堤卓の弁理士試験情報

弁理士試験に関する情報を提供します。

TRIPS協定59条・60条(18.4.27)

2006-04-27 15:29:52 | Weblog
 第59条 救済措置

 本条は、権限のある当局は、侵害物品の廃棄又は処分を命ずる権限のある旨を規定しています。

 本条第2文は、不正商標商品については、単なる積戻しを認めることはできない旨が規定されています。積戻しを認めることは、侵害商品の他国への再流入となるからです。


 第60条 少量の輸入

 本条は、旅行者の手荷物に含まれるか又は小型貨物で送られる少量の非商業的な性質の物品については、上述の規定の適用から除外することができる旨が規定されています。

 本条の適用を受けるためには、物品が少量であること、物品が非商業的な性質であることが必要とされます。

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TRIPS協定57条・58条(18.4.27)

2006-04-27 15:27:49 | Weblog
 第57条 点検及び情報に関する権利

 本条は、権利者の保護のために、税関に留置された物品を権利者が点検するための十分な機会を確保する義務を規定しています。

 「秘密の情報の保護を害することなく」とありますので、例えば営業秘密が含まれている場合には、この規定は適用されないことになります。

 まず、権利者が、点検するために十分な機会を得ることができます。

 次に、本条第2文により、輸入者にも、点検するために十分な機会を与えることを義務づけています。

 本条第3文は、本案について肯定的な決定が行われた場合には、当該物品の荷送人、輸入者及び荷受人の名称及び住所と当該物品の数量を権利者に通報することができる旨を規定しています。


 第58条 職権による行為

 本条は、職権で通関停止を行う場合の手続について規定しています。

 職権で通関停止を行う場合には、⒜権限のある当局は情報の提供を権利者に求めることができるます。
 ⒝輸入者及び権利者は、速やかにその停止の通知を受けることができます。輸入者が権限のある当局に対し当該停止に関して異議を申し立てた場合には、当該停止については、第55条に定める条件を準用します。
 ⒞加盟国は、措置が誠実にとられ又はとることが意図された場合に限り、公の機関及び公務員の双方の適当な救済措置に対する責任を免除します。

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TRIPS協定56条(18.4.27)

2006-04-27 15:25:30 | Weblog
 第56条 物品の輸入者及び所有者に対する賠償

 本条は、物品の不法な留置又は55条の規定に基づいて解放された物品の留置によって生じた損害の賠償を求めることができる旨を規定しています。

 損害賠償の請求をすることができる者は、留置された物品の輸入者、荷受人、所有者です。

 損害賠償の請求がされる者は、物品の解放の停止を申し立てた申立人です。
 申立人の過失については何も言及していませんので、各国の国内法に従うことになります。わが国では、民法709条に過失責任主義が規定されているので、申立人に過失がなかった場合には、損害賠償責任は生じないこととなります。

 関係当局とは、わが国では裁判所になります。

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TRIPS協定55条の解説(18.4.27)

2006-04-27 15:20:50 | Weblog
第55条 物品の解放の停止の期間

 本条は、申立人が通関停止の通知の送達を受けた日から10執務日(延長された場合には20執務日)を超えない期間内に、税関が、本案の手続が被申立人以外の者によって開始されたこと、又は正当権限を有する当局が物品の解放の停止を延長する暫定措置をとったことについて通報を受けなかった場合には、当該物品は解放しなければならない旨を規定しています。
 逆にいいますと、10執務日(延長された場合には20執務日)以内に、本案の手続が開始されました、又は輸入禁止の仮処分の決定がされました、という通報を税関が受けた場合には、当該物品を解放しないことになります。そのような通報を受けない場合には、当該物品の解放を停止してはいけないという義務を解しています。

