7月11日(水)の午後に日本に帰国する予定だった。7月3日頃に、フィリピンの東海上で発生した熱帯性低気圧が台風8号となったことがニュースで知らされた。かすかな不安が芽生えた。「この台風は、どのような進路をとるか?いつごろ東シナ海の沖縄や九州、そして台湾や中国大陸などに到達するのか?」。日が経つごとに不安は大きくなり始めた。7月11日(水)の午後1時35分福州発予定の厦門航空・福州―関西空港便にはどのような影響がでるのか?
6月中旬から10月中旬にかけて、フィリピン東海上で発生した台風の多くは東シナ海を北西に進み、沖縄の南海上付近で北西からの偏西風に圧されて進路を北方又は北東にカーブすることが多い。この4カ月間の東シナ海、とりわけ沖縄周辺は「台風銀座」ともいわれる台風の通り道だ。だからこの時期に福州―関西を結ぶ飛行機航路を利用する場合、常に台風の発生や接近に心配させられる。
今回の台風8号は7月11日の便には最悪のコースをとることとなった。この台風8号は中国では「妈利亚(マリヤ)」と命名されていた。あの女性の名前である。日本のNHKでは、「過去数回しかない超大型台風」と報道されていた。やさしそうないイメージの女性の名前とはそぐわない台風のようだった。マリア台風は、11日の昼頃に福州付近に上陸することが報道されたのは9日の夕方、飛行機の離陸予定時間とほぼドンピシャだった。「ああ、これは欠航になる確率99%以上だな‥‥‥」と諦めた瞬間だった。そうなると、次はいつ日本に帰国できるのか、11日の飛行機に代わる航空便を取得することの難しさが頭をよぎる。
10日には、福州市内の学校や大学などは休校となることが発表された。日本のように「○○警報が出されたら休校となる」というような取り決めは中国にはないので、あらゆる休校措置の決定は、中国共産党のその地方自治政府の指示によるものとなる。日本人は台風を始終経験しているので「台風に対しては慣れっこ」になっているが、中国大陸に台風が上陸する可能性はかなり少ない。だから、台風が上陸しそうになると「大騒ぎ」になる。特に福建省は東に台湾があり防波堤となるのでなおさらだ。(台湾に上陸したあとは勢力が弱くなる)
11日の昼前に予想通り福州付近に台風は上陸した。風がかなり強く、雨も強く降る。アパートの8階の部屋から外を見ていると、風に巻き上げられたゴミがたくさん空中に舞っていた。ここ福州も路上にポイ捨てゴミが実に多く散乱しているからだ。この日は一日中、外に出るのは危険だった。台風の影響で外気温が冷やされ、1カ月ぶりくらいに少し涼しい一日となった。この台風のためにこの日帰国はできなかったが、広島・岡山・愛媛など西日本の広域にわたった「大水害(雨)」のさ中だけに、この台風が日本列島の方に向かわなくてよかっとも思った。
苦労してようやく13日(金)の厦門航空便で日本に帰れるメドがたったのが、12日(木)の午後4時ころだった。電子チケットが送られてきた。胸をなでおろした。この日12日の午後6時に、「上野一番」という日本風居酒屋に同僚の鈴木さんと行った。この店は福建師範大学から近いところにあるのだが、7月上旬に偶然に見つけた店だった。鈴木さんは13日に福州―成田間の直行便で日本に帰国予定だった。福建師範大学から歩いて20分ほどのところに「引っ越し」をしたばかりだった。9月から福建師範大学の「国際交流学部」に入学し、留学生として中国語を学ぶ予定だ。「引っ越し祝い」と「帰国祝い」を兼ねて乾杯をした。
13日(金)の午後2時すぎに30分遅れで関空行の飛行機が離陸した。実はこの日の午後2時(中国時間午後1時)に、ある発表がされる時刻だった。今年の6月に閩江大学を卒業した沈欽慧さんの立命館大学大学院の合否発表だった。彼女学年で最も優秀な学生だった。7月1日には、日本の立命館と中国を結ぶインターネットテレビ電話を通じて、立命館の教員2人との20分間あまりの面接があった。<合否はインターネットを通じて行われる13日午後2時(中国時間午後1時)予定だった。>
3時間あまりのフライトを経て関空に午後6時ころに到着した。中国の携帯電話を見たら、沈さんからのメール受信記録(中国時間午後1時半)が入っていた。しかし、ここはもう日本なのでメールを開けることはできなかった。「合格しました」というメール内容だろうか? 自宅に午後9時頃に到着し、パソコンを起動させ、Eメールを開示したら、沈さんからの「合格できました!」と喜びのメッセージが入っていたので安心した。
7月18日(水)、日本に帰国して5日目、新しく台風9号と熱帯低気圧が発生したと伝えられた。台風は7月・8月・9月には、ほぼ10日間に一度の割合で発生し、東シナ海を発達しながら通過している。7月に中国から日本に帰国する際や、再び8月下旬に中国に戻る際の飛行機利用は常に台風に悩まされる。
◆2017年 中国電子書籍ベストセラー10が、インターネット経由の日本のテレビで7月12日に報道されていた。それによると‥。
1位『三体全集』(劉慈欣・中国)、2位『解憂雑貨店』(東野圭吾・日本)、 3位『探集全集』(アーサー・コナン・ドイル・英国)、4位『人民的名義』(周梅森・中国)、‥‥、6位『人間失格』(太宰治・日本)、‥‥、9位『情人』(渡辺淳一・日本)、‥‥。日本人作家の東野・太宰・渡辺の3人もが入っている。この傾向は、この4〜5年続いている。太宰の人間失格がベストセラー10に入る中国社会へと変貌を遂げてきている一つの結果でもあった。