2023年9月13日 弁理士試験 代々木塾 審判便覧38―01
審判便覧38―01 一群の請求項
1.一群の請求項
記載を訂正する請求項とその引用形式請求項(従属項)の群を「一群の請求項」という。一群の請求項となる関係は、特§120の5④及び特施規§45の4に規定されている。
「一群の請求項」を特定するには、まず、訂正前の請求項のうち、記載を訂正する請求項を特定し、次に、訂正前の引用関係において、記載を訂正する請求項を直接的又は間接的に引用する全ての引用形式請求項(従属項)を特定する。そのような引用形式請求項(従属項)は、通常、記載を訂正する請求項の訂正事項を含むことになるので、引用形式請求項(従属項)の記載の訂正の有無にかかわらず、記載を訂正する請求項と連動して訂正するものとして扱う。
例:特許請求の範囲が、請求項1と請求項1を引用する請求項2からなり、請求項1の「A」という記載を「A’」に訂正する場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する請求項1の装置。
このような場合、請求項1の記載を訂正する訂正事項によって請求項2も連動して訂正されるから、請求項1及び2が「一群の請求項」を構成する。
「一群の請求項」は、訂正前の引用関係に基づいて特定され、ある訂正事項によって連動して訂正される請求項の群によって構成される。したがって、訂正前に引用関係がある請求項であっても、訂正事項の対象とならない請求項は、「一群の請求項」を構成しないことに注意を要する。
例:特許請求の範囲が、請求項1と、請求項1を引用する請求項2と、請求項2を引用する請求項3からなり、請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する請求項1の装置。
【請求項3】Cを有する請求項2の装置。
このような場合、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって請求項3も連動して訂正されるから、請求項2及び3が「一群の請求項」を構成する。しかし、訂正事項の対象とならない請求項1は、訂正前に請求項2と引用関係があるものの、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって連動して訂正されるものではないため「一群の請求項」を構成しない。
以上のようにして特定された「一群の請求項」が複数あり、共通の請求項を有する(範囲が一部重複する)「一群の請求項」が2つ以上ある場合、これらの「一群の請求項」は組み合わされて、1つの「一群の請求項」となる(特施規§45の4)。
例:特許請求の範囲が、請求項1と、請求項2と、請求項1又は2を引用する請求項3からなり、請求項1の「A」という記載を「A’」に訂正する訂正事項1と、請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する訂正事項2がある場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する装置。
【請求項3】Cを有する請求項1又は2の装置。
このような場合、上記の説明のとおり、請求項1及び3が「一群の請求項」を構成するとともに、請求項2及び3も「一群の請求項」を構成する。
このとき、共通する請求項3を有するこれらの「一群の請求項」は組み合わされて、請求項1~3が1つの「一群の請求項」になる。
2.別の訂正単位とする求め
請求項間の引用関係を解消する訂正(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正)、引用形式請求項(従属項)を削除する訂正又は複数の請求項を引用している請求項について引用請求項の数を減少する訂正等がされれば、その訂正後に請求項間の引用関係が解消されることがある。
平成23年法改正により、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正(特§120の5②四、§126①四、§134の2①四)が導入された趣旨を踏まえ、訂正前の引用関係において「一群の請求項」を構成する特定の請求項について引用関係を解消する訂正等をする場合は、別途、所定の求めをすることにより当該特定の請求項に係る訂正事項を「一群の請求項」とは別の訂正単位として扱うこととした。
このような求めを「別の訂正単位とする求め」と呼ぶ。
特定の請求項に係る訂正事項について、「別の訂正単位とする求め」をすることにより、当該特定の請求項に係る訂正事項は、その他の「一群の請求項」に係る訂正の認否の判断の影響を受けずに、独立して訂正が認められ得る。このように、「別の訂正単位とする求め」がされた当該特定の請求項は、その他の「一群の請求項」に係る訂正とは別の訂正単位として取り扱われることから、当該特定の請求項に関して、「一群の請求項」に影響されず、審決等が確定することになる。