 本条ただし書は、その他の理由によって輸入禁止や輸出禁止の対象となっている物品については解放しなくてよい旨を規定しています。

 本条第3文は、本案の手続が開始された場合には、被申立人に、意見を述べる機会を与えることを義務づけています。

 本条第4文は、50条6項の規定を適用する旨を規定しています。したがって、申立人が所定の期間内に本案の手続を開始しない場合において、被申立人が申し立てた場合には、50条1項及び2項の規定に基づいて行われる暫定措置は、取り消され又は効力を失うことになります。

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TRIPS協定52条~54条の解説(18.4.27)

2006-04-27 11:32:48 | Weblog
TRIPS協定52条~54条の解説

★第52条 申立て

 本条は、権利者が通関停止措置をとることを申し立てる場合には、侵害の事実を疎明等することを義務づけたものです。

 通関停止措置の申立てを行う権利者は、権利侵害の事実を疎明しなければなりません。
 また、権利者は、通関停止措置の対象となる物品を特定できる記述を提出しなければなりません。

 権限のある当局は、申立ての受理又は不受理の結果と、権限のある当局によって決定される場合には、税関当局が措置をとる期間(通関停止の存続期間)を申立人に通知しなければなりません。


★第53条 担保又は同等の保証

 本条は、申立ての濫用を防止するための担保制度を規定しています。

☆第1項
 1項は、権限のある当局は、申立人に対して、被申立人及び権限のある当局を保護し、申立ての濫用を防止するために、十分な担保又は同等の保証を提供するよう要求することができる旨が規定されています。
 申立人の言い分のみで安易に通関停止措置を講ずることは被申立人に不当な不利益を与えるおそれがあるからです。
 なお、1項は、担保又は保証を要求することを義務づけるものではありませんので、要求するかどうかは、権限のある当局の裁量となります。

☆第2項
 2項は、意匠権や特許権等を侵害する物品の通関が、司法当局その他の独立した当局以外の権限のある当局(例えば税関長)の決定によって停止された場合には、当該物品の所有者、輸入者又は荷受人が担保を提供することを条件として、当該物品を通関させなければならない義務を課しています。
 司法当局ではない税関長の権限で誤った判断により通関停止措置がとられる場合には、被申立人が不当な不利益を受けるおそれがあるからです。
 2項ただし書は、通関させる物品はその他の理由により輸入が禁止されている物品でないことが条件となる旨を規定しています。


★第54条 物品の解放の停止の通知

 本条は、各加盟国に対して、通関停止措置をとる場合には迅速に通知する義務を課しています。

 すなわち、輸入者及び申立人は、第51条の規定による物品の解放の停止について速やかに通知を受ける旨が規定されています。

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TRIPS協定第51条(18.4.27)

2006-04-27 10:46:50 | Weblog
TRIPS協定第51条 税関当局による物品の解放の停止

 本条は、加盟国に対して、通関停止措置をとるための手続を定める義務を課すものです。

 開発途上国側の要請により、通関停止措置をとるための手続は、侵害の判断が比較的容易に行うことができる、①商標権を侵害する商品と、②著作権を侵害する海賊版とに限定しています(本条第1文)。

 もっとも、加盟国は、特許権を侵害する物品等についても通関停止措置のための手続をとる自由は認められています。ただし、第4節の要件を満たすことが必要とされます(本条第2文)。

 本条の(注1)では、不正商標商品と著作権侵害物品の定義が規定されています。
 不正商標商品は、登録商標と実質同一の商標が付された商品であって、指定商品と同一の商品であることが要件とされています。したがって、類似の場合には、本条を適用する義務はないことになります。もっとも、加盟国は、類似する場合にも通関停止措置のための手続を設けることはできます。
 著作権侵害物品は、複製物であって、複製物の作成が輸入国で行われたとした場合に著作権等の侵害に該当することが要件として規定されています。

 本条の(注2)は、並行輸入品については本条を適用する義務がないことを明確にしたものです。
 もっとも並行輸入を認めない加盟国においては、並行輸入の場合にも通関停止措置のための手続を設けることは自由です。

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意匠法3条の2の解説(18.4.27)

