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堤卓の弁理士試験情報

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審査の進め方(その2) (18.6.1)

2006-06-01 08:50:50 | Weblog
特許実用新案審査基準
審査の勧め方

6.「最後の拒絶理由通知」に対して補正がされたときの審査
 「最後の拒絶理由通知」に対して補正がされたときは、「最後の拒絶理由通知」とすることが適当であったことを確認した後、17条の2第3項から5項の規定に基づいて、補正が適法になされているか否かを検討する。適法になされていない補正は却下の対象となる(53条)。

6.1 「最後の拒絶理由通知」とすることが適当であったかどうかの検討
 まず、意見書等における出願人の主張も勘案して、「最後の拒絶理由通知」とすることが適当であったかどうかを再検討する。

(1)「最後の拒絶理由通知」とすることが適当であった場合
 「最後の拒絶理由通知」とすることが適当であった場合は、補正が適法になされているかどうかを検討する(6.2参照) 。

(2)「最後の拒絶理由通知」とすることが不適当であった場合
 「最後の拒絶理由通知」とすることが不適当であったときには、53条を適用することができない。
 したがって、補正却下の決定を行うことなく、補正を受け入れることとなる。
 そして、補正後の出願に対し、先に通知した拒絶理由が解消していない場合であっても、ただちに拒絶査定をすることなく、再度「最初の拒絶理由通知」を行う。
 また、補正によって通知することが必要となった拒絶理由のみを通知する場合であっても、「最後の拒絶理由通知」とせずに、再度「最初の拒絶理由通知」とする。

(留意事項)
 ただし、「最初の拒絶理由通知」とすべきであったことを出願人が主張し、それを前提に補正をしていると認められるものについては、当該拒絶理由は「最初の拒絶理由通知」であったものとして取り扱う。すなわち、拒絶理由が解消していない場合には、拒絶査定をし、補正によって通知することが必要となった拒絶理由のみを通知する場合には、「最後の拒絶理由通知」とする。

6.2 補正の検討
 「最後の拒絶理由通知」とすることが適当であった場合には、それに対してなされた補正が、17条の2第3項から5項の規定に違反していないかどうかについて検討し、違反していると認められた場合には、決定をもって当該補正を却下しなければならない(53条)。

6.2.1 却下の対象となる補正
(1)新規事項を追加する補正(17条の2第3項違反)
 「最後の拒絶理由通知」に応答する補正であって、
① 新たに新規事項を追加する補正。
② 「最後の拒絶理由通知」で指摘した新規事項が含まれている補正。

(留意事項)
 「最後の拒絶理由通知」をする際に新規事項が存在していたが、それについて拒絶理由を通知していなかった場合は、補正がその新規事項を含んでいたとしても、当該補正を却下することなく受け入れ、新規事項が追加されている旨の拒絶理由を通知する。

(2) 目的外の補正(17条の2第4項違反)
 特許請求の範囲についてする補正であって、次の事項のいずれをも目的としないもの(17条の2第4項各号)。
a.請求項の削除(1号)
b.特許請求の範囲の減縮(補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明となるように請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに限る。以下「請求項の限定的減縮」という。2号)
c.誤記の訂正(3号)
d.明りょうでない記載の釈明(拒絶理由に示された事項についてするものに限る。4号)

(留意事項)
 17条の2第4項の規定は、迅速な権利付与の実現及び出願間の公平の観点から、既になされた審査結果を有効に活用して審査を進められるようにするために設けられたものであり、これを満たしていないことが後に認められた場合であっても、特許を無効とするような実体的な瑕疵があるわけでないので、無効理由とはされていない。
 したがって、4項の規定は、既に行った審査結果を有効に活用して審査を迅速に行うことができる場合において、本来保護されるべき発明についてまで、必要以上に形式的に運用することがないようにする。

(3)独立特許要件を満たさない補正(17条の2第5項違反)
 請求項の限定的減縮の補正であって、補正後の発明が独立して特許を受けられないもの。
 ここで、限定的減縮の補正がなされた請求項に係る発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるか否かの判断において適用する規定は、以下のものに限ることとする。
 29条、29条の2、32条、36条4項1号又は6項、39条1項から4項

(留意事項)
独立特許要件を満たさない場合とは、
()請求項の限定的減縮の補正によっても、先の「最後の拒絶理由通知」で指摘した上記規定に基づく拒絶理由が依然として解消していない場合だけでなく、
()請求項の限定的減縮の補正により、補正前の請求項に対して指摘した拒絶理由は解消されたが、補正後の発明について上記規定に基づく新たな拒絶理由が発見された場合もこれに該当する。

6.2.2 補正の適否の検討手順

(1)「最後の拒絶理由通知」に対する補正により、明細書、特許請求の範囲又は図面に新規事項が追加されているかどうかを判断する。特許請求の範囲については、請求項ごとに新規事項の有無を判断する。

(2)上記(1)の判断の結果、新規事項が追加された請求項については、17条の2第4項各号及び5項に該当するかどうかの判断は行わない。

(3)新規事項が追加されていないその他の請求項について、更に、各請求項の補正が、17条の2第4項1号から4号に規定する事項を目的とするものかどうかを判断する。

(4)上記(3)の17条の2第4項1号から4号についての判断の結果、同条4項2号(限定的減縮)に該当する補正がされた請求項がある場合には、更に同条5項の要件(独立特許要件)を満たすものかどうかを判断する。

