堤卓の弁理士試験情報

弁理士試験に関する情報を提供します。

部分意匠の意匠登録出願における新規性の判断(18.4.24)

2006-04-24 23:19:19 | Weblog
 部分意匠の意匠登録出願における新規性の判断

 部分意匠の意匠登録出願の審査において、引用意匠との関係で新規性が否定されるのは、以下の4つの要件を満たした場合となります。

・第1要件
 意匠登録出願の願書の「意匠に係る物品」の欄に記載された物品と、引用意匠に係る物品とを対比した場合に、両者が同一又は類似の関係にあること。
 したがって、意匠に係る物品が完成品で、引用意匠が部品の場合には、用途及び機能がいずれも異なり、物品が非類似となりますので、この第1要件を満たさないこととなります。

・第2要件
 意匠登録を受けようとする部分と、引用意匠における対応部分とを対比した場合に、部分の用途及び機能が同一又は類似の関係にあること。
 部分の用途及び機能が異なる場合は、この第2要件を満たさないこととなります。

・第3要件
 意匠登録を受けようとする部分と、引用意匠における対応部分とを対比した場合に、部分の形態が同一又は類似していること。
 したがって、部分の形態が非類似の場合には、この第3要件を満たさないこととなります。

・第4要件
 意匠登録を受けようとする部分と、引用意匠における対応部分とを対比した場合に、部分の全体における位置、大きさ、範囲が同一であるか相違があるとしてもありふれていること。
 部分の位置、大きさ、範囲が大きく異なる場合には、この第4要件を満たさないこととなります。

 なお、部分意匠に係る物品が完成品であって、引用意匠が部品の場合には、新規性は否定することはできませんが、創作が容易であるとして意匠法3条2項により拒絶される場合はあります。創作容易と新規性の判断手法は異なりますので、注意が必要です。

 

実用新案法12条の解説(18.4.24)

2006-04-24 09:25:49 | Weblog
実用新案法12条の解説

第1項
 「実用新案登録出願又は実用新案登録については」とありますので、評価の請求は、出願が特許庁に係属している場合でも、できることを意味します。
 「何人」もとありますので、本人のほか、他人も評価の請求をすることができます。
 実用新案法2条の5第2項において特許法14条を準用していますが、評価の請求については特に読み替えていません。そうすると、実用新案登録出願が共同出願である場合や、実用新案権が共有に係る場合であっても、各共有者は、単独で評価の請求をすることができるといえます。ただし、代表者を定めて特許庁に届け出たときは、代表者のみが評価の請求をすることができます。
 評価の対象となるのは、(1)実用新案法3条1項3号(新規性)、(2)実用新案法3条1項3号との関係における実用新案法3条2項(進歩性)、(3)実用新案法3条の2(拡大先願)、(4)実用新案法7条1項、2項、3項、7項(先願)に限定されています。審査官が判断しやすいように、引用例が文献等である場合に限定しています。
 複数の請求項がある場合には、請求項ごとに請求することができます。請求人が評価の対象となる請求項を任意に選択することができます。

第2項
 評価の請求は、実用新案権が消滅した後でも、することができます。ただし、無効審判により無効にされた後は、評価の請求をすることはできません。
 なお、実用新案権の消滅(無効審決確定を含む)については、実用新案法50条の2により、請求項ごとに実用新案登録がされたものとみなされます。したがって、複数の請求項のうち一部の請求項について無効審決が確定した場合においては、無効にされていない請求項について、評価の請求をすることができることになります。
 後発的無効理由(実37条1項6号)により無効審決が確定した場合については、条文上は明確に規定されていません。短答式試験で出題された場合には解答が難しいと思います。私見ですが、実用新案権が有効に存続している期間がありますので、その期間内における第三者の侵害に対して損害賠償請求をすることができる場合があります。この場合には、評価書を提示した警告が必要となります(実29条の2)。そうであるならば、評価の請求を認める実益があると思います。

第3項
 実用新案登録に基づく特許出願(特46条の2第1項)をした後は、評価の請求をすることができません。この点は、注意が必要です。

第4項
 評価書は審査官が作成します。

第5項
 特許法47条2項が準用されています。すなわち、審査官の資格は政令で定めることとしています。
 なお、特許法48条は準用していません。したがって、評価書の作成において、審査官が除斥されることはありません。

第6項
 評価の請求は、取り下げることができません。
 
第7項
 他人から評価の請求があった場合において、本人が実用新案登録に基づく特許出願(特46条の2第1項)をした場合には、当該他人の評価の請求はされなかったものとみなされます。この場合は、特許庁長官はその旨を請求人に通知しなければならないこととされています。
 なお、かっこ書は、実用新案登録出願中に他人から評価の請求があった後、実用新案登録がされて実用新案登録に基づく特許出願をした場合も含まれることを明記しています。