが今後も拡大していくなら社会主義の道から決定的に踏み外す危険があると警告をならしている。また、民主運動家の弾圧状況に関して、「禁止・弾圧ではなく言論で対応すべき」との見解を中国共産党側に伝えている。(2017年に中国を「新しい大国主義・覇権主義」とする見解を示した。)

 ❶◆日本共産党が今回の「米朝首脳会談」を評価することは、いままでの日本共産党の「外交・安全保障政策」を見てくると理解はできる。日本共産党にとって「アメリカ軍の基地がある日本をなくし、日米安保条約を廃棄し、アメリカ従属から自主・独立・中立の外交へ」というのが党の基本政策だからである。米朝首脳会談を受けて、「米韓合同軍事演習」の中止や「韓国での駐留米軍の削減」の可能性も示唆され始めている。「朝鮮半島で長く続いてきた軍事的緊張関係」が緩み平和的方向に行くことは日本共産党が「歓迎」とする声明は私も理解できる。

❷◆しかし、アジア、とりわけ東アジア・東南アジアでは、日本共産党が昨年発表したように、中国に関しては「新しい大国主義・覇権主義」の拡大傾向が顕著である。そして、今回の「米朝首脳会談」の結果、「北朝鮮の体制保証」「北朝鮮と韓国(朝鮮半島)が確実に中国との関係では中国の勢力下」が進んだという現実。北朝鮮国内の深刻な権問題も考えると、今回の日本共産党の手放しの「米朝首脳会談への絶賛」は疑問を呈したい。懸念事項も表明すべきではないかと思う。

❸◆「日米安保条約」「日本における沖縄をはじめとする米軍基地の存在」、このことは、大国主義・覇権主義を大手を振って出し始めた中国にとっては、米日に対する対立要因の大きなものとなっている。今や、中国を一つの核とした新勢力地図とアメリカを核とした従来の勢力地図との「二国間対立」が激化し始めているという状況である。

❹◆この状況下はこれからも続きそうだが、次回のアメリカ大統領選挙でトランプ大統領が再選となれば、アメリカは韓国や日本からの米軍基地の縮小又は撤退をしてくることの可能性はとても高い。そして、それを待っていたかのように中国はさらに東シナ海や南シナ海での覇権の動きを強めて来るだろう。

❺◆日本共産党が主張する「日米軍事同盟の廃棄」「自主・独立・中立」の外交・安保政策は、将来的には私も賛同する。これをしない限り、世界の大国となり隣国でもある中国との関係は本質的には改善されてもいかないだろう。

❻◆中国人の「日本に対する感情は、やや好転しはじめている」が、日本人の「中国に対する感情は、好転しはじめるところまではいっていない」。中国人にとって現在の日本に対する感情は、「親日」でもなく、「反日」でもなく、主に「知日」である。日本に対する興味や関心が広範に広がりつつあるという状況かと思う。

❼◆中国は日本や韓国などの国とは違って、中国共産党による一党支配の国である。2000年代の胡錦濤国家主席の時代は、「日中関係」はかなり好転し始めたが、現在の習近平国家主席になってからの時代は、「反日カード」は 緩める時期はあっても絶対に放棄しないだろう。政権維持のためいつでも使える準備はしているはずだ。

❽◆日本共産党の「外交・安保」政策には、「対中国研究」の蓄積や「中国研究の人材」がとても弱いと感じている。このためか、今回の「米朝首脳会談」に関しても手放しの「絶賛」だけで、中国の動きなどの「懸念」は何らも表明されていない。これだけでは、日本の国民が今感じている不安を少なくする政策とはならないだろう。「米中」の両国に対してどのような外交・安保政策を基本的にとり、具体的にはどうそれを進めていくのか。このことを国民的にも理解しやすいように、党内論議を深めていく必要があるのだが‥‥。党内論議を深めて、現在のアジア情勢を踏まえたうえでの「新しい安保・外交」政策を策定することを期待する。

❾「働き方法案」に関して、自民党を中心とした公明党・希望の党・維新の会・国民民主党の賛成により法案成立の見通しとなった。日本共産党と立憲民主党は反対している。非正規雇用の問題など、日本の人々にとってこの問題は「超重要な」政治的問題である。およそ、政治の問題として重要なことは2つだ。一つは「日本人の多くが、安心して働ける(正規雇用の拡大)」環境を政治がつくること」、そして二つ目は「外交・安保」の問題だ。この一つ目の正規雇用の問題に関して、国民の立場で真面目に取り組んでいるのは「日本共産党と立憲民主党」ぐらいしかないという状況だ。

 このことは、「日本共産党や立憲民主党」が国民の立場で頑張っているなあと感じることだ。だからこそ、「外交・安保」の問題でも国民が希望をもち納得もできる政策を具体化し、国民に示すべきだ。(※日本共産党の党員の人たちに、このような意識をもっと持ってもらいたいと思っている。)

※以上でこのシリーズを終ります。かなり長くなってしまいました。