(5)上記(1)から(4)に従って判断した結果、補正の制限に違反していると判断された補正事項があれば、そのすべてについて理由を示して補正却下の決定をする。

(説明)
 出願人が審判請求時に適切な補正を行うことができるようにするため、却下に当たってはそのすべての理由を示すことが必要である。

6.2.3 独立特許要件違反で補正を却下する際の留意事項

(1)限定的減縮の補正がなされた請求項に係る発明が、29条、29条の2又は39条の規定により特許を受けることができないとき

①補正却下に際しては、「最後の拒絶理由通知」で引用した先行技術を引用することを原則とする。
 ただし、補正により請求項が限定されたために新たな先行技術を引用することは差し支えない。

②「最後の拒絶理由通知」で引用しなかった先行技術のみを引用して、特許を受けることができない理由を示して補正を却下した場合には、「最後の拒絶理由通知」で引用した先行技術が適切でないこともあるので、再度、「最後の拒絶理由通知」の内容が妥当であって維持できるものであるかどうかを検討する。

③補正却下の決定にあたっては、限定的減縮の補正がなされ、かつ、独立特許要件を満たさないと判断された請求項のすべてについて、却下すべき理由を示す。

(2)限定的減縮の補正がなされた発明について、36条に規定する要件を満たしていないとき
 限定的減縮の補正がなされた発明に関し、明細書、特許請求の範囲又は図面に依然として記載不備がある場合、又は補正により新たな記載不備が生じた場合は、36条の規定の違反を理由に、17条の2第5項及び53条を適用し、補正を却下する。(ただし、補正前から36条違反の拒絶理由が存在していたにもかかわらず、それを通知していなかった場合は、36条違反を理由に補正を却下してはならない。)

 なお、その不備が軽微であって、簡単な補正で記載不備を是正することにより、特許を受けることができると認められるときには、補正を受け入れた上で記載不備に関する拒絶理由を「最後の拒絶理由通知」として通知し、出願人に対して再補正の機会を認めることとする。

(3)17条の2第5項の適用について

 17条の2第5項は、126条5項(訂正後における特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでなければならないとの規定)を準用する規定であり、17条の2第4項2号に該当する補正(請求項の限定的減縮に相当する補正)がされた場合にのみ適用される。
 したがって、補正がされていない請求項に係る発明、又は、誤記の訂正(3号)もしくは明りょうでない記載の釈明(4号)に相当する補正のみがされた請求項に係る発明に対しては17条の2第5項は適用してはならない。

6.3 補正を却下する場合の出願の取扱い
 補正を却下すると、出願は補正がされる前の状態に戻るので、補正前の出願に対してなされた「最後の拒絶理由通知」で指摘した拒絶理由が適切なものであったか、再度検討する。
 「最後の拒絶理由通知」で指摘した拒絶理由の当否の再検討にあたっては、出願人が提出した意見書の内容を考慮しなければならない。

(1)「最後の拒絶理由通知」で指摘した拒絶理由が適切であって、当該拒絶理由が解消しないと認められる場合は、補正却下の決定と同時に拒絶査定をする。

(2)「最後の拒絶理由通知」で指摘した拒絶理由が適切でなく、他に拒絶理由も発見されない場合は、
補正却下の決定と同時に、特許査定をする。

(3)「最後の拒絶理由通知」で指摘した拒絶理由が適切でなかったが、他に拒絶理由を発見した場合は、補正前の出願に対し、補正却下の決定と同時に、改めて拒絶理由を通知する。
 この場合、新たな拒絶理由が「最初の拒絶理由通知」に対する補正によって通知することが必要になったものかどうか等を含め、4.3.3に示したところに照らして、「最後の拒絶理由通知」とするか「最初の拒絶理由通知」とするかを決定する。
 また、補正の却下の決定とともに拒絶理由を通知することになるので、拒絶理由の起案にあたっては、補正前の出願についての拒絶理由であることを明確にしなければならない。

6.4 補正を却下せず受け入れた場合の出願の取扱い

(1)補正後の出願について、拒絶理由が解消されていないときは、拒絶査定をする。

(2)補正後の出願について、拒絶理由が解消されており、他に拒絶理由を発見しないときは、特許査定をする。

(3)補正により拒絶理由は解消されたが、他に拒絶理由を発見したときは、改めて拒絶理由を通知する。

①「最初の拒絶理由通知」とするか、「最後の拒絶理由通知」とするかは、4.3.3 に示したところに従って判断する。

②「最後の拒絶理由通知」に対する補正を一旦受け入れた上で新たな拒絶理由を通知した場合には、先の「最後の拒絶理由通知」に対する補正が不適法なものであったことがその後に発見されたとしても、その補正を遡って却下することはしない。なお、新規事項が追加されていたことが後で判明した場合には、改めてその旨の拒絶理由を通知する。

(説明)159条1項及び163条1項の規定によれば、「最後の拒絶理由通知」に対する補正が不適法であることが拒絶査定後に発見された場合には、処理の促進の観点から、その補正を遡って却下せずそのまま許容することとされている。この趣旨に則り、「最後の拒絶理由通知」に対する補正を一旦受け入れた上で新たな拒絶理由を通知した後に、先の「最後の拒絶理由通知」に対する補正が不適法なものであったことを発見したときも、同様の取扱いとしたものである。