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2022年12月31日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の10

2022-12-31 05:29:04 | Weblog
2022年12月31日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の10

(パリ条約等による優先権主張の手続の特例)第六十条の十
1 国際意匠登録出願については、第十五条第一項において読み替えて準用する特許法第四十三条(同項において準用する同法第四十三条の二第二項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)並びに第十五条第一項において準用する同法第四十三条の二第一項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第二項の規定は、適用しない。
2 特許法第四十三条第二項から第九項までの規定は、ジュネーブ改正協定第六条(1)(a)の規定による優先権の主張をした者に準用する。この場合において、同法第四十三条第二項中「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内」とあるのは、「経済産業省令で定める期間内」と読み替えるものとする。

〔解説〕

 令和元年改正により、国際意匠登録出願についても、特許法43条2項から9項までを準用することとした。

<意匠法15条等の令和元年改正>
 平成27年以降、意匠法条約(DLT)については、予想外に各国間の意見の隔たりが大きく、令和元年現在で採択の見通しが立っていない。他方、DLTの素案に規定のある救済規定及び同時に措置する予定であった優先権書類に関する通知規定等については、出願人の利便性を向上させる観点から、早急に整備すべき事項である。特に、近年、特許と意匠との間の変更出願が増加してきており、その数が年間約100件から、多い年には約180件にのぼっていることにかんがみれば、特許制度と意匠制度の調和が重要な課題となっている。
 そこで、手続救済規定及び注意喚起のための通知規定の整備については、DLT採択に先んじて、措置を講じることとした。
 すなわち、出願人に対する救済措置を充実させるべく、意匠法において準用されていなかったパリ条約の例による優先権主張(特43条の2)、指定期間経過後の救済規定(特5条3項)、優先権主張に関する注意喚起のための通知規定等(特43条第6項及び第7項)を新たに準用するため、必要な規定を整備した。

・60条の10第1項(適用除外)

 国際意匠登録出願については、特許法43条、43条の2は準用しない旨を規定している。
 準用する必要のある規定は60条の10第2項で明記することとした。
 分かりにくい規定である。

 60条の10は、国際意匠登録出願についての優先権の主張の手続の特例を定めた規定である。
 国際意匠登録出願についての優先権の主張については、各指定締約国に対して直接行うことについてジュネーブ改正協定にはこれを妨げる規定は置かれていないが、「締約国に対する出願手続の一元化」というジュネーブ改正協定の趣旨にかんがみ、ジュネーブ改正協定の規定による国際事務局経由の手続に一元化することとしている。このため、60条の10第1項において、国際意匠登録出願については、日本国の特許庁に優先権の主張をする場合の手続の規定は適用しないこととしている。

 令和元年改正において、日本国の特許庁に優先権の主張をする場合には、意匠法15条1項において、特許法43条の2第1項(パリ条約の例による優先権主張)を新たに準用することに伴い、60条の10第1項において、国際意匠登録出願についての優先権の主張については、意匠法15条1項で準用する特許法43条の2第1項(特許法43条の3第3項において準用する場合を含む)の規定を適用しない旨を規定した。

 これに加え、特許法43条の2第1項を、意匠法15条1項において準用する特許法43条の3第3項において準用する場合についても、特許法43条の3第1項に規定するWTO加盟国にした出願に基づく優先権の主張をする場合であって、特許法43条の3第3項において準用する特許法43条の2第1項の期間徒過後の優先権の主張をする場合が想定されるが、国際出願に際して国際事務局に対して、このような優先権の主張の手続を行うことがジュネーブ改正協定第6条(1)(a)の規定によっては認められていない。
 したがって、意匠法60条の10第1項において、特許法43条の2第1項を、意匠法15条1項において準用する特許法43条の3第3項において準用する場合についても、国際意匠登録出願については適用しない旨を規定した。

 また、意匠法15条1項の改正に伴い、意匠法60条の10第1項において、意匠法15条1項で新たに準用する特許法43条6項(優先権書類に関する注意喚起のための通知規定)及び7項(書類等提出規定)を国際意匠登録出願に適用しない旨を規定すべく、所要の改正を行った。

・60条の10第2項(特43条等の準用)

<令和元年改正>
 国際意匠登録出願に係る優先権の主張についての証明書等の提出手続については、ジュネーブ改正協定には国際事務局に提出するものとされていないため、優先権書類等を日本国の特許庁に直接提出することができる。
 令和元年改正前の意匠法60条の10第2項においては、特許法43条2項から5項まで、8項及び9項については、ジュネーブ改正協定6条(1)(a)の規定による優先権の主張をした者に対して準用する旨が規定されていた。
 令和元年改正において、意匠法15条1項が改正されたので、意匠法15条1項において新たに準用する特許法43条6項及び7項についても、ジュネーブ改正協定6条(1)(a)の規定による優先権の主張をした者に対して準用するため、これらの規定を意匠法60条の10第2項において準用することとした。
 他方、意匠法15条1項で準用する特許法43条の2第1項に規定するパリ条約の例による優先権の主張は、国際出願に際して国際事務局に対して優先権の主張の手続を行うことがジュネーブ改正協定6条(1)(a)の規定によっては認められていないため、特許法43条の2第1項については、国際意匠登録出願について適用しないこととした。

<特許法43条1項の不準用>
 特許法43条1項は、国際意匠登録出願に準用しない。
 通常の意匠登録出願がパリ条約の優先権の主張を伴う場合には、15条1項において、特許法43条1項を準用しているが、国際意匠登録出願がパリ条約の優先権の主張を伴う場合には、優先権の主張の申立てについては改正協定及び規則に従うこととしているため、特許法43条1項の規定は適用しないこととした。
 国際出願においては、優先権の主張の申立ては、国際出願の願書に記載する。

<特許法43条2項~9項の準用>
 特許法43条2項から9項までは、国際意匠登録出願に準用する。
 優先権書類に関しては、改正協定及び規則に規定がないため、国内法令を適用することとしたものである。

 国際出願については、改正協定6条(1)により、パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴うことができることとされている。
 その優先権の主張は、意匠法68条4項で準用する特許法26条の規定により、特段の追加的な手続を要することなく、日本国の特許庁との関係においても適法な優先権の主張となるが、優先権書類等の提出手続については、改正協定では国際出願に伴う手続とされていないため、日本国の特許庁との関係における所要の手続規定を整備することとした。

 国際出願における優先権の主張については、各指定締約国に対して直接行うことについて、改正協定にはこれを妨げる規定は置かれていないが、「締約国に対する出願手続の一元化」という改正協定の趣旨にかんがみ、改正協定6条(1)の規定による国際事務局経由の手続に一元化することとした。
 このため、国際意匠登録出願については、日本国の特許庁に優先権の主張をする場合の手続規定(特許法43条1項)は適用しないこととした。

 さらに、意匠法15条1項で準用する特許法43条の3第2項に規定する特定国(パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国のいずれでもない国)についての優先権の主張は、国際出願に際して国際事務局に対して優先権の主張の手続を行うことが改正協定6条(1)(a)によっては認められていないため、意匠法15条1項において準用する特許法43条の3第2項は、国際意匠登録出願について適用しないこととした。

 優先権書類等の提出手続については、改正協定では国際出願に伴う手続とされていないため、優先権書類等は日本国に直接提出できることとし、優先権書類等の提出の手続に係る特許法43条2項~9項の規定を改正協定6条(1)(a)による優先権の主張をした者についても、準用することとした。

<特許法43条2項の準用>
 特許法43条2項は「前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、若しくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であつてその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。(各号略)」と規定している。
 準用する際に「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内」を「経済産業省令で定める期間内」に読み替えている。
 国際出願における優先権の主張の手続期間は、改正協定6条(1)(b)により下位規則に委任されていることから、優先権書類等の提出期間は経済産業省令に委任することとした。
 経済産業省令(意匠法施行規則12条の2)
 意匠法第六十条の十第二項の経済産業省令で定める期間は、国際公表があつた日から三月とする。
 国際意匠登録出願についての手続を開始できるのは、国際公表後であるので、優先権書類の提出期限は、国際公表の日から3月とすることとした。

<特許法43条3項の準用>
 特許法43条3項は「第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知つたときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。」と規定している。

<特許法43条4項の準用>
 特許法43条4項は「第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。」と規定している。

<特許法43条5項の準用>
 特許法43条5項は「第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。」と規定している。
 平成30年改正により、手続の簡素化等によるユーザーの利便性向上の観点から、意匠法においても、特許法43条5項を準用し、意匠登録出願に係る優先権書類のオンライン交換制度を導入することとした。
 そこで、この規定を、国際意匠登録出願にも準用することとした。

<特許法43条6項の準用>
 特許法43条6項は「特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかつたときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。」と規定している。
 令和元年改正により、意匠法15条1項において特許法43条6項を準用することとしたことから、意匠法60条の10第2項においても準用することとした。

<特許法43条7項の準用>
 特許法43条7項は「前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。」と規定している。
 令和元年改正により、意匠法15条1項において特許法43条7項を準用することとしたことから、意匠法60条の10第2項においても準用することとした。

<特許法43条8項の準用>
 特許法43条8項は「第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。」と規定している。

<特許法43条9項の準用>
 特許法43条9項は「第七項又は前項の規定により第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面の提出があつたときは、第四項の規定は、適用しない。」と規定している。

<特許法43条の2の不準用>
 令和元年改正により、意匠法15条1項においては、意匠登録出願について特許法43条の2(優先期間の徒過の救済)を準用することとしたが、国際意匠登録出願については、準用しないこととした。
 改正協定6条(1)(a)においては、優先期間の徒過の例外を認めていないからである。

 改正協定 第六条 優先権
(1)[優先権の主張]
(a)国際出願には、パリ条約の締約国若しくは世界貿易機関の加盟国において又はこれらの国についてされた一又は二以上の先の出願に基づく優先権をパリ条約第四条の規定に基づいて主張する申立てを含めることができる。


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