Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ

2022-05-27 | 映画(さ行)

◼️「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ/Je t'aime moi non plus」(1975年・フランス)

監督=セルジュ・ゲンスブール
主演=ジェーン・バーキン ジョー・ダレッサンドロ ユーグ・ケステル ミシェル・ブラン

セルジュ・ゲンスブールが自身の代表作である名曲Je t'aime moi non plus をタイトルに冠した脚本を手がけ、監督した作品。不快だとか美しくないとかいろいろと噂は聞いていた。確かに好きな人には響くだろうし、嫌悪感を抱く人もいるだろう。

もともと、セルジュは音楽において"聴衆を不快にすること"を持論にしていたこともある。それだけにいろんな物議を醸すこともあった挑発者だ。不快にならずとも、彼の作品や言動は僕らを「いいのか?」「どうしてそんなことを?」「そんなんで大丈夫なのか?」と不安定な気持ちにさせることも少なくない。そういう意味で本作は、僕の期待を裏切らなかった。フロントガラスに広がるカラスの血、ゴミ捨て場、埃まみれのドライブイン、ジェーンのヌードの上を飛ぶ蝿、同性愛者を罵る言葉。ちっとも美しくなんかない。その場で感じる香りや埃っぽさまで想像するとなおさらだ。

ところがオルガンの音色にアレンジされた名曲Je t'aime moi non plusや、ラグタイムピアノのようなLa ballade de Johnny Janeが流れると見え方が一変する。さっきまで生々しいとしか思えなかったシーンが、美しく見えてくる。身体を寄せあって踊る二人、湖で寝そべる二つの裸、トラックの荷台で絡み合う二人。美しい場面が際立ってくる。

惚れた女にここまで演じさせるか、とこっちが不安になるくらいにジェーンは肌を晒し続けるし、セルジュのカメラアングルも容赦ない。好きになったトラックドライバーがゲイだったことから、「男だと思って抱いて」と言う切ない表情。そして痛みに声をあげながら彼を受け入れようとする。最後の最後までジェーン・バーキンのこれでもかという熱演あっての映画。特に彼女の眼が強く印象に残る。パブミラーに映った彼を見つめる視線。下着を放り投げてワンピースを頭まで捲り上げ、ベッドの縁から見つめる姿。

好きな映画かと言われたら、好きじゃない。でも忘れがたい魅力がある。「シャルロット・フォー・エヴァー」もそうだったけど。


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