例:特許請求の範囲が、請求項1と請求項1を引用する請求項2からなり、請求項1の「A」という記載を「A’」に訂正する訂正事項1と、請求項1を引用する請求項2を独立形式請求項(独立項)に訂正する訂正事項2(引用関係を解消する訂正)と、請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する訂正事項3があり(訂正事項2、3は、分けずに1つの訂正事項とされることもある)、訂正事項1が新規事項の追加等に当たり訂正要件に違反する場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する請求項1の装置。
訂正事項1:請求項1の「A」を、「A’」とする訂正
訂正事項2:請求項1を引用する請求項2を独立項とする訂正
訂正事項3:請求項2の「B」を、「B’」とする訂正
請求項2に係る訂正事項2及び3について「別の訂正単位とする求め」がない場合、請求項1、2は一群の請求項であるため、訂正事項2及び3も訂正事項1と一体の訂正事項として取り扱われる結果、訂正が認められず、また、審決等は、一群の請求項を構成する請求項1、2について一体的に確定する。
他方、「別の訂正単位とする求め」がある場合は、訂正事項2及び3が訂正要件を満たすときは、請求項2に係る訂正事項が、「一群の請求項」の他の請求項とは別の訂正単位として扱われるため、訂正事項2及び3は訂正事項1の判断とは独立して、その訂正が認められることになり、また、審決等は、請求項1とは別に独立して確定する。
ただし、訂正事項1がそれ自体では認められる場合であっても、請求項2に係る訂正事項3が認められなければ、請求項2に係る訂正事項2も一体的に認められず、その結果、請求項2についての「別の訂正単位とする求め」も認められなくなる。
さらに、「別の訂正単位とする求め」が認められないので、請求項2と共に「一群の請求項」を構成する請求項1に係る訂正事項1も一体的に認められないことになる。
「別の訂正単位とする求め」の効果
この「別の訂正単位とする求め」は、特許権者の求めに応じ、「一群の請求項」の例外として認めるものであるため、訂正審判の請求書又は無効審判等の訂正請求書に明示的に記載されている必要がある。すなわち、引用関係を解消する訂正等をした場合であっても、「別の訂正単位とする求め」が行われていないときは、「一群の請求項」のまま、一体で認否の判断が望まれているものと解する。
3.手続上の留意点
「別の訂正単位とする求め」は、訂正審判請求書、訂正請求書の「請求の理由」に記載する(→38―04の2.(3)ウ)。
別の訂正単位とする求めについて不備がある場合、審判長は、特許権者に対し相当の期間(標準30日→25―01.5)を指定して補正を命じる
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審判便覧38―01 一群の請求項
1.一群の請求項
記載を訂正する請求項とその引用形式請求項(従属項)の群を「一群の請求項」という。一群の請求項となる関係は、特§120の5④及び特施規§45の4に規定されている。
「一群の請求項」を特定するには、まず、訂正前の請求項のうち、記載を訂正する請求項を特定し、次に、訂正前の引用関係において、記載を訂正する請求項を直接的又は間接的に引用する全ての引用形式請求項(従属項)を特定する。そのような引用形式請求項(従属項)は、通常、記載を訂正する請求項の訂正事項を含むことになるので、引用形式請求項(従属項)の記載の訂正の有無にかかわらず、記載を訂正する請求項と連動して訂正するものとして扱う。
例:特許請求の範囲が、請求項1と請求項1を引用する請求項2からなり、請求項1の「A」という記載を「A’」に訂正する場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する請求項1の装置。
このような場合、請求項1の記載を訂正する訂正事項によって請求項2も連動して訂正されるから、請求項1及び2が「一群の請求項」を構成する。
「一群の請求項」は、訂正前の引用関係に基づいて特定され、ある訂正事項によって連動して訂正される請求項の群によって構成される。したがって、訂正前に引用関係がある請求項であっても、訂正事項の対象とならない請求項は、「一群の請求項」を構成しないことに注意を要する。
例:特許請求の範囲が、請求項1と、請求項1を引用する請求項2と、請求項2を引用する請求項3からなり、請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する請求項1の装置。
【請求項3】Cを有する請求項2の装置。
このような場合、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって請求項3も連動して訂正されるから、請求項2及び3が「一群の請求項」を構成する。しかし、訂正事項の対象とならない請求項1は、訂正前に請求項2と引用関係があるものの、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって連動して訂正されるものではないため「一群の請求項」を構成しない。
以上のようにして特定された「一群の請求項」が複数あり、共通の請求項を有する(範囲が一部重複する)「一群の請求項」が2つ以上ある場合、これらの「一群の請求項」は組み合わされて、1つの「一群の請求項」となる(特施規§45の4)。