2006-04-27 09:26:34 | Weblog
意匠法第3条の2の解説

 本条は、先願の意匠公報に掲載された意匠(創作意匠)の一部と同一又は類似の意匠は、新しい創作とはいえないため、拒絶することを規定しています。

 引用意匠は、先願(同日出願は含まない)であって、後願(審査対象)の出願後に意匠公報が発行された意匠登録出願に開示された創作に係る意匠です。

 後願(審査対象)の出願前に意匠公報が発行された場合は、意匠法3条1項2号又は3号が適用されることになります。

 意匠公報が発行されるのは、意匠権の設定の登録がされた場合(20条3項)と、同日出願で拒絶が確定した場合(66条3項)とがあります。意匠公報が発行されると創作された意匠の内容が公表されるからです。
 秘密意匠の場合には、意匠公報が発行されても創作された意匠は掲載されませんので、この段階では本項の要件を満たさないこととなります。秘密期間が経過して秘密意匠の内容が掲載されてはじめてこの要件を満たすことになります。

 本条は、新しい意匠の創作ではないとして後願に係る意匠の登録を拒絶するものですので、先願の意匠公報に掲載されたものであっても、それが創作された意匠として掲載されたものでなければ、引用例にすることはできません。
 例えば、出願に係る意匠を現した6面図以外の参考図(例えば、使用状態を示す図)に掲載されたにすぎないものは、創作された意匠として開示されているものではありませんので、引用例にはなりません。

 後願(審査対象)が部分意匠の場合には、部分意匠の類否判断の4つの基準のうち、2つのみが本条の判断基準となります。つまり、後願の意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能と、その部分の形態とを対比して、引用例の意匠の一部と同一又は類似していれば、本条の引用例となります。
 意匠に係る物品(願書に記載された物品)と、全体における位置、大きさ、範囲は、本条の判断基準にはなりません。

 先願が部分意匠の出願である場合には、意匠登録を受けようとする部分(例えば実線で現した部分)以外の部分(例えば破線で現した部分)についても引用例となります。なぜなら、破線部分についても創作されたものとして評価することが適切であるからです。

 後願の出願人が先願の出願人と同一であっても、創作者が同一であっても、本条は適用されることになります。この点は、特許法29条の2とは異なりますので、注意が必要です。

 後願の査定時に、先願について意匠公報が発行されていない場合には、後願について本条を根拠として拒絶査定にすることはできません。
 後願について意匠登録査定の謄本を送達した後に先願について意匠公報が発行された場合には、後願について意匠権の設定の登録がされた後、当該意匠登録は意匠法3条の2の規定に違反してされたものであり、意匠法48条1項1号の無効理由に該当するとして、意匠登録を無効にすることができると解されます。すなわち、特許法29条の2の適用に関する知財高裁判決と同様に取り扱うことができると解されます。


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最高裁判決平成9年7月17日

2006-04-27 08:23:56 | Weblog
著作権法の最高裁判決です。

最高裁判決平成9年7月17日(平成4年(オ)1443)

 1 著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。したがって、一話完結形式の連載漫画においては、著作権の侵害は各完結した漫画それぞれについて成立し得るものであり、著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない。

 2 このような連載漫画においては、後続の漫画は、先行する漫画と基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書を付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続の漫画は、先行する漫画を翻案したものということができるから、先行する漫画を原著作物とする二次的著作物と解される。そして、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。けだし、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付与されているためであって(同法2条1項11号参照)、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないからである。

 3 そうすると、著作権の保護期間は、各著作物ごとにそれぞれ独立して進行するものではあるが、後続の漫画に登場する人物が、先行する漫画に登場する人物と同一と認められる限り、当該登場人物については、最初に掲載された漫画の著作権の保護期間によるべきものであって、その保護期間が満了して著作権が消滅した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間がいまだ満了していないとしても、もはや著作権を主張することができないものといわざるを得ない。

 4 ところで、著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうところ(最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決)、複製というためには、第三者の作品が漫画の特定の画面に描かれた登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りるというべきである。

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