特別講座「日本映画名作で綴る日本の社会、歴史・文化」の講座第二回目。この回は新海誠の作品について説明をしたり、アニメ映画『秒速5センチメートル』を全編鑑賞してもらう講座内容だった。新海誠は、昨年に『君の名は。』を公開し、日本でも中国でも、世界的に大ヒットとなった。私は彼の作品の中では、『秒速5センチメートル』と『言の葉の庭』(ことのはのにわ)が最も優れていると思っている。日本のアニメーションは、手塚治作品『鉄腕アトム』などから始まって、さまざまな作家の作品を生んだ。そして、大人も楽しめる宮崎駿の作品群へと到達した。
新海誠も当初は宮崎駿の作品の影響を強く受けた作品を発表していたが、その後、宮崎駿作品の影響を抜け出して、彼独自の作品を発表し始めている。宮崎駿の作品を「和洋(欧)折衷」の世界・画像としたら、新海誠独自の上記の作品は「和」の世界・画像である。それは、「光と影」のコントラストを和的に又はアジア的に表現していると思う。宮崎駿の作品群は「光」的な世界・画像であると思う。どちらの優劣は比較できるものではないが、新海誠の作品は、日本やアジア的だ。
『詩季織々』(しきおりおり)という、日本と中国の若手監督たちが製作したアニメ映画が、今年の夏に日本と中国で公開されるということを「特別講座」の2回目では学生たちに紹介した。日本人監督1人と中国人監督2人の3作品がセットになっている(3話)作品である。彼ら3人ともに、新海誠作品の影響を強くもっている若手監督たちのようだ。その3つ(中国の3都市を舞台にした)を紹介したい。今夏、私も機会があればぜひ見たいと思っている。
①『上海恋』監督:李(リ・ハオリン) ※中国「上海」が舞台
②『小さなファッションショー』監督:竹内良貴 ※中国「広州」が舞台
③『陽だまりの朝食』監督:易小星(イ・シャオシン)
「中国の3都市を舞台に、大人になった若者たちの、失いたくない大切な思い出を胸に 過去と今を紡いだ 珠玉の青春アンソロジー」の3作品で構成されている『詩季織々』。この作品は、とりわけ激しく変わりゆく中国社会で生きる今の若者たちにとっては特に、また日本社会でも感動を広げて共感できる映画なのかもしれないかなと思っている。
◆2018年夏公開。公開劇場は、「テアトル新宿」「シネ・リーブル池袋」「他」で公開となっていた。(制作:「フィルム・パートナーズ」)