Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

2023-03-18 | 映画(あ行)

◼️「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス/Everything Everywhere All At Once」(2022年・アメリカ)

監督=ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート
主演=ミシェル・ヨー キー・ホイ・クァン ジェニファー・ジェーソン・リー ステファニー・スー

映画館で鑑賞したのだが、途中退場する人が目立つ。きっと理由は人それぞれなんだろう。マルチバースという概念が理解できない、見た目が変わらないからどの世界のウェイモンドが喋っているのかわからない、ポリコレ映画がどうも好きじゃない、ハイスピードな展開についていけない、ところどころに出てくるお下品な描写が好きじゃない…などなど。ともかく期待とは違う映画だったんでしょう。こんなに人が出ていくのを見たのは「ムーランルージュ」以来かも。

映画製作に人種やジェンダーへの配慮が必要とされる今の時代だからこそ、キャスティングやストーリーに注目が集まったという見方は確かにできる。でもそんな今の時代だからこそ撮ることができた映画でもある。アカデミー作品賞の品格とか論ずるつもりはないけど、これだけぶっ飛んでふざけた企画が受け入れられたのは正直痛快に思っている。

だって、あのポンポさんも言ってたじゃん。
「泣かせる映画で感動させるより、おバカ映画で感動させる方がカッコいいでしょ?」
そう。エブエブはまさにそれなんだ。

石が語り合う場面なんて、それまで激しかった映像の動きがピタリとやんで、いい事言ってるし、癒しすら感じる。全てを吸い込む虚無の象徴黒いベーグルと、冒頭で領収書に書かれた黒丸が韻を踏んでるようだ。ソーセージ指の世界とかふざけてるにも程があるけれど、ラストで打ち解け合う二人とソーセージ指世界の二人の関係が重なるのは見事だ。僕らは実生活で、嫌なヤツだけど状況が違えば実はいいヤツなのかもしれないな、と思うことがある。この場面ってそれを示してくれている。

あの時この道を選んでいれば…みたいな話を映像でこれでもかと見せつける。そういう未練がましい描写は、日頃の僕なら毛嫌いするところ。ラで始まる陰気臭いミュージカル映画が大嫌いなのもそれが一つの理由だし。でもエブエブのそんな描写は、不思議と受け入れてしまった。

それは、あんな細切れの映像なのに登場人物の人柄がすごくにじんでくるからだ。トニー・レオン気取りかよ?とツッコミ入れたくなるキー・ホイ・クァンのスーツ姿を笑いながらジーンとしている自分がいる。蛇足だけど、クァンはウォン・カーウェイ監督の「2046」の助監督を別名で務めたという情報もある。そこでトニー・レオンを見ていたのかぁ…と思うと、映画ファンの妄想が、現実世界までマルチバース的につながってきたw。

80年代育ちが歓喜しちゃうのが、キー・ホイ・クァンがウエストポーチを振り回すアクション場面。アクションもさることながら、腰につけたもので活躍するって、まさに「グーニーズ」じゃん!🤣そして華麗なカンフーアクションを見せるミシェル・ヨー。80年代育ちとって、彼女はカンフースターのミシェル・キングを名乗ってた人だもんね。「獣拳戦隊ゲキレンジャー」の5人の拳聖(マスター)の一人、ミシェル・ペングの元ネタでもある。あーっ、どんどんマルチバース的につながっていくww。それは演じる役者のこれまでのキャリアが活かされていることでもある。キャリア上にある過去の出演作から学んだことが、マルチバースから得意技をロードするみたいにつながっている。それは経験という名のマルチバース。

自分に足りない何かを学びながら、人はいくつになっても成長できる。映画ではマルチバースにいる自分の得意技だったけど、クライマックスには近くにいる親しい人から学んだことが成功をもたらす。このラストにほっこり。あまりのカオスな展開とお下劣な描写に、ええんか?と思いながらも、そんなほっこりした気持ちになるなんて。観る前には想像できなかったな。



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