例:特許請求の範囲が、請求項1と、請求項2と、請求項1又は2を引用する請求項3からなり、請求項1の「A」という記載を「A’」に訂正する訂正事項1と、請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する訂正事項2がある場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する装置。
【請求項3】Cを有する請求項1又は2の装置。
このような場合、上記の説明のとおり、請求項1及び3が「一群の請求項」を構成するとともに、請求項2及び3も「一群の請求項」を構成する。
このとき、共通する請求項3を有するこれらの「一群の請求項」は組み合わされて、請求項1~3が1つの「一群の請求項」になる。
2.別の訂正単位とする求め
請求項間の引用関係を解消する訂正(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正)、引用形式請求項(従属項)を削除する訂正又は複数の請求項を引用している請求項について引用請求項の数を減少する訂正等がされれば、その訂正後に請求項間の引用関係が解消されることがある。
平成23年法改正により、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正(特§120の5②四、§126①四、§134の2①四)が導入された趣旨を踏まえ、訂正前の引用関係において「一群の請求項」を構成する特定の請求項について引用関係を解消する訂正等をする場合は、別途、所定の求めをすることにより当該特定の請求項に係る訂正事項を「一群の請求項」とは別の訂正単位として扱うこととした。
このような求めを「別の訂正単位とする求め」と呼ぶ。
特定の請求項に係る訂正事項について、「別の訂正単位とする求め」をすることにより、当該特定の請求項に係る訂正事項は、その他の「一群の請求項」に係る訂正の認否の判断の影響を受けずに、独立して訂正が認められ得る。このように、「別の訂正単位とする求め」がされた当該特定の請求項は、その他の「一群の請求項」に係る訂正とは別の訂正単位として取り扱われることから、当該特定の請求項に関して、「一群の請求項」に影響されず、審決等が確定することになる。
例:特許請求の範囲が、請求項1と請求項1を引用する請求項2からなり、請求項1の「A」という記載を「A’」に訂正する訂正事項1と、請求項1を引用する請求項2を独立形式請求項(独立項)に訂正する訂正事項2(引用関係を解消する訂正)と、請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する訂正事項3があり(訂正事項2、3は、分けずに1つの訂正事項とされることもある)、訂正事項1が新規事項の追加等に当たり訂正要件に違反する場合を仮定する。
【請求項1】Aを有する装置。
【請求項2】Bを有する請求項1の装置。
訂正事項1:請求項1の「A」を、「A’」とする訂正
訂正事項2:請求項1を引用する請求項2を独立項とする訂正
訂正事項3:請求項2の「B」を、「B’」とする訂正
請求項2に係る訂正事項2及び3について「別の訂正単位とする求め」がない場合、請求項1、2は一群の請求項であるため、訂正事項2及び3も訂正事項1と一体の訂正事項として取り扱われる結果、訂正が認められず、また、審決等は、一群の請求項を構成する請求項1、2について一体的に確定する。
他方、「別の訂正単位とする求め」がある場合は、訂正事項2及び3が訂正要件を満たすときは、請求項2に係る訂正事項が、「一群の請求項」の他の請求項とは別の訂正単位として扱われるため、訂正事項2及び3は訂正事項1の判断とは独立して、その訂正が認められることになり、また、審決等は、請求項1とは別に独立して確定する。
ただし、訂正事項1がそれ自体では認められる場合であっても、請求項2に係る訂正事項3が認められなければ、請求項2に係る訂正事項2も一体的に認められず、その結果、請求項2についての「別の訂正単位とする求め」も認められなくなる。
さらに、「別の訂正単位とする求め」が認められないので、請求項2と共に「一群の請求項」を構成する請求項1に係る訂正事項1も一体的に認められないことになる。
「別の訂正単位とする求め」の効果
この「別の訂正単位とする求め」は、特許権者の求めに応じ、「一群の請求項」の例外として認めるものであるため、訂正審判の請求書又は無効審判等の訂正請求書に明示的に記載されている必要がある。すなわち、引用関係を解消する訂正等をした場合であっても、「別の訂正単位とする求め」が行われていないときは、「一群の請求項」のまま、一体で認否の判断が望まれているものと解する。
3.手続上の留意点
「別の訂正単位とする求め」は、訂正審判請求書、訂正請求書の「請求の理由」に記載する(→38―04の2.(3)ウ)。
別の訂正単位とする求めについて不備がある場合、審判長は、特許権者に対し相当の期間(標準30日→25―01.5)を指定して補正を命じる
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