Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

キングの報酬

2021-11-02 | 映画(か行)


◼️「キングの報酬/Power」(1986年・アメリカ)

監督=シドニー・ルメット
主演=リチャード・ギア ジュリー・クリスティ ジーン・ハックマン ケイト・キャプショー

社会人になって最初の年に衆議院議員選挙があった。会社が推す候補と家族が推す候補が別々で、双方から「投票してね」と言われて板挟みになった。「政治運営の一端を荷なう人を選ぶのに、利害が先走るのって如何なものか。民主主義つーより、資本主義ってことよね。」とか生意気なことを言っていた当時の僕でございました。

さて。そんな折に観たのが、シドニー・ルメット監督作「キングの報酬」。選挙戦を裏で操る仕掛け人の物語。リチャード・ギア演ずる主人公は流行のスーツに身を包み、移動中の乗り物では、ベニー・グッドマンをウォークマンで聴きながら、ドラムスティック握ってトレーニング用のドラムパッドをペチペチ叩いてスウィングを刻む。何事にも自信たっぷりで物を言い、政治家先生達の着る服にも注文をつける。

…か、カッコいい🤩

そしてメディアを操ることで、現代社会のキングを作る。そして自分もキングメーカーたる仕掛け人としてのキングを目指す。リチャード・ギアのスーツの着こなしは、「アメリカン・ジゴロ」の頃から見習おう!と思ってきたけど、「キングの報酬」の颯爽としたカッコよさは真似できない。作品としては、物足りない印象しか残ってないけど、この映画のリチャード・ギアがとにかく好き。

その年の衆議院議員選挙。板挟みの状況は、「あ、投票しましたよ」のひと言でなんなくクリア。だって日本の選挙の原則の一つは秘密選挙。誰に入れたかわかりゃしないんだから。それにしても、この選挙の裏でもリチャード・ギアみたいな仕掛け人がいるんだろな。当時の首相が黄色いセーター着て子供たちと微笑む××党のポスターを見ながら思った。その仕掛け人、ファッションセンスはお世辞にも良いとは思えないな。


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ファーザー

2021-11-01 | 映画(は行)


◼️「ファーザー/The Father」(2020年・イギリス)

監督=フローリアン・ゼレール
主演=アンソニー・ホプキンス オリビア・コールマン ルーファス・シーウェル

認知症の父親と娘のハートウォームな人間ドラマだと勝手に思って、劇場公開時は敬遠していた。ところが。TSUTAYAの店頭で置かれていた手書きの紹介文に「ミステリー仕立て」とある。…どういうこと?興味をそそられて手にした。

映画は最初から予想を次々と裏切ってくる。娘と名乗った相手の風貌が変わる。最初に聞いた話が違うと言われ、離婚したと思っていた娘は知らない男と一緒にいる。その男も次の場面では違う男になっている。自分の世話をしに来てくれる介護人なんかいらないぞ。新しい介護人は末の娘に似ている。そういえば末娘にはずっと会ってない。どうしているんだ。お気に入りの時計はどこだ。娘が描いた絵はどこだ。ここは本当に自分の家なのか。

認知症になった主人公が陥いる不安と混乱を観客に擬似体験させる演出。これはもはやホラー映画の手法だ。縦横の線で表現できそうな構図で、カメラは真正面から部屋を捉える。ドア、窓、キッチン、ベッド、洗面台。狭い廊下をゆっくりと動くカメラが観る側をさらに不安な気持ちにさせる。「シャイニング」みたいだ。そんな同じ風景の中で繰り返される会話。混乱していく自分を落ち着かせる為に部屋のドアを閉ざす主人公。

若年性アルツハイマー症患者が主人公の「アリスのままで」も不安に陥いる感覚や言葉が失われていく喪失感を主観的に描いていたが、「ファーザー」はそうした辛さよりも怖さが先にあり、力づくで主人公の気持ちに観客を近づける。

「アリスのままで」や「男と女 人生最良の日々」でも描かれたように、人を愛した記憶は感覚として残る。アンソニー・ホプキンスが母を思い出すラストシーンが胸に刺さる。




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