■「アサシン/The Assassin (Point Of No Return)」(1993年・アメリカ)
監督=ジョン・バダム
主演=ブリジット・フォンダ ガブリエル・バーン アン・バンクロフト ハーベイ・カイテル
リュック・ベッソンの「ニキータ」をハリウッドリメイク。好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、「ニキータ」とは違う明快さがこの映画の魅力かな。これは何でもソツなくこなす映画監督であるジョン・バダムの仕事だからか。されどアクションがツボでもなく、主人公マギーの苦悩も描かれるがどうも今ひとつ深みがない印象も。でもオリジナルと大きく印象が違うのは、ガブリエル・バーン扮する上司ボブとのエピソード。
この映画でのブリジット・フォンダは他の映画ではないくらいに熱演。そこは確かに魅力なのだが、「アサシン」で最も”いい役”だったのは何と言ってもガブリエル・バーンだろう。オリジナルのチャッキー・カリョをしのぐかっこよさ。マギーへの恋心とも親心とも言える心境が観ている側の男心をくすぐってくれる。ラストシーンでマギーが愛聴していたニーナ・シモンのLPを手にとり、「ニーナ、好きなのか?」と尋ねられる場面。”ニーナ”はマギーの殺し屋としてのコードネームなのだ。ボブは「あぁ、愛している。」とつぶやく。彼の思いが凝縮されるラストシーンは何とも言えない余韻を残してくれる。
オリジナルにはないニーナ・シモンの使われ方がいいね。流行のポップス/ロックで飾り立てるのがハリウッドリメイクではありがちだけど、そうしなかったことが軽い印象になっていない。オリジナルではジャンヌ・モローが演じた教師役をアン・バンクロフトが貫禄を感じさせる。オリジナルでジャン・レノが演じた掃除屋(「レオン」の元ネタとなる)は、ハーベイ・カイテルが演じているのも面白い。タランティーノ監督のファンとしては、「パルプ・フィクション」を連想してしまうよね。冒頭のドラッグストア襲撃場面、チンピラたちに銃を向ける店主はジュリエット・ルイスのお父さんジェフリー・ルイス。
(2005年